宮内庁 概説

宮内庁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 01:58 UTC 版)

概説

内閣府設置法第48条および宮内庁法第1条に基づき設置されている宮内庁は、内閣総理大臣の管理の下にあって、皇室関係の国家事務のほか、日本国憲法第7条に掲げる天皇の行う国事行為のうち外国大使公使を接受することと儀式を行うことに係る事務を行い、御璽国璽を保管している。皇室関係の国家事務には、天皇皇后を始め皇室の構成員(皇族)の宮中における行事や国内外への外出訪問、諸外国との親善などの活動や日常の世話のほか、皇室に伝わる文化の継承、皇居京都御所等の皇室関連施設の維持管理などがある[4][5]

特命全権大使らを送迎する宮内庁の儀装馬車

1869年明治2年)7月8日、古代の太政官制にならって、いわゆる「二官八省」からなる政府が組織されたが、この際、かつての大宝令に規定された宮内省(くないしょう/みやのうちのつかさ)の名称のみを受け継ぐ宮内省が設置され長官として宮内卿が置かれた。1885年(明治18年)に内閣制度が創設される際には、宮内卿に替わって宮内大臣が置かれたが、「宮中府中の別」の原則に従って、宮内大臣は内閣の一員とされなかった。このとき、内大臣宮中顧問官などの官職も置かれた。1886年(明治19年)には宮内省官制が定められ、2課5職6寮4局の組織が定まった。1889年(明治22年)には、大日本帝国憲法の公布とともに、旧皇室典範が勅定され、皇室自律の原則が確立した。1908年(明治41年)には、皇室令による宮内省官制が施行され、宮内大臣は皇室一切の事務につき天皇を輔弼する機関とされた。

1945年(昭和20年)の終戦の際には、宮内省は、1官房2職8寮2局のほか、内大臣府掌典職御歌所帝室博物館帝室林野局学習院など13の外局と京都事務所を持ち、職員6,200人余を擁する大きな組織となっていた。その後、宮内省の事務を他の政府機関に移管もしくは分離独立して機構の縮小を図り、1947年(昭和22年)5月3日日本国憲法施行とともに、宮内省から宮内府となり、内閣総理大臣の所轄する機関となった。宮内府は、宮内府長官の下、1官房3職4寮(侍従職、皇太后宮職、東宮職、式部寮、図書寮、内蔵寮、主殿寮)と京都事務所が置かれ、職員数も1,500人弱となった[6][7]

1949年(昭和24年)6月1日には、総理府設置法の施行により、宮内府は宮内庁となって総理府の外局となり、宮内庁長官の下に宮内庁次長が置かれ、1官房3職2部と京都事務所が設置された。2001年平成13年)1月6日には、中央省庁改革の一環として内閣府設置法が施行され、宮内庁は内閣府に置かれる機関となった。

2019年(平成31年/令和元年)、天皇の退位等に関する皇室典範特例法によって明仁から徳仁への皇位継承が行われたことに伴う組織改正により、上皇職及び皇嗣職が新設され、1官房5職2部と京都事務所の体制となった。

広報体制の整備へ(SNSの活用)

眞子内親王の結婚について週刊誌報道やインターネット上の書き込みが内親王の精神状態や体調に悪影響を与えた事実を重視し、2022年(令和4年)8月、宮内庁は皇室に関する正確な情報を広く伝えるため、担当の幹部職員を置いてSNSなどで積極的に発信していくことを明らかにした。役職としては広報体制の整備のため参事官ポストの新設と、広報担当の職員2人の増員が検討されている[8]

9月8日、西村泰彦宮内庁長官により、開設した場合予想される一部の国民による炎上のリスクが指摘され、開設が最終的な決定事項でない旨説明された[9]

2023年(令和5年)4月1日、長官官房総務課に新たに「広報室」を設置した[10]。初代室長には警察庁出身者の藤原麻衣子が就任し、積極的な広報や新たな情報発信方法を検討する[11][12]

皇室ジャーナリストで宮内庁の内情に詳しい高清水有子によれば2023年12月時点で宮内庁広報室は、SNSで秋篠宮家に対しバッシングする相手についてはすでに個人を特定しており、収集した情報を元に今後、発信者に対し対処をしていく予定であるとしている[13]

Instagramの開設

2024年(令和6年)3月25日、宮内庁は同年4月からInstagramに公式アカウントを開設することを発表[14]。同月1日から運用を開始した[15]

開設当初は天皇や皇后の公務に関する画像や動画を投稿するとしている。なお、画像や動画などの投稿は宮内庁職員が行い、皇族が投稿することは無いとしている。また、コメント欄は開設しない[14]

他のアカウントとの相互フォローについては外国の王室から申請があれば検討すると説明していたが[16]、2024年4月10日にオランダ王室のアカウントが宮内庁のアカウントをフォローしたのを受けて、同庁も翌11日にフォローバックを行ったため、初の相互フォローの事例となった[17]


