放射線ホルミシス LNT仮説とホルミシス仮説

放射線ホルミシス

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LNT仮説とホルミシス仮説

従来、放射線の生物への影響に関する研究は、「放射線はすべて、どんな低い線量でも生物に対して障害作用をもつ」との考えに沿って行われてきた。これは、どのような量でも生物学的に有害でプラスの効果がなく、有害な効果が量と共に増大するとするしきい値なしの直線モデル(LNT仮説)によるものである[1]

ホルミシス理論では、少量で極大のプラス効果を持つ刺激が生じ、さらに用量を上げていくと、効果がないゼロ相当点(ZEP:zero equivalent point)に達し、これが「しきい値」とされ、その値を超える場合に有害なマイナス効果が増大する、とされる[1]

電力中央研究所による放射線ホルミシス効果検証プロジェクト

電力中央研究所服部禎男は1984年、アメリカ合衆国の生化学者トーマス・ラッキーの唱えた放射線ホルミシス論を知った[38]。これを受けて電力中央研究所は、1990年代から2000年代前半にかけて、放射線ホルミシス効果検証のための研究を行ったが、2014年に「ホルミシス効果を低線量放射線の影響として一般化し、放射線リスクの評価に取り入れることは難しい」とする見解を示した[39]

1993年、電力中央研究所は、東京大学放射線医学総合研究所京都大学東北大学大阪大学広島大学長崎大学東邦大学など14の大学などの研究機関に研究費の提供を開始して研究を依頼し、放射線ホルミシス効果検証プロジェクトを立ちあげた[19]。その後、電力中央研究所は、自らも2000年に理事長直轄の独立組織である低線量放射線研究センターを設立したが[40]、2004年には電力中央研究所では頻繁に行われてきた全体及び各部門の組織名称変更により、それまでの狛江研究所が原子力技術研究所という名称に変更され、2006年にはその中に、低線量放射線研究センターが理事長直轄のセンターから原子力技術研究所内の附置センターに格下げされた形で、その目的も「原子力利用における放射線防護体系の構築を進めるため」と変更され、放射線安全研究センターと改名された[41]。 このプロジェクトでは、

  • 老化抑制効果
  • がん抑制効果
  • 生体防御機構の活性化
  • 遺伝子損傷修復機構の活性化
  • 原爆被災者の疾学調査

のカテゴリーで研究され、検討される仮説は以下の通りであった。

  1. SOD活性酸素不均化する酵素群)の活性化によって余分な活性酸素が消去されるならば、それは「老化抑制」に寄与する
  2. リンパ球(T細胞)の活性化が生じるならば、それは生体の免疫力を高めて「がん抑制」に寄与する

1.の老化抑制効果の検証研究の結果、ラットを使った実験において、通常の老齢のラットでは、過酸化脂質量は大きくなり、膜流動性は低くなり、SOD量は縮減されることが確認されたが、約50センチグレイの低線量放射線を照射すると、上記の老化の特性は有意に改善され、若いラットの値に近づくことがわかった[19]。 また、活性酸素病の一つである[要出典]糖尿病に関して、低放射線量放射が、糖尿症状を抑制する結果を得た。

2.のがん抑制効果の検証研究の結果、ラットを使った実験において、15センチグレイの低線量照射を一回行うことで、がん転移率が約40%下がること、また、1回当たり4センチグレイの低線量照射を行うことで、腫瘍の増殖肥大が有意に抑制されることが確認された[19]

また、通常の放射線治療では、約6000センチグレイの高線量放射線を、30回に分けて患部に局所照射し、がん細胞を殺す方法が採用されている。これに対して、同プロジェクト東北大学グループは、これまでの局所照射方法に加えて、10センチグレイの低線量放射線を週3回の割合で全身に照射し、これを5週間にわたり継続して行う方法を併用したところ、高線量の局所照射を単独に行う場合に比べて、治癒率が有意に向上した[19]

また、同プロジェクトでは、分子レベル、細胞レベル、個体レベルの三つのレベルにおいての放射線ホルミシス効果が検証された[19]

分子レベルにおけるホルミシス効果

生体を構成する分子レベルにおけるホルミシス効果

  1. 抗酸化系酵素活性
    • SOD活性の亢進
    • TRXの誘導合成
  2. タンパク誘導合成
    • ガン抑制遺伝子p53の発現
    • 熱ショックタンパクHsp70の誘導合成
  3. 細胞情報伝達系の関与(細胞膜の構造機能の変化)
    • 脂質過酸化の低減
    • 膜流動性の亢進
    • Na+、K+-ATPase活性の亢進

