吉田調書
英語:Yoshida Testimony、Yoshida Report
2011年3月に東京電力福島第一原子力発電所で原発事故が発生した際の、現場や収束作業の様子などを、政府の事故調査委員会が当時所長だった吉田昌郎に聴取した記録文書の通称。
吉田調書は2011年7月からに開始された聞き取り調査に基づいて作成された。産経新聞によれば、聴取は7月から11月にかけて計13回、延べ27時間に及んだという。
吉田調書は政府のいわば機密資料の扱いだったが、2014年5月に朝日新聞がスクープ的に特集記事を組み報じたことで広く知られるようになった。朝日新聞は特設ウェブサイトを設けて吉田調書の概要を配信している。
産経新聞は2014年8月に吉田調書に基づく連載記事を配信している。記事を通じて、朝日新聞の報じた「所員が所長命令に背いて勝手に現場を離れた」等の内容を否定している。
なお、事故当時所内で陣頭指揮をとった吉田昌郎所長は、2013年に58歳で亡くなっている。死因は食道がんだった。
ちなみに、いわゆる従軍慰安婦問題において、「日本軍による強制連行」があったとする主な根拠として参照されてきた吉田清治の発言は「吉田証言」と呼ばれている。
吉田調書
吉田調書
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/15 21:00 UTC 版)
吉田調書(よしだちょうしょ)とは、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による福島第一原子力発電所事故で陣頭指揮を執った吉田昌郎・福島第一原子力発電所所長(当時)が2011年7月22日から11月6日にかけて[1]の「内閣官房東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(政府事故調)の聴取に応じた際の記録の通称。公式な文書名は「聴取結果書」である。
注釈
- ^ ただし、吉田は第1回の聴取で政府事故調が「お話しいただいた言葉がほぼそのままの形で公にされる可能性があるということをお含みいただいて、それでこのヒアリングに応じていただきたいと思います」と説明したときに「結構でございます」と即答している[4]。
- ^ 「断片的に取り上げられた記事が複数の新聞に掲載され、一人歩きするというご本人の懸念が顕在化しており、このまま非公開となることでかえってご本人の遺志に反する結果になると考えた」[18]
- ^ これについて社会学者の開沼博は「吉田調書の公開プロセス自体が歴史上の大きな『汚点』になり得る」と指摘している[20]。
- ^ 「十五日の段階で少なくとも私のところに大臣から報告があったのは、東電がいろいろな線量の関係で引き揚げたいという話があったので、それで社長にまず来ていただいて、どうなんですと、とても引き揚げられてもらっては困るんじゃないですかと言ったら、いやいやそういうことではありませんと言って[24]」
- ^ 「今は余り言っていないですが、ある時期は、菅さんが自分が東電が逃げるのを止めたんだみたいな」という質問者の発言に対し、「(注・「首相を」)辞めた途端に。あのおっさんがそんなのを発言する権利があるんですか。あのおっさんだって事故調の調査対象でしょう。そんなおっさんが、辞めて、自分だけの考えをテレビで言うというのはアンフェアも限りない」と吉田が菅への批判とともに報道を全否定するものであった[28]。
- ^ 吉田は原子力安全委員長の班目春樹のことも「おっさん」と呼び、東電社長の清水正孝のことは「あの人」と呼んでいる[4]。
- ^ 吉田は「逃げたと言ったとか、言わないとか、菅首相が言っているんですけれども、何だ馬鹿野郎というのが基本的な私のポジション」「私(注・菅)も被告ですなんて、(菅が)偉そうなことを言っていたけれども、被告がべらべらしゃべるんじゃない、馬鹿野郎と私などは言いたいですけれども、どうでしょう。議事録に書いておいて[28]。」などと発言している。
- ^ 後に「官邸の5日間」を加筆して『検証 福島原発事故 官邸の一〇〇時間』 (岩波書店 2012) を著している。
- ^ 評論家の古谷経衡は、朝日の「誤報問題」について、「『そうであって欲しい』という記者らの”願望”」が「”記事の方向性”」となる「構造的問題」を指摘している[33]。
出典
- ^ 聴取日は2011年7月22日・7月29日・8月8日・8月9日・10月13日・11月6日。
- ^ 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会. “東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会”. www.cas.go.jp. 内閣官房. 2020年3月7日閲覧。
- ^ a b “吉田元所長の「上申書」の公表について”. www.cas.go.jp. 内閣官房 (2014年5月). 2020年3月7日閲覧。
- ^ a b c “「吉田調書」福島原発事故、吉田昌郎所長が語ったもの:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年3月7日閲覧。
- ^ “東電福島第1原発の元所長、吉田氏が死去 58歳”. 日本経済新聞 電子版 (日本経済新聞社). (2013年7月9日) 2013年7月9日閲覧。
