NARグランプリ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 14:52 UTC 版)
概要
地方競馬全国協会(NAR・地全協)はその創設時より各ブロックごとに当該年度の競馬の発展に貢献した人物を表彰する制度を設けていた[注 1][1]。また、馬に対しては1954年(昭和29年)に競馬専門紙『競週ニュース』『競馬週報』を発行していた啓衆社が『公営日本一』という賞を立ち上げたが、1972年(昭和47年)の競馬週報廃刊と共に打ち切られ、以後暫く途絶えていた。
本賞はそれらの系譜を統合し、地方競馬としては初めて全国の地方競馬団体を統一的に表彰する賞である[注 2]。
第1回NARグランプリの表彰式は1991年2月にマスコミ関係者や文化人、そしてなにより全国の地方競馬場の代表らを集めて行われたが[2]、一方で地全協内部のみでの選考であること、また年度代表馬は獲得賞金額のみでの選出であったことなどが当初から問題とされていた[2]。1994年の表彰より後述のような各地区の推薦・選定委員会による合議・投票制へと改革がはかられ[3]、以後は人馬共に部門構成の変遷がありつつも現在まで続いている[注 3][1]。
歴代年度代表馬・最優秀騎手・最優秀調教師
年 | 年度代表馬 | 品種 | 所属 | 最優秀騎手 | 所属 | 最優秀調教師 | 所属 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1990年 | ダイコウガルダン | サラ系 | 大井 | 石崎隆之 | 船橋 | 荒川友司 | 笠松 |
1991年 | ダイコウガルダン | サラ系 | 大井 | 石崎隆之 | 船橋 | 赤間清松 | 大井 |
1992年 | グレイドショウリ | サラ系 | 大井 | 石崎隆之 | 船橋 | 赤間清松 | 大井 |
1993年 | ホワイトシルバー | サラ系 | 大井 | 石崎隆之 | 船橋 | 赤間清松 | 大井 |
1994年 | トチノミネフジ | アラ系 | 大井 | 石崎隆之 | 船橋 | 川島正行 | 船橋 |
1995年 | ライデンリーダー | サラ系 | 笠松 | 石崎隆之 | 船橋 | 荒川友司 | 笠松 |
1996年 | ケイエスヨシゼン | アラ系 | 兵庫 | 石崎隆之 | 船橋 | 荒川友司 | 笠松 |
1997年 | アブクマポーロ | サラ系 | 船橋 | 石崎隆之 | 船橋 | 荒川友司 | 笠松 |
1998年 | アブクマポーロ | サラ系 | 船橋 | 石崎隆之 | 船橋 | 出川克己 | 船橋 |
1999年 | メイセイオペラ | サラ系 | 岩手 | 石崎隆之 | 船橋 | 荒川友司 | 笠松 |
2000年 | ベラミロード | サラ系 | 栃木 | 石崎隆之 | 船橋 | 川島正行 | 船橋 |
2001年 | トーホウエンペラー | サラ系 | 岩手 | 石崎隆之 | 船橋 | 曾和直榮 | 兵庫 |
2002年 | トーホウエンペラー | サラ系 | 岩手 | 石崎隆之 | 船橋 | 川島正行 | 船橋 |
2003年 | ネームヴァリュー | サラ系 | 船橋 | 的場文男 | 大井 | 川島正行 | 船橋 |
2004年 | コスモバルク | サラ系 | 北海道 | 内田博幸 | 大井 | 川島正行 | 船橋 |
2005年 | アジュディミツオー | サラ系 | 船橋 | 内田博幸 | 大井 | 川島正行 | 船橋 |
2006年 | アジュディミツオー | サラ系 | 船橋 | 内田博幸 | 大井 | 川島正行 | 船橋 |
2007年 | フリオーソ | サラ系 | 船橋 | 内田博幸 | 大井 | 川島正行 | 船橋 |
2008年 | フリオーソ | サラ系 | 船橋 | 戸崎圭太 | 大井 | 川島正行 | 船橋 |
2009年 | ラブミーチャン | サラ系 | 笠松 | - | - | - | - |
2010年 | フリオーソ | サラ系 | 船橋 | - | - | - | - |
