フーガ・マジステール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/25 01:28 UTC 版)
概要
本機は、最初からジェットエンジンを動力とする練習機として開発された世界初の機体である(それ以前のジェット練習機は、戦闘機から派生したT-33のように、最初から練習機として開発されていた訳ではなかった)。形態の特徴は110度のV字型尾翼と主翼付根に2基のジェットエンジンを持つことである。また全高が低いため、背の高いパイロットなら地上から直接搭乗することができた。試作機は1952年7月23日に初飛行。
その優れた操縦性と燃費の良さから、ベルギー、イスラエル、ブラジル他多くの国に輸出された。曲技飛行能力にも優れていたため、フランス空軍の曲技飛行隊パトルイユ・ド・フランスでも1964年から1980年まで使用された。ドイツ、フィンランド、イスラエルではライセンス生産もされた。フランスでの生産は1969年末まで行われたが、フーガは1958年にポテに買収され、その後1967年にシュドになり、さらに1970年にアエロスパシアルとなったため、機名は何度も変わっている。
軽攻撃機としても運用可能であり、コンゴ動乱ではカタンガ政府軍がコンゴ国連軍への攻撃に使用されてそれになりに活躍したが、スウェーデン空軍のサーブ 29 トゥンナンによって全て地上で破壊された。第三次中東戦争ではイスラエル空軍が軽攻撃機として使用し、MiG-21と空中戦も行った。
本機は50年近くもの長きに渡って運用された。フランス空軍から最後の機体が退役したのは1996年のことで、イスラエルでは近代化改修によって2000年代に入ってもしばらく使われていた。
派生型
- CM.170-1:チュルボメカ マルボレII エンジンを搭載した初期生産型。761機製造。
- CM.170-2:エンジンを出力4.7kNのマルボレIIAに換装したタイプ。137機製造。
- CM.173 シュペル・マジステール(Super Magister):出力5.1kNのマルボレVIエンジン2機と射出座席を装備した機体。試作機が1機のみ製造。
- CM.175 ゼフィール(Zephyr):フランス海軍向けにアレスティング・フックを装備した艦上練習機型。30機製造。
- CM.191:ポテとハインケルが共同開発したビジネスジェット機型。コックピットがサイド・バイ・サイド式に変更され、4人が搭乗できる。顧客があまりにも少なかったことから、試作のみに終わる。
- IAI ツヅキット(Tzukit):軽攻撃能力向上を目的として主翼下のハードポイントを強化した、イスラエル空軍の近代化改修機。ツヅキットとはツグミの一種。
- フーガ 90:マジステールの後継として開発。エンジンを出力7.6kNのチュルボメカ アスタファンIVGに換装し、キャノピーを広視界型に変更、アビオニクスも近代化する予定であったが、発注を得られなかった。
運用国
ヨーロッパ
アフリカ
- アルジェリア
- 空軍
- カメルーン
- ガボン
- リビア
- 空軍 - 現在はSOKOガレブに更新。
- モロッコ
- 空軍
- ルワンダ
- 陸軍航空隊 - 内戦で全て破壊されたと見られる。
- トーゴ
- 空軍
- セネガル
- 空軍
- ウガンダ
- 国民抵抗軍航空隊 - イスラエル製機を使用(新品か中古か不明)。ルワンダ同様、内戦が長く続いたためにすでに退役したと見られる。
- カタンガ
- コンゴ動乱時に、ベルギーや旧西側諸国の支援下に同国から分裂したカタンガ鉱山国空軍が6機発注したが、実際には3機しか引き渡されなかった。T-6テキサンとともに対地攻撃の他、国連軍の戦闘機と交戦もした。また、ダグ・ハマーショルド国際連合事務総長を乗せた航空機を撃墜した疑惑も指摘されている。動乱終結後、3機はザイール軍によって全て破壊されたと見られる。
- ビアフラ共和国
中近東、アジア
中南米
- エルサルバドル
- ブラジル
- 空軍 - 曲技飛行隊「エスカドリラ・ダ・フマサ」用にT-24の名称で7機を使用。1975年の解散により機体はアエロスパシアル社に買い戻されたが、チーム自体はその後復活し現在はAT-29スーパーツカノを使用している。
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