自炊 (電子書籍) 「スキャン代行業」の法的問題

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自炊 (電子書籍)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/20 06:21 UTC 版)

「スキャン代行業」の法的問題

自ら所有する書籍を自分で利用するためにデジタル化する行為(いわゆる「自炊」)は、現時点では著作権法上の問題はないとされている[22]。裁断されたオリジナルの本は「自炊」後に破棄されることが多いとされるが、ネットオークションで「裁断済」の本を出品する者もいる[23]。ネットオークションで「裁断済」の本を販売・購入する行為自体は違法行為ではないとされている[24]

しかし、自炊増加に伴い登場した新業態の「スキャン代行ビジネス」については、著作権との関連で法律的な議論が発生している[3]。スキャン代行サービスが、サービス提供者が明らかに使用主体ではなく、そのうえ、著作権法第30条1項1号「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合」に該当する故、同条が使用者に認める私的使用の範囲を逸脱し、業者の可罰的違法性ならびに依頼主体の違法性が存在するとしている。

代行したかどうかとは無関係だが、スキャンされたデータはコピーが容易で劣化せず、またインターネットに違法アップロードされる危険があるとして、出版業界には電子書籍化行為のビジネスへの影響を懸念する意見がある。出版業者や作家の一部は、業務として書籍を電子化し、依頼者へデータを譲渡するスキャン代行行為は「複製権」を侵害する行為であり、違法である可能性があると主張している[25][26][注 3][注 4]

スキャン代行を拒否することを表明している出版社・著作者の書籍や、権利関係が複雑で表紙と中身が異なることの多い雑誌のスキャンを断る業者もある。

訴訟

2011年9月5日付で、日本の大手出版社7社(角川書店講談社光文社集英社小学館新潮社文藝春秋)と作家122人はスキャン代行業者約100社に対し、該当する出版社・著作者の自炊代行ビジネスを継続するか否か、私的利用であることをどのように確認しているか、法人からの発注を拒否しているかどうかを問い質す質問状を一斉に発送し、9月16日までの回答を求めた[25][26][3]。質問状に対し一部スキャン代行業者は「あまりにも一方的」などと反発している[注 5]

2011年12月20日、上記質問状の回答を元に作家7人(東野圭吾浅田次郎大沢在昌林真理子永井豪弘兼憲史武論尊)がスキャン代行業者2社を東京地方裁判所に提訴した[27]が、業者廃業に伴い同訴訟は2012年5月22日に取り下げられた[28]。再度、2012年11月27日に、スキャン代行業者7社を東京地方裁判所に提訴した[29]。2013年9月30日、「自炊」代行は違法であるとの判決が下った[30]。業者側は控訴したが、2014年10月22日に知的財産高等裁判所は「業者側が事業主体として複製行為を行っており私的複製と解釈することはできない」として控訴を棄却した[31][32]

協会

2013年3月26日、著作権利者側は、蔵書電子化事業連絡協議会(Myブック変換協議会)を設立[33]

2013年6月3日、スキャン代行側は、株式会社ブックスキャン・山セ・FIVE GIVES・SGIシステムなど4社で、一般社団法人 日本蔵書電子化事業者協会(JABDA)を設立[34]

2013年6月14日、蔵書電子化事業連絡協議会(Myブック変換協議会)と日本蔵書電子化事業者協会の間で、「蔵書の電子化における基本方針」が作られた[35]


注釈

  1. ^ デジタルデータそのものは紙製の書籍類と異なって経年劣化しないが、データを記録するメディアはCDDVDBDHDDのいずれであってもその寿命は有限であり、データが読み出せなくなる前に新たなメディアへ書き写さないと情報は失われる可能性がある。
  2. ^ スキャン作業によってJPGPDFなどの画像データに変換する。
  3. ^ スキャン代行サービスが、サービス提供者が明らかに使用主体ではなく、そのうえ、著作権法第30条1項1号「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合」に該当する故、同条が使用者に認める私的使用の範囲を逸脱し、業者の可罰的違法性ならびに依頼主体の違法性が存在するとしている (ITmedia)
  4. ^ 松田政行弁護士は、ソニーロケーションフリーを利用し海外での日本のテレビ番組視聴を可能にするサービスの提供業者が著作権侵害(テレビ放送局が保持する送信可能化権の侵害)に問われたロケーションフリー裁判の最高裁判決の例を挙げた上で、違法と判断される可能性は高いとしている「自炊」代行者と出版社対立 - asahi.com
  5. ^ 2011年9月19日付け朝日新聞(3面(社会面))「本の『自炊』代行対決色」。この記事内の「キーワード説明用囲み記事」:「自炊」には、「語源はデータを自ら『吸い出す』ことに由来する(「炊」は当て字)との説が有力だ。」と掲載されている。