細胞レベルにおけるホルミシス効果

  1. 適応応答の誘導
  2. 免疫細胞の活性化
  3. 細胞情報伝達系の関与

個体レベルにおけるホルミシス効果

さらに「個体レベル」においては、

  1. 制がん・抗がん作用
  2. 活性酸素病に対する効果
  3. 放射線抵抗性の獲得
    • 高線量照射に対する生残率の向上
  4. 中枢神経系への刺激作用
    • 覚醒刺激としての認識
    • 心理的ストレスの軽減
  5. ヒトの疫学的効果
    • ガン以外の死亡率の低減

環境放射線の積極的な利用としての放射能泉

自然放射線または環境放射線の積極的な利用は、放射能泉であるラドン泉やラジウム温泉で行われてきた。ラドン222の濃度が74ベクレル/リットル以上含まれるのがラドン泉であり、ラジウムが1億分の1グラム/リットル以上含まれるのがラジウム泉である。

ヨーロッパのオーストリアでは、インスブルック大学医学部が、1950年代からザルツブルク大学理学部と共同研究を行い、ヨーロッパアルプス山脈の中にあるバート・ガスタインのラドン坑道を活用して、年間約1万人の強直性脊椎炎(ベヒテレフ病)、リウマチ性慢性多発性関節炎、変形性関節症、喘息、アトピー性皮膚炎などの患者に対してラドン吸入療法を行っている。ここでの空気中ラドン222濃度は110ベクレル/リットル以上で放射能療養坑道と呼ばれている。

オーストリアや日本、ロシアなどではこの放射線ホルミシス理論を根拠に、ラドンラジウム泉)の効用がうたわれ、療養のために活用されるラドン泉やラドン洞窟が存在する。

指摘されるラドン被曝の問題点

世界保健機構(WHO)は、多くの国でラドンが喫煙に次ぐ肺がんの重要な原因であるとしている[42]。アメリカの環境保護庁(EPA)は、ラドンに安全な量というものは存在せず少しの被曝でも癌になる危険性をもたらすものとしている[43]。また、米国科学アカデミーは、毎年15,000から22,000人のアメリカ人が屋内のラドンに関係する肺がんによって命を落としていると推計する[43]。なお、200~400Bq/m3の室内ラドン濃度を限界濃度あるいは基準濃度として許容している国がほとんどである[42]。日本政府は2011年現在、特に警告は発していない。

放射線の医学的利用法については、放射線療法を参照。

三朝温泉地区における調査

アメリカ環境保護庁 (EPA) の、ラドンに安全な量というものは存在しないという仮説を受けて、1992年に低レベルのラドンでも健康への悪影響があるか[44] を調べるため、当時近畿大学原子力研究所教授の近藤宗平国立がんセンターの放射線研究部長・祖父江友孝、岡山病院院長の古本嘉明らは、鳥取県三朝町温泉のある地区の住民と近隣で温泉の無い地区の住人を比較対照した疫学調査を行い、非温泉地区に比較して温泉地区では1952年から1988年の癌死亡率が低いとする論文を日本癌学会の会報に発表した[45]。以降、この論文はホルミシス効果の宣伝に利用されるようになる。しかしその後の再調査で調査期間や調査方法などを更新・分析した結果、三朝町の高レベルのラドン地区と、三朝町の比較対照地区(ラドンが低い)で死亡率の差は見られなかった、と報告している(注;当研究では個々の被曝レベルは測定されておらず、喫煙と食事のような主要交絡因子を制御できなかった)[46][47]


