イベルメクチン【ivermectin】
イベルメクチン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/09 06:09 UTC 版)
イベルメクチン(INN: ivermectin)は、マクロライドに分類される抗寄生虫薬である[1]。放線菌が生成するアベルメクチンの化学誘導体[1]。米メルク製造の商品名はストロメクトール、日本の販売はマルホが行う[2][3]。静岡県伊東市内のゴルフ場近くで採取した土壌から、大村智により発見された放線菌ストレプトマイセス・アベルミティリスが産生する物質を元に、米製薬メルク(MSD)が開発した[4][5]。最初の用途は、フィラリアとアカリア症を予防および治療するための動物用医薬品だった[6]。1987年にヒトへの使用が承認され[7]、現在ではアタマジラミ、疥癬、河川盲明症(オンコセルカ症)、腸管糞線虫症、鞭虫症、回虫症、リンパ系フィラリア症などの寄生虫の治療に使用されている[8][9][6][10]。標的とする寄生虫を殺すために多くのメカニズムで作用し[8]、経口投与、または外部寄生虫のために皮膚に適用できる[8][11]。
- 1 イベルメクチンとは
- 2 イベルメクチンの概要
イベルメクチン(駆虫薬)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 21:16 UTC 版)
「COVID-19に対する薬剤転用研究」の記事における「イベルメクチン(駆虫薬)」の解説
「イベルメクチン#研究事例」も参照 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の初期に、in vitro(試験管内で)の研究によりCOVID-19の予防や治療に役割を果たす可能性が示唆された。しかしヒトを対象とした研究は現在進行中であり、COVID-19に対する有効性や安全性を示す質の高いエビデンスが存在しないため、世界保健機関(WHO)やアメリカ国立衛生研究所(NIH)、欧州医薬品庁(EMA)など世界の主要な保健機関は、治験以外の使用はしないことを推奨している。 2020年4月4日、オーストラリアのモナッシュ大学の研究チームが、in vitro(試験管内で)の実験で、5μM濃度のイベルメクチンにSARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の複製を阻害する能力があると発表した。しかし、in vitroで50%の阻害を達成するには推定7.0 mg/kgの経口投与が必要である。これは疥癬の治療等で安全性が確認されている量(1kg当たり0.2mgを単回投与)の35倍にあたり、イベルメクチン中毒とされるほど高い。なお、イベルメクチンのLD50(半数致死量)はマウス25mg/kg(経口)、イヌ80mg/kgであり、ヒト等価用量LD50範囲2.02 - 43.24mg/kgに相当する。アメリカでは、過剰摂取や誤用による健康被害が増加しているため、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、吐き気、嘔吐、下痢、低血圧、意識レベルの低下、混乱、目のかすみ、幻覚、バランスの喪失、発作、昏睡、死亡などの過剰摂取症状に関する警告を発した。 2020年4月に、アメリカのユタ大学などの研究チームが、サージスフィア社のデータを元に、イベルメクチンがCOVID-19の死亡率を減らすのではないかとするプレプリントをまとめたが、5月末に撤回された。取り下げの理由は、サージスフィア社のデータに捏造があったためである。米データ分析会社の「サージスフィア社」が関わった新型コロナウイルスについての論文は取り下げが相次いでいた。いくつかのラテンアメリカ政府の保健機関は、このプレプリントに一部基づいて、COVID-19治療薬としてイベルメクチンを推奨したが、これらの推奨は後に汎米保健機構によって非難された。 Leon Caly, Julian D. Druce, Mike G. Catton, David A. Jans, Kylie M. Wagstaff: "The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 invitro", Antiviral Research 178 (2020) 104787. In vitroの実験では、イベルメクチンにはSARSコロナウイルス2を含む複数の一本鎖プラス鎖RNAウイルスに対して抗ウィルス効果が存在する。