2011年 | フリオーソ | サラ系 | 船橋 | - | - | - | - |
2012年 | ラブミーチャン | サラ系 | 笠松 | - | - | - | - |
2013年 | ハッピースプリント | サラ系 | 北海道 | - | - | - | - |
2014年 | サミットストーン | サラ系 | 船橋 | - | - | - | - |
2015年 | ハッピースプリント | サラ系 | 大井 | - | - | - | - |
2016年 | ソルテ | サラ系 | 大井 | - | - | - | - |
2017年 | ヒガシウィルウィン | サラ系 | 船橋 | - | - | - | - |
2018年 | キタサンミカヅキ | サラ系 | 船橋 | - | - | - | - |
2019年 | ブルドッグボス | サラ系 | 浦和 | - | - | - | - |
2020年 | サブノジュニア | サラ系 | 大井 | - | - | - | - |
2021年 | ミューチャリー | サラ系 | 船橋 | - | - | - | - |
2022年 | イグナイター | サラ系 | 兵庫 | - | - | - | - |
2023年 | イグナイター | サラ系 | 兵庫 | - | - | - | - |
- 1990〜1993年はサラブレッドのみを掲載した。同時期に別途選出されていたアラブ年度代表馬はNARグランプリアラブ最優秀馬、ばんえい年度代表馬についてはNARグランプリばんえい最優秀馬をそれぞれ参照。
- 最優秀調教師賞、最優秀騎手賞は2008年限りで廃止。
競走馬に関する表彰
NARグランプリの馬(競走馬)部門の選考は各地区の担当記者からの推薦ならびに広域交流競走の優勝馬などを候補馬とし、その候補馬の中から優秀馬選定委員会によって選ばれる[4]。優秀馬選定委員会は、地方競馬全国協会理事長が指名した学識経験者、評論家、日刊紙・専門紙記者、関係団体職員などから構成される[4]。
歴史
- 1990年から1993年まではサラブレッド系、アラブ系、ばんえいの3部門の表彰であった。
- 1994年から改められサラブレッド系、アラブ系のそれぞれに対して3歳、4歳、5歳以上[注 4]の3部門とばんえいの各部門で最優秀馬を選出しその中から年度代表馬を選出することとなった。併せて特別表彰馬としての表彰も設けられた。
- 1999年から新たに最優秀牝馬と最優秀短距離馬の部門を追加。
- 2003年からアラブ系競走馬の縮小によりアラブ系が2歳、3歳、4歳以上の3部門からアラブ系として1部門に統合された。
- 2004年からは芝コースでの競走で優れた成績を収めた競走馬を表彰する最優秀ターフ馬が新たに設けられた。同年はホッカイドウ競馬在籍の身ながらクラシック戦線など中央競馬での活躍が目立ったコスモバルクが受賞した。
- 2008年よりダート競走格付け委員会が解散したことに伴い、ダートグレード競走最優秀馬に代わる表彰としてダートグレード競走特別賞を創設。
- 2010年より、アラブ系競走馬の表彰部門が廃止(過去3年連続該当馬なし)され、2歳、3歳、4歳以上の最優秀馬の部門名に「サラブレッド」が付されなくなる[5]。
- 2011年からは2歳、3歳、4歳以上最優秀馬の部門が牡馬と牝馬に分離された。これに伴い最優秀牝馬は廃止となった。
部門一覧
2020年現在も存在しているもののみを挙げる[5]。
- NARグランプリ年度代表馬
- NARグランプリ2歳最優秀牡馬
- NARグランプリ2歳最優秀牝馬
- NARグランプリ3歳最優秀牡馬
- NARグランプリ3歳最優秀牝馬
- NARグランプリ4歳以上最優秀牡馬
- NARグランプリ4歳以上最優秀牝馬
- NARグランプリ最優秀短距離馬
- NARグランプリばんえい最優秀馬
- NARグランプリ最優秀ターフ馬
- NARグランプリダートグレード競走特別賞
- NARグランプリ特別表彰馬
特別表彰馬
従来より設けられていたNARグランプリ特別功労賞から分離し、地方競馬の発展に特別の功績があった競走馬を称えるため1995年に創設された[3]。なお、同賞時代にはオグリキャップが競走馬として唯一の受賞を果たしている。