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  60. ^ Evan B. Douple et al. (2011). “Long-term Radiation-Related Health Effects in a Unique Human Population: Lessons Learned from the Atomic Bomb Survivors of Hiroshima and Nagasaki”. Disaster Medicine and Public Health Preparedness 5 (1): S122-S133. http://www.dmphp.org/cgi/content/full/5/Supplement_1/S122. "It was estimated that at 1 Gy, the proportion of total life lost was roughly 60% from solid cancer, 30% from diseases other than cancer, and 10% from leukemia." 
  61. ^ ロバート・アーリック『トンデモ科学の見破りかた もしかしたら本当かもしれない9つの奇説』草思社、2004年2月、98-100頁。ISBN 4794212828。"ここで統計的に有意であると主張することの主たる統計的誤りは、統計的に有意とみなすためにどれだけ多くの標準偏差(x±nσ)を選んだかということにではなく、自分が探し求めているまさに当の効果を増幅させるために、全体的なデータのなかから特定の部分データを恣意的に選んで使っていることにある。"。 
  62. ^ ロバート・アーリック『トンデモ科学の見破りかた もしかしたら本当かもしれない9つの奇説』草思社、2004年2月、100頁。ISBN 4794212828。"たとえば、なぜ癌以外の病気の死亡率だけを考慮するのか?なぜ男性だけを考慮するのか?なぜ一九七〇~一九八八年のあいだだけの死亡を考慮するのか?なぜ広島ではなく長崎だけの被爆者を考慮するのか?その答えは、こうした特殊な選択をおこなわないかぎり、そのような効果は見られないからである。実際に、女性に関するデータ、癌による死亡についてのデータ、あるいは一九七〇~一九八八年以外の年における死亡のデータを調べてみれば、五〇~九九センチグレイの線量での相対危険度の減少は存在しない(むしろ増加している)。"。 
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  64. ^ 近藤誠『放射線被ばく CT検査でがんになる』亜紀書房、2011年6月、161-162頁。ISBN 4750511137。"論文で最初に紹介し、ホルミシスの根拠としているのは、中国のある地域は、自然放射線量が周辺地域より低い、という疫学研究です。しかしこの研究は、調査期間を延ばしたところ、がん死率は周辺地域と変わりがなくなってしまった(元の論文は入手しにくいので、J Radiol Prot 2009;29:A29 を参照した)。"。 
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  67. ^ 近藤宗平『人は放射線になぜ弱いか 第3版 (ブルーバックス)』講談社、1998年12月、244頁。ISBN 4062572389。"子どもの白血病の発病率は、Ⅱ章の図Ⅱ11にもとづいて記述したように、事故後八年間に増加していない。チェルノブイリ事故は、人類史上最大の発電用原子炉事故で、このような大量の放射性降下物汚染を被ばくした子どもに白血病の危険が発生しなかった。したがって、万一に原発事故で放射能を被ばくした場合、白血病の心配は無用という確証がえられた。"。 
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  79. ^ 財団法人環境科学技術研究所 放射線と白血病(線量率による違い)
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  86. ^ 訳:安間武 (掲載日:2005年10月1日). “公衆の健康政策決定のためのホルミシスは基本的に欠陥がある”. 化学物質問題市民研究会. 2012年2月5日閲覧。 “キャラブレスらがこの資金提供の結果、研究を歪めたという証拠はないが、彼らの文献の主な調査が統計的な有意さに基づく基準を用いていないことは不適切である。一方、彼らの研究を政策提言にまとめるやり方には明らかに偏向がある。まず簡単に低用量刺激の有害影響を認めるが、それからホルメティック概念を規制に適用することを主張するというやり方で基準をより緩和する方向に導く。毒物学的論文に関する最近のふたつの調査は資金供与源が研究結果に非常に強く影響を与えるということを示している。カエルの発達に与えるアトラジンの影響に関する研究、及び、ビスフェノールAの低用量影響に関する研究においては、研究結果に強い経済的利害を持つところからの資金供与はその研究結果が都合が良い方向に強くバイアスをかけている。同様なことがホルミシス研究において起きているかどうか調査中である。”
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  92. ^ 低線量放射線影響に関する公開シンポジウム, 日本保健物理学会, http://wwwsoc.nii.ac.jp/jhps/j/newsletter/n18/13.html 2012年2月5日閲覧, "主催:「低線量放射線影響に関する公開シンポジウム」実行委員会 共催:(社)日本機械学会、米国機械学会、仏国原子力学会 後援:米国放射線・科学・健康協会(RSH)、(社)日本原子力学会、日本放射線影響学会、日本保健物理学会、(財)放射線影響協会、(財)原子力安全研究協会、(財)体質研究会、(財)原子力発電技術機構、(社)日本原子力産業会議、(財)日本原子力文化振興財団、(社)日本電機工業会、(財)電力中央研究所 協賛:電気事業連合会" 
  93. ^ シンポジウムの後援は、RSHの他に、日本原子力学会、日本放射線影響学会、日本保健物理学会、放射線影響協会原子力安全研究協会、体質研究会、原子力発電技術機構、日本原子力産業会議日本原子力文化振興財団日本電機工業会電力中央研究所[92]
  94. ^ 低線量放射線影響に関する公開シンポジウム, 日本保健物理学会, http://wwwsoc.nii.ac.jp/jhps/j/newsletter/n18/13.html 2012年2月5日閲覧。 
  95. ^ Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950-2003: An Overview of Cancer and Noncancer Diseases





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