物価 物価の概要

物価

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/26 02:50 UTC 版)

  • (経済学)経済全体での一般的な物価水準[1]。種々の商品やサービスの価格を、ある一定の方法で総合した平均値[2]
  • 「ある家計が1年間生活していく上で必要な、さまざまなサービス価格を合計したもの」のこと[3]

概説

「物価」という概念は、文字どおりには「ものの価格」のことであるが、経済学で「物価」と言う場合は、一般に「物価水準」のことを指している[1]

学問・行政・市民運動など、分野ごと、視点ごとにいくつかの概念のとらえかたがありうるが、経済学的な「物価」ひとつをとっても、もともと具体的なひとつの「物価」の数値が絶対的に存在するわけではなく、あくまで統計的な指数(多くの財の価格の平均)によってとらえられるものであり、どのような財の価格を指数に取り入れるかという判断次第で変わるものであり、「消費者物価指数」「企業物価指数」「GDPデフレーター」等がある。これらの異なった「物価」は、その目的に応じて使い分けられている[1]。日本大百科全書によると、卸売物価・小売物価、輸出物価・輸入物価(国内物価・国際物価)、都市物価・農村物価などがある[2]。(さまざまな物価指数については、下の章で解説する。)

「物価」とは、いいかえれば、商品やサービスが貨幣に対してもつ「交換価値」のことであり、貨幣の「購買力」とは逆数の関係となる[2]。つまり、「物価」が高くなると、同一量の貨幣で購入できる商品やサービスの量は少なくなる、という関係にある。

物価の決定

貨幣数量説

この説によると物価水準は貨幣の総量によって決定されるとする[4]。貨幣数量説には一定の正当性があるとされるが問題点も指摘されている[4]

一般物価と相対価格

経済学者クヌート・ヴィクセルは、名目価格(一般物価)の変動が、相対価格の変動とは根本的に異質な現象であることを発見した[5]

物価の変動

物価は、「景気」が上向くと商品・サービスの需要が高まり上昇し、経済が低迷すると低下することから「経済の体温計」と呼ばれている[6][7]

インフレとデフレ

物価が継続的に上昇する状態をインフレーション(インフレ)、物価が継続的に低下している状態をデフレーション(デフレ)という[7]

物価の上昇要因には景気拡大、金融緩和、賃金上昇、需要増加、供給不足、人口増加、原材料費や光熱費の上昇、戦争や紛争などがある[7]

物価の下落要因には技術進歩による生産性向上、規制緩和による新規参入、輸入品の増加などがある[8]

また、経済活動が停滞する状況で物価が継続的に上昇する状態をスタグフレーションという。

物価と中央銀行の役割

日銀は一般人向けのサイトなどで、物価の安定は、経済が安定的かつ持続的成長を遂げていく上で不可欠な基盤であり、中央銀行はこれを通じて「国民経済の健全な発展」に資するという役割を担う、と謳い、中央銀行の金融政策の最も重要な目的は「物価の安定」を図ることにある、と謳う[9]。なお、資産価格の金融政策運営上の位置付けを考えた場合、資産価格の安定そのものは金融政策の最終目標とはなり得ないというのが、各国当局、学界のほぼ一致した見方である[10]

物価指数の意義

物価指数(ぶっかしすう、: price index)とは、物価の変動を指数にしたもの。価格の情報だけをもとにして計算するのではなく、財・サービスの量と価格をもとに計算される。

消費者が日常購入する商品やサービスの価格を指数化した消費者物価指数、企業間での商品取引価格を指数化した企業物価指数、名目GDPを実質GDPで割ったGDPデフレーターがある。

経済学者のスティーヴン・ランズバーグは「多くの価格が個別に変化する世界では、偏向の無い正確・単一の指標を作成することはできない。アメリカ政府はいくつかのインフレ指標を発表しており、それぞれ固有の偏りがあるため、エコノミストは目的に沿った適切な指標を慎重に選ぶように努めている」と指摘している[11]


注釈

  1. ^ 調査価格が外貨建ての場合には、調査対象月における銀行の対顧客電信直物相場により円換算する

出典

  1. ^ a b c 世界大百科事典第二版「物価」
  2. ^ a b c 日本大百科全書「物価」
  3. ^ 飯田泰之 『歴史が教えるマネーの理論』 ダイヤモンド社、2007年[要ページ番号]
  4. ^ a b 渡辺健一「貨幣理論の基礎認識」『成蹊大学経済学部論集』第47巻第1号、成蹊大学経済学部学会、2016年7月、183-205頁、CRID 1390573242706938240doi:10.15018/00000084hdl:10928/805ISSN 0388-88432023年11月28日閲覧 
  5. ^ 日本経済新聞社編 『経済学の巨人 危機と闘う-達人が読み解く先人の知恵』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2012年、35頁。
  6. ^ 第一勧銀総合研究所編 『基本用語からはじめる日本経済』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2001年、96頁。
  7. ^ a b c d 投資に役立つ経済ワードvol.6 インフレ”. 野村アセットマネジメント. 2020年6月27日閲覧。
  8. ^ 最近の経済動向” (PDF). 日本政策投資銀行. 2020年6月27日閲覧。
  9. ^ 教えて!にちぎん」] 日本銀行
  10. ^ 資産価格と金融政策運営」植村・鈴木・近田(日本銀行ワーキングペーパー1997-7
  11. ^ スティーヴン・ランズバーグ 『ランチタイムの経済学-日常生活の謎をやさしく解き明かす』 日本経済新聞社〈日経ビジネス人文庫〉、2004年、205頁。
  12. ^ 「消費者物価指数の精度について-日本銀行の要望について」総務省統計局ご利用のページが見つかりません[リンク切れ]
  13. ^ 「消費者物価指数を巡って」白塚重典Not.Found. [リンク切れ]
  14. ^ わかりやすい用語集 解説:PCEデフレーター(ぴーしーいーでふれーたー) | 三井住友DSアセットマネジメント
  15. ^ Personal Consumption Expenditures Price Index | U.S. Bureau of Economic Analysis (BEA)
  16. ^ 米国の個人消費支出価格指数について - 今月の注目指標 No.047(2003年7月17日) - 日本政策投資銀行調査部
  17. ^ Federal Reserve Board - 2020 Statement on Longer-Run Goals and Monetary Policy Strategy
  18. ^ 日経CPINow|金融政策・経済分析に必須のビッグデータ
  19. ^ 株式会社ナウキャストについて | 株式会社ナウキャスト
  20. ^ 日経・東大日次物価指数とは: 日本経済新聞
  21. ^ 東大・日経の物価指数 脱デフレ検証の一助に日本経済新聞 2014年7月8日
  22. ^ 株式会社ナウキャスト - INITIAL
  23. ^ オルタナティブデータ活用サービス | 日経オルタナティブデータ
  24. ^ SRI一橋大学消費者購買指数・単価指数
  25. ^ 消費者物価指数より「動学的価格指数」の導入を 日経ビジネス 澁谷 浩 2018年8月23日
  26. ^ 動学的均衡価格指数の理論と応用-資産価格とインフレーション」、『金融研究』、第10巻第4号、1991年






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