歴代受賞馬
年 | 受賞馬 | 表彰理由 |
---|---|---|
1995年 | トウケイニセイ | 脚部不安から東北地区以外の競走にほとんど出なかったために最優秀馬に選出される事はなかったが、競走成績(通算43戦39勝)が顕著であるため。 |
ライブリマウント | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(4戦3勝)を挙げたため。 | |
1996年 | ホワイトナルビー | オグリキャップをはじめとして産駒15頭が全て勝利を挙げ、産駒の勝利数が中央・地方通算133勝を数えるなど、繁殖牝馬として地方競馬に多大なる功績を挙げたため。 |
ホクトベガ | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(8戦8勝)を挙げたため。 | |
1999年 | イナリトウザイ | デビューは中央競馬だが、その後公営に転厩しサラ系の重賞にも勝利したりと成績優秀。繁殖牝馬としても多大なる功績を挙げたため。 |
2000年 | ハイセイコー | 南関東公営出身でJRA移籍後は皐月賞を勝利するなどブームを巻き起こし、地方競馬の発展に多大なる影響を与えたため。 |
ファストフレンド | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(6戦4勝)を挙げたため。 | |
2001年 | ノボジャック | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(7戦6勝)を挙げたため。 |
2002年 | ゴールドアリュール | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(3戦3勝)を挙げたため。 |
2003年 | ロジータ | 牝馬でありながら南関東牡馬三冠を制覇。繁殖牝馬としてもGI2勝を含むダートグレード競走4勝のカネツフルーヴなど、優秀な産駒を輩出した。 |
アドマイヤドン | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(5戦3勝)を挙げたため。 | |
2004年 | ニホンカイローレル | 軽種馬日本最多勝のニホンカイキャロルや、西日本アラブダービー制覇などの成績を残したニホンカイユーノスなど、優秀な産駒を輩出。 |
2005年 | タイムパラドックス | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(11戦3勝)を挙げたため。 |
2006年 | ブルーコンコルド | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(8戦4勝)を挙げたため。 |
2007年 | ヴァーミリアン | JRA所属馬のため最優秀馬の受賞資格はないが、交流競走で目覚しい成績(4戦4勝)を挙げたため。 |
ミルジョージ | 種牡馬として地方競馬の有力馬を数多く輩出したことが評価された。 | |
ワカオライデン | 種牡馬として地方競馬の有力馬を数多く輩出したことが評価された。 | |
2008年 | ホスピタリテイ | 種牡馬として地方競馬の有力馬を数多く輩出したことが評価された。 |
2009年 | アジュディミツオー | 地方競馬史に大きな足跡を残したことが讃えられた。 |
タガミホマレ | 日本の競馬界に大きな功績を残してきたアラブ系競走馬に感謝と敬意を表すため選定。 | |
2010年 | コスモバルク | 地方競馬所属馬として初の海外GI制覇を果たし、地方競馬に果たした多大な貢献を讃え、特別表彰馬に選定された。 |
2013年 | ブライアンズタイム | 長きにわたり日本の種牡馬として君臨し、地方競馬にも数多くの有力馬を数多く輩出したことが評価された。 |
フジノウェーブ | 地方競馬所属馬として初のJBC制覇を果たし、地方競馬に果たした多大な貢献を讃え、特別表彰馬に選定された。 | |