- ^ 木村英昭、宮崎知己 (2014年5月20日). “「福島第一の原発所員、命令違反し撤退 吉田調書で判明」”. 朝日新聞. オリジナルの2014年8月30日時点におけるアーカイブ。 2014年8月23日閲覧。
- ^ 木村英昭 (2014年5月20日). “葬られた命令違反 吉田調書から当時を再現”. 朝日新聞. 2014年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年9月7日閲覧。
- ^ 「吉田調書」福島原発事故、吉田昌郎所長が語ったもの - 取材:宮崎知己、木村英昭 制作:佐久間盛大、上村伸也、白井政行、木村円
- ^ a b “朝日新聞、墜ちた2大スクープ「吉田調書」「慰安婦報道」 多数のメディアが検証・批判し否定”. 産経ニュース (2014年9月12日). 2015年7月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年6月30日閲覧。
- ^ 門田隆将 朝日新聞「吉田調書」報道の罪 全文掲載 - 2014.09.12
- ^ 週刊ポスト記事に朝日新聞社抗議 吉田調書めぐる報道 - 朝日新聞デジタル 2014年6月10日05時54分
- ^ 朝日新聞、誤報記事に法的措置匂わせる「抗議書」フリージャーナリストらに何度も送っていた - J-CAST 2014/9/12 19:47
- ^ 牧野 洋「吉田調書」スクープに相次ぐ疑義---説明責任を放棄して法的措置ちらつかせる朝日 - 現代ビジネス 2014年06月27日(金)
- ^ 「朝日新聞の報道は「所長命令に違反し、所員の9割が原発撤退」」『産経新聞』、2014年8月18日。オリジナルの2014年8月30日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「吉田所長、「全面撤退」明確に否定 福島第1原発事故」『産経新聞』、2014年8月18日。オリジナルの2014年9月19日時点におけるアーカイブ。
- ^ a b “退避した前後の判断などを証言”. NHK「かぶん」ブログ (2014年8月24日). 2020年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年3月8日閲覧。
- ^ 退避、命令違反なし - 読売新聞 2014年08月30日08時31分、「全面撤退」強く否定…福島第一 吉田調書 - 読売新聞 2014年08月30日08時35分
- ^ 吉田調書を公開 官房長官「非公開、遺志に反する」 - 日経 2014/9/11 16:28
- ^ 政府事故調査委員会ヒアリング記録の開示について - 内閣官房 平成26年9月11日
- ^ 朝日の「吉田調書」スクープで無関心は加速する 前代未聞のメディア・イベントはいかに成立したか - 社会学者・開沼 博 【第486回】 2014年9月16日
- ^ 「みなさまに深くおわびします 朝日新聞社社長」『朝日新聞』、2014年9月12日。オリジナルの2014年9月30日時点におけるアーカイブ。
- ^ 「朝日新聞社長らが会見 記者会見やりとり要旨」『47NEWS』(共同通信)、2014年9月12日。オリジナルの2014年10月13日時点におけるアーカイブ。
- ^ “朝日新聞朝刊連載「プロメテウスの罠」について”. www.tepco.co.jp. 東京電力 (2012年1月13日). 2020年3月7日閲覧。
- ^ 参議院 予算委員会 第12号 - 平成23年4月25日
- ^ 政府事故調
- ^ 国会事故調報告書
- ^ “吉田調書「海水注入、命令違反を覚悟」 原発事故”. 日本経済新聞 電子版 (2014年9月11日). 2020年3月7日閲覧。
- ^ a b c “「吉田調書」で完全暴露された菅元首相のイライラ 怒鳴り声ばかりに「何だ馬鹿野郎」と批判”. J-CASTニュース (2014年9月12日). 2020年3月8日閲覧。
- ^ “【吉田調書】「あのおっさんに発言する権利があるんですか」 吉田所長、菅元首相に強い憤り”. 産経新聞 (2014年8月18日). 2020年3月8日閲覧。
- ^ a b 朝日新聞社報道と人権委員会 (2014年11月12日). “「福島原発事故・吉田調書」報道に関する見解(pdf版)”. 朝日新聞. 2020年3月7日閲覧。
- ^ 吉田調書 - 特集・連載:朝日新聞デジタル 取材:宮崎知己、木村英昭
- ^ 「プロメテウスの罠 | コレもお薦め!定番コラムと長期連載」『朝日新聞』、2011年12月26日。オリジナルの2014年9月16日時点におけるアーカイブ。
- ^ 古谷経衡 朝日新聞の「構造的問題点」とは?〜「吉田調書」等をめぐる誤報問題について〜 - 2014年9月11日
- ^ “朝日「吉田調書」誤報の真相 社内でも事前に多数「異論」出ていた”. J-CASTニュース (2014年11月12日). 2020年3月7日閲覧。
- ^ a b “朝日新聞の「誤報」に新聞労連が特別賞 原発「吉田調書」報道めぐり評価真っ二つ”. J-CASTニュース (2015年1月30日). 2020年3月7日閲覧。
- 1 吉田調書とは
- 2 吉田調書の概要
- 3 吉田元所長への聴取
- 4 脚注
- 吉田調書のページへのリンク