その後の研究により、イベルメクチンには IC50が2.2〜2.8 μMのサル腎臓細胞培養でSARS-CoV-2の複製を阻止する可能性があることが分かった。しかし、この情報に基づくと、抗ウイルス効果を得るためには、ヒトでの使用が承認されている、または安全に達成可能な最大用量よりもはるかに高い用量が必要となる。実用上の困難は別としても、そのような高い用量は、現在承認されている人間への使用量を超えており、抗ウイルス作用機序は宿主の細胞プロセスの抑制(特にインポーチンα/β1による核輸送の阻害)によって機能すると考えられているため、有害となる可能性がある。したがって、COVID-19におけるイベルメクチンの臨床評価の理論的根拠は不十分であると考えられる。馬を対象とした高濃度の調合薬の自己投与は、多数の入院の原因となっており、過剰摂取は、他の薬物との相互作用のために死に至る可能性もある。現在までの小規模または質の悪い研究による不確実性を解決するために、Feb 2022年現在[update]、アメリカとイギリスで大規模な臨床試験が進行中である。 COVID-19のイベルメクチンに関する多くの研究には、深刻な方法論的限界があるため、その結果、エビデンスの確実性は非常に低くなっている。その結果、複数の組織は、COVID-19に対する有効性の証拠が弱いことを公に発表している。2021年2月、イベルメクチンを開発しているメルクは、イベルメクチンがCOVID-19に対して有効であるという十分な証拠は存在せず、そのような使用を試みることは安全ではない可能性があるとの声明を発表した。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のCOVID-19治療ガイドラインでは、イベルメクチンのエビデンスが限定されすぎているため、その使用を推奨または反対することを許可できないと述べられている。イギリスでは、国のCOVID-19治療諮問委員会(national COVID-19 Therapeutics Advisory Panel)が、COVID-19の治療のためのイベルメクチンのエビデンスベースと妥当性は、さらなる調査を進めるには不十分であると判断した。 イベルメクチンは、ウイルス性疾患の治療に使用するためにはアメリカ食品医薬品局(FDA)によって承認されておらず、ヨーロッパ連合内でもCOVID-19を治療するために使用することは許可されていない。EMAは、イベルメクチンに関するエビデンスを検討した後、「入手可能なデータは、適切に設計された臨床試験以外でのCOVID-19への使用を支持していない」と述べた。WHOも、臨床試験を除いては、イベルメクチンをCOVID-19の治療に使用すべきではないと述べた。The ブラジル健康規制庁(英語版)は、初期段階のCOVID-19の予防または治療のためのイベルメクチンの使用に反対するよう助言する意見書を発表した。 誤情報、信頼度の低下、症例数と死亡数の増加に対する絶望感により、中南米、中央・東ヨーロッパ、南アフリカでのイベルメクチンの使用が増加している。公式の承認が得られていないこれらの国の多くでは、闇市場が発展している。 イベルメクチンに関するバイラルソーシャルメディアの誤情報は、「South Africa Has A Right To Ivermectin」と呼ばれる反ワクチングループがこの薬を処方できるようにするよう働きかけている南アフリカで特に注目を集めている。別のグループである「Ivermectin Interest Group」は、南アフリカ健康製品規制当局(英語版)(SAHPRA)に対して訴訟を起こし、その結果、コンパッショネート・ユースの免除が認められた。 SAPHRAは2021年4月に次のように述べている。「現在、COVID-19の承認された治療法は存在しない」。 有効性を示唆する質の高いエビデンスが存在せず、反対のアドバイスが出されているものの、一部の政府は、COVID-19の予防と治療のために適応外使用を許可している。イベルメクチンの公式の適応外使用の承認を与えた国には、チェコ共和国、スロバキア、メキシコ、ペルー(後に撤回)、インド(後に撤回)、フィリピン、コロンビアの都市カリがある。
※この「イベルメクチン(駆虫薬)」の解説は、「COVID-19に対する薬剤転用研究」の解説の一部です。
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