2014年 | ライデンリーダー | 中央競馬との本格的交流が始まった1995年に中央のクラシックで活躍したことが評価された。 |
アジュディケーティング | 1993年から2014年に引退するまで、種牡馬として長きに渡り活躍馬を輩出し続けたことが評価された。 | |
2015年 | オグリローマン | 1994年に、地方競馬出身馬としてJRAの桜花賞を制し、地方競馬全体を盛り上げたことが評価された。 |
2016年 | メイセイオペラ | 1999年に、地方競馬所属馬としてJRAのフェブラリーステークスを制し、地方競馬全体を盛り上げた。 |
イナリワン | 地方競馬出身馬として1989年にJRAの天皇賞・春、宝塚記念、有馬記念を制した。 | |
2018年 | サウスヴィグラス | ダート短距離路線で圧倒的な成績を残し、種牡馬としても地方競馬リーディングサイアーに何度も輝くなど地方競馬の発展に多大な貢献をした。 |
2021年 | マルシュロレーヌ | 地方競馬のレースで能力を開花させ、世界最高峰のレースであるブリーダーズカップ・ディスタフを制するに至った同馬の蹄跡と、 日本で実施されているダート競走の地位を大いに高めたことなどが評価された。 |
2022年 | オメガパフューム | 2018年から2021年の東京大賞典を制し、国内史上初のGI競走4連覇の偉業を達成。地方競馬に於いて顕著な成績を残したことが評価された。 |
2023年 | マンダリンヒーロー | 地方競馬所属馬として初めてダートの本場と言われる米国への遠征を敢行し、サンタアニタダービーで2着に好走、米国ダートクラシック三冠競走のケンタッキーダービーにも出走した。 |
注釈
- ^ 地全協会長賞(当初は馬主が対象、1978年度より騎手・調教師・厩務員、1979年度には調教助手にも拡大された)、殊勲賞(1964年度より、各ブロックごとの勝率上位騎手を表彰)。後者は1970年度より調教師も対象とし、1980年度には新たに獲得賞金額上位騎手も表彰されることとなった。
- ^ この際、会計年度単位(4-3月)の表彰から、暦年単位(1-12月)での表彰に変更されている。
- ^ 2005年には地全協の財政悪化とその要因である地方競馬全体の売上低迷から全廃の可能性すら議論されており、各競馬場より選出してた優秀調教師・優秀騎手・優秀厩務員の表彰を廃止するなどのスリム化が図られている。
- ^ 当時の馬齢表記は旧表記。2001年以降の現行表記では2歳、3歳、4歳以上となる。
- ^ 1999年5月に受賞者のふたりを招いた騎手招待競走が益田競馬場で行われた
出典
- ^ a b 地方競馬全国協会『地方競馬史第5巻』2012年、104-110頁。
- ^ a b 「NARグランプリ90」地方競馬全国協会Furlong』1991年3月号、8-12頁。
- ^ a b c 「お知らせ:NARグランプリ 年度代表馬等の選定について」地方競馬全国協会Furlong』1994年12月号、65頁。
- ^ a b 地方競馬情報サイトKEIBA.GO.JP NARグランプリについて2014年8月3日閲覧。
- ^ a b “NARグランプリ歴代表彰馬・表彰者一覧”. 地方競馬情報サイト. 地方競馬全国協会. 2021年8月7日閲覧。
- ^ “ラブミーチャンが2歳で地方年度代表馬に”. netkeiba (2010年1月7日). 2010年1月8日閲覧。
- ^ 「トピックス:NARグランプリ’90」地方競馬全国協会Furlong』1991年2月号、67頁。
- ^ “ダート競馬トピックス”. ラジオたんぱ競馬実況ホームページ. ラジオたんぱ (1999年5月24日). 2003年8月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月28日閲覧。
- 1 NARグランプリとは
- 2 NARグランプリの概要
- 3 人物に関する表彰
- 4 NARグランプリに関する主な記録
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