CBRNE災害の実例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/17 06:33 UTC 版)
核兵器により破壊された広島市。 化学兵器により殺害されたハラブジャ市民(写真は祈念館での復元展示)。 広島市への原子爆弾投下 / 長崎市への原子爆弾投下 (N・R) 1945年8月6日には日本国広島市を、8月9日には長崎市をアメリカ軍が核兵器で攻撃した事件。被災者が主として非戦闘員であり、また世界初の核兵器の実戦使用であったためにCBRNE対策が確立されていなかったこともあって甚大な被害が生じ、広島市の人口35万名のうち約14万名、長崎市では約15万名が死亡、また放射線被曝によってさらに多くの被災者が出た。 スリーマイル島原子力発電所事故 (R) 1979年3月28日、アメリカ合衆国東北部ペンシルベニア州のスリーマイル島原子力発電所で起きた炉心溶融(メルトダウン)事故。スリーマイル島 (Three Mile Island) の頭文字をとってTMI事故とも略称される。国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル5に分類される。 ボパール化学工場事故 (C) 1984年12月2日、インド・マディヤ・プラデーシュ州の州都ボパール市で発生した化学災害。同市で操業中だったユニオンカーバイド社系列の化学工場からイソシアン酸メチル (MIC) が流出、近隣市街に拡散した。夜明けまでに2000人以上が死亡、15–30万人が被害を受けた。その後も被害は拡大し、最終的には様々な要因で1万5000人~2万5000人が死亡したとされており、世界最悪の化学工場事故と言われている。 チェルノブイリ原子力発電所事故 (R) 1986年4月26日、ソビエト連邦(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原子力発電所4号炉が炉心溶融(メルトダウン)ののち爆発・炎上し、多量の放射性物質が大気中に放出され、ウクライナ・ベラルーシ(白ロシア)・ロシアなどを汚染した。後に決められた国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル7(深刻な事故)に分類され、史上最悪の原子力事故とされる。行政当局がパニックや機密漏洩を恐れ事故を内外に数日間公表せず隠蔽、遠隔操作の機械が高レベル放射線により尽く故障、事故処理に投入された作業員85万人のうち、5万5,000人が死亡したと2000年4月26日に行われた14周年追悼式典で発表。人的被害は人類原子力事故史上最悪となった。 ハラブジャ事件 (C・E) 1988年3月16日、イラク・ハラブジャ市をイラク軍が通常兵器および化学兵器で攻撃した事件。サッダーム・フセイン政権により、反政府傾向の強いクルド人市民が攻撃された白色テロであり、「ケミカル・アリ」として知られたアリー・ハサン・アル=マジードによって計画・実行された。少なくとも5,000名が死亡、10,000名が負傷した。 松本サリン事件 / 地下鉄サリン事件 (C) 1994年6月27日に日本国長野県松本市の住宅街、1995年3月20日に日本国東京都区部の地下鉄車内において発生した化学テロ事件。オウム真理教教徒らにより、神経ガスのサリンが散布されたもので、松本市で死者8名と重軽傷者660名、東京都で死者13名と6,000名以上の負傷者を出した。都市部のCBRNE災害について、極めて重大な教訓を残した。 東海村JCO臨界事故 (R) 1999年9月30日、日本国茨城県東海村において発生した原子力事故。作業員3名が致死量の中性子線を被曝、集中治療を受けたが2名が死亡した。周辺住民の避難や、自衛隊の災害派遣も行われた。国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル4に分類される。 アメリカ炭疽菌事件 (B) 2001年9月18日より数週間に渡り、アメリカ合衆国において発生した生物テロ事件。炭疽菌の入った手紙が報道機関や議員事務所に郵送され、郵便関係者を含めて5名が死亡・17名が病院で手当てを受けた。 重症急性呼吸器症候群(SARS)の蔓延 (B) 2002年11月、中国を中心にアウトブレイクしたウイルス性新型肺炎。スーパー・スプレッダーにより香港で多くの死者を出した。 ロンドン同時爆破事件 (E) 2005年7月7日、イギリス・ロンドンにおいて発生した自爆テロ事件。地下鉄とバスが爆破され、56名が死亡、700名弱が負傷した。医療チームの早期投入や市街地での消防ヘリコプター直接接地による迅速な救助が行なわれた。 2009年新型インフルエンザの世界的流行 (B) 2009年4月、豚由来のインフルエンザ (H1N1) が世界的に流行し、WHOによりPHEICが出された。 2010年日本における口蹄疫の流行 (B) 2010年の春から夏にかけて、日本国宮崎県で発生した家畜伝染病の流行事件。口蹄疫によって畜産業に甚大な被害が発生し、地域経済に重篤な打撃を与えた。人への直接被害は生じない感染症であるが、その特性上、CBRNE災害に対するのと同様の対処が行われた。 福島第一原子力発電所事故 (R) 2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震によって引き起こされた東京電力福島第一原子力発電所における原子力事故。地震による停電で外部電源を失い非常用ディーゼル発電機が起動したが、地震の約50分後津波が発電所を襲い地下に設置されていた非常用ディーゼル発電機、電気設備、ポンプ、燃料タンク、非常用バッテリーなどが海水により損傷または流出し、全電源喪失。このため、核燃料の冷却ができなくなった1・2・3号機が炉心溶融 (メルトダウン)した。国際原子力事象評価尺度 (INES) においてレベル7(深刻な事故)に分類される。 亀尾フッ化水素酸漏出事故 (C) 2012年に大韓民国慶尚北道亀尾市にある化学工場で発生した、強い毒性と腐食性を持つ液体フッ化水素酸の漏出事故である。作業員ら5人が死亡、住民ら四千人あまりが健康被害を受けた。 2014年の野生型ポリオ流行 (B) 2014年5月、ポリオがシリアなど中東からアフリカで蔓延し、WHOによりPHEICが出された。 2014年の西アフリカエボラ出血熱流行 (B) 2014年8月、コウモリ由来によるエボラ出血熱が西アフリカで流行し、WHOによりPHEICが出された。 2015年-2016年のアメリカ大陸におけるジカ熱流行 (B) 2016年2月、蚊由来によるジカ熱が中南米で流行し、WHOによりPHEICが出された。 2018-2019年のコンゴ民主共和国北キブ州でのエボラ出血熱流行(英語版) (B) 2019年7月、コウモリのブッシュミートが原因となりコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が流行し、WHOによりPHEICが出された。 新型コロナウイルス感染症の世界的流行 (B) 2020年1月、中国武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」として最初の症例が確認されて以降、新型コロナウイルスによる急性呼吸器疾患(COVID-19)が世界的に流行し、WHOによりPHEICが出された後にパンデミック相当であるとWHO事務局長が表明した。
※この「CBRNE災害の実例」の解説は、「CBRNE」の解説の一部です。
「CBRNE災害の実例」を含む「CBRNE」の記事については、「CBRNE」の概要を参照ください。
- CBRNE災害の実例のページへのリンク