注釈

  1. ^ 宮内庁長官、侍従長、上皇侍従長、皇嗣職大夫、式部官長侍従次長及び上皇侍従次長を含まない。行政機関の職員の定員に関する法律第2条第2項第2号。宮内庁法附則第2条第8項及び附則第3条第6項。
  2. ^ 上皇職及び皇嗣職の設置は、天皇の退位等に関する皇室典範特例法附則(上皇職及び皇嗣職の設置を規定した宮内庁法の一部改正)により追加された宮内庁法附則第2条及び同法附則第3条による。
  3. ^ 東宮職は皇位継承によって皇太子が空席となったため、設置されていない。
  4. ^ 宮内庁法附則第2条第8項及び附則第3条第6項による場合を含む。
  5. ^ 皇室経済法第4条第2項、第6条第8項。
  6. ^ 宮内府次長についても、宮内府に1人置くこととされ(宮内府法2条1項)、宮内庁次長と同様の職掌を定めていた(同法5条)。
  7. ^ 定年退職のため4月1日付でない[27]

出典

  1. ^ 行政機関職員定員令(昭和44年5月16日政令第121号)(最終改正、令和6年3月29日政令第87号) - e-Gov法令検索
  2. ^ a b 令和6年度一般会計予算 (PDF) 財務省
  3. ^ 山本淳, 小幡純子 & 橋本博之 2003, p. 23-24.
  4. ^ 宮内庁. “宮内庁”. 宮内庁(公式サイト). 2023年4月10日閲覧。
  5. ^ 宮内庁. “組織・所掌事務”. 宮内庁(公式サイト). 2023年4月10日閲覧。
  6. ^ 宮内庁. “沿革”. 宮内庁(公式サイト). 2013年3月閲覧。
  7. ^ 印刷局, ed (1947) (preview). 各庁職員抄録. 印刷局. pp. 12-13. NDLJP:1078939. https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1078939/8 
  8. ^ 「宮内庁 SNS活用し皇室情報を発信へ 広報体制も整備」『NHK News Web』2022-8-30
  9. ^ テレ東BIZ. “宮内庁がSNS活用めぐり軌道修正”. 2022年9月8日閲覧。
  10. ^ 宮内庁組織規則の一部を改正する内閣府令(令和5年内閣府令第29号)2023年3月30日付官報特別号外第23号49頁
  11. ^ 宮内庁「広報室」民間も登用 室長に藤原氏、きょう発足」『産経新聞』、2023年4月1日。2023年4月1日閲覧。
  12. ^ 「宮内庁 新設の広報室 初代室長に警察庁の藤原麻衣子氏」『NHK News Web』2023-4-1
  13. ^ 高清水氏は「対処」が具体的にはどのようなものであるかについては明言は避けているが、該当者に対し今後、油断を怠らないようにアドバイスしている。高清水氏の発言のスクリプトは以下の通りである。「そういうこと(誹謗・中傷記事)を書き込んでいる皆さん、宮内庁の調査力ということは馬鹿にしないほうがいいです。あなたたちのことはちゃんと宮内庁ではつかんでいます。どういう人物がどういう発信をしているかという、この宮内庁の広報室はちゃんと掴んでいますし、その情報を集めた中で今後何らかの対処をしていくと思いますので、あの、油断しないでくださいね。」(※( )内は補筆。)「【Front Japan 桜】秋篠宮家バッシングは皇統破壊-誹謗中傷を論破する![桜R5/12/1」『新日本文化チャンネル』2023-12-1(00:34:17~00:34:40)
  14. ^ a b 宮内庁が4月からインスタグラムで皇室情報発信、初のSNS運用…まずは両陛下の画像・動画から”. 読売新聞 (2024年3月25日). 2024年3月26日閲覧。
  15. ^ 宮内庁「インスタ」公式アカ公開 フォロワー30万人超”. 共同通信 (2024年4月1日). 2024年4月12日閲覧。
  16. ^ フジテレビ (2024年4月11日). “【速報】宮内庁「インスタグラム」をオランダ王室のアカウントがフォロー 外国王室のフォローは初”. FNNプライムオンライン. 2024年4月12日閲覧。
  17. ^ TBSテレビ (2024年4月11日). “宮内庁インスタが初フォロー 第一号はオランダ王室公式アカウント 相互フォローに”. TBS NEWS DIG. 2024年4月12日閲覧。
  18. ^ 新設「上皇職」は65人程度、退位後の両陛下補佐 - 日本経済新聞、2017年12月25日配信。
  19. ^ 宮内庁も新体制=上皇職・皇嗣職が発足-皇位継承 - 時事通信2019年5月1日[リンク切れ]
  20. ^ 宮内庁職員 宮内庁
  21. ^ 宮内庁組織令の一部を改正する政令(平成31年政令第158号)2019年4月24日付官報本紙第7495号
  22. ^ 主な特別職の職員の給与 (PDF)
  23. ^ a b “宮内庁長官に山本氏 閣議決定”. 日本経済新聞. (2016年9月23日). https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG22H3X_T20C16A9EAF000/ 2016年9月27日閲覧。 
  24. ^ 宮内庁長官に西村氏就任 令和の皇室支える
  25. ^ 天皇の退位等に関する皇室典範特例法 - e-Gov法令検索
  26. ^ 特別職の職員の給与に関する法律 別表1
  27. ^ 平成6年4月1日付『官報』本紙第1371号13ページ第1段より。
  28. ^ 平成12年4月4日付『官報』本紙第2842号11ページ第1段より。
  29. ^ “宮内庁次長に黒田武一郎氏”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2023年12月15日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE153XG0V11C23A2000000/ 2023年12月24日閲覧。 
  30. ^ 宮内庁幹部名簿(令和5年12月20日現在)”. 宮内庁. 2023年12月24日閲覧。






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