出典

  1. ^ Impress PC Watch (2011年2月18日). ““自炊”のための「ドキュメントスキャナ再入門講座」”. 2011年4月15日閲覧。
  2. ^ じすい【自炊】モニ太のデジタル辞典[リンク切れ]
  3. ^ a b c 西尾泰三 (2011年9月6日). “出版社からスキャン代行業者への質問状を全文公開、潮目は変わるか”. ITmedia. 2011年9月8日閲覧。
  4. ^ 【出版】電子書籍元年2つの落とし子 アップストア海賊版と「自炊代行」業者”. 朝日新聞. www.asahi.com (2011年2月10日). 2011年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月19日閲覧。
  5. ^ 山口真弘『【自炊】のすすめ - 電子書籍「自炊」完全マニュアル』インプレスジャパン、2011年、pp.220-222
  6. ^ 桑名由美『仕事で役立つ! PDF完全マニュアル』秀和システム、2019年、pp.172-186
  7. ^ DIY High-Speed Book Scanner from Trash and Cheap Cameras”. instructables.com. 2014年1月19日閲覧。
  8. ^ 裁断なしのデジタルデータ化――お手軽“自炊”スキャナ「Simply Scan A3」を試す” (2011年3月8日). 2013-06018閲覧。
  9. ^ Davies, John. “4DigitalBooks launches digital book scanner”. PrintWeek. 2020年4月10日閲覧。
  10. ^ Stanford University Libraries (SUL) Robotic Book Scanner”. Stanford University Libraries (SUL). 2020年4月10日閲覧。
  11. ^ Technology Innovation Awards: Winners 2001”. Dow Jones. 2015年9月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年8月7日閲覧。
  12. ^ European Commission - PRESS RELEASES - Press release - British, Swedish and Austrian entrepreneurs win the EU's "Nobel prize" for ICT”. europa.eu. 2019年6月4日閲覧。
  13. ^ Treventus ICT Grand price 2007”. Treventus. 2020年4月10日閲覧。
  14. ^ Bavarian State Library VD16 project”. Treventus. 2020年4月10日閲覧。
  15. ^ Rapp, David. “Product Watch: Library Scanners”. Library Journal. 2014年5月11日閲覧。
  16. ^ US 7508978, Lefevere, Francois-Marie & Marin Saric, "Detection of grooves in scanned images", issued March 24, 2009, assigned to Google 
  17. ^ The Secret Of Google's Book Scanning Machine Revealed, by Maureen Clements, April 30, 2009.
  18. ^ Guizzo, Erico (2010年3月17日). “"Superfast Scanner Lets You Digitize Book By Flipping Pages", IEEE Spectrum, March 17, 2010”. Spectrum.ieee.org. 2014年8月8日閲覧。
  19. ^ システム ビジョン デザイン:超高速画像処理”. ishikawa-vision.org. 2020年4月20日閲覧。
  20. ^ 非破壊型「切らずにスキャン」ScanSnap SV600は本当に「自炊」に使えるか?【前編】 - ITmedia、2013年7月12日(2021年5月14日閲覧)
  21. ^ 非破壊型「切らずにスキャン」ScanSnap SV600は本当に「自炊」に使えるか?【後編】 - ITmedia、2013年7月17日(2021年5月14日閲覧)
  22. ^ 書籍の電子化、「自炊」「スキャン代行」は法的にOK? ~福井弁護士に聞く著作権Q&A”. インプレス (2010年9月17日). 2013年6月16日閲覧。
  23. ^ “やじうまWatch 自炊ブームの余波? 裁断済みの書籍がヤフオクで取引中”. INTERNET Watch. (2010年8月18日). https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/387630.html 2010年11月19日閲覧。 
  24. ^ “書籍の電子化、「自炊」「スキャン代行」は法的にOK?”. INTERNET Watch. (2010年9月17日). https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/393769.html 2014年11月1日閲覧。 
  25. ^ a b “スキャンし電子化、「自炊」業者に質問書 作家や出版社”. 朝日新聞. (2011年9月5日). オリジナルの2011年9月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110905172604/www.asahi.com/national/update/0905/TKY201109050466.html 2011年9月8日閲覧。 
  26. ^ a b 増田覚 (2011年9月5日). “「書籍の“自炊”代行は複製権侵害」出版社7社と作家122人が業者に質問状”. Impress INTERNET Watch. https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/475415.html 2011年9月8日閲覧。 
  27. ^ 書籍スキャン代行業者を提訴=著名作家7人が差し止め請求-東京地裁” (2011年12月20日). 2013年6月21日閲覧。
  28. ^ 「自炊」代行訴訟が終結 業者が廃業、作家側訴え取り下げ”. IT Media (2012年5月22日). 2013年6月21日閲覧。
  29. ^ 確たる判決を求めて――作家7名がスキャン代行業者7社を提訴 - ITmedia eBook USER
  30. ^ 「自炊」代行めぐる著作権訴訟、作家側が勝訴 東京地裁 - 朝日新聞 2013年9月30日
  31. ^ 自炊代行 2審も作家側が勝訴 著作権侵害認める”. 産経ニュース (2014年10月22日). 2014年10月22日閲覧。
  32. ^ 「自炊代行」は著作権侵害、二審も作家側主張認める判決、東京高裁”. 知財情報局 (2014年10月22日). 2014年10月22日閲覧。
  33. ^ 「自炊」代行を認めるルール作りへ、作家など「Myブック変換協議会」設立 - ITmedia
  34. ^ ブックスキャンら4社、「日本蔵書電子化事業者協会」設立 - ITmedia eBook USER
  35. ^ 6月16日 蔵書の電子化における基本方針に合意についてのお知らせ。


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