人民元 流通している紙幣

人民元

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 16:45 UTC 版)

流通している紙幣

1999年10月1日より建国50周年を記念し第5版(セット)の発行が始まり、その後2005年8月31日より第5版改訂版の発行が始まっている。ユーリオン模様を導入するなど、第4版に比べ、偽造対策と耐久性の向上が図られている。2015年から2020年にかけて、第5版紙幣に新たな偽造防止技術を導入する改訂が行われた(偽造紙幣の多い100元紙幣は優先的に2015年11月12日に、その他は2019年・2020年に発行)。最高額紙幣は100元であり、高額紙幣がないことも中国でQRコード決済などのキャッシュレス決済が急速に普及し、現金を駆逐した要因の一つである。

デザインは、アラビア数字が用いられ、中央の漢数字表記の背景に中国でよく使われる花の図案化、表面にすべて毛沢東の肖像画を使用。裏面には代表的な少数民族の言語として、モンゴル文字モンゴル語)、チベット文字チベット語)、アラビア文字ウイグル語)、アルファベットチワン語)の4種類が表記されている。

毛沢東の肖像が単独で用いられたのは第5版からであり、それ以前の第4版は満州族モンゴル族漢民族回族高山族プイ族朝鮮族チワン族チベット族ウイグル族イ族トン族ミャオ族といった中国の少数民族の肖像が多く、毛沢東の肖像は周恩来劉少奇朱徳とともに描かれた100元のみだった。

第5版としては1元以上の6種類。ただし現在、以前の版の小額紙幣も流通している。また、毛沢東の肖像がない記念貨幣も存在し、例えば2000年を記念した100元紙幣は表面はが描かれて裏面に中華世紀壇が描かれた[47]

現在有効なのは第5版と、第4版のうち5角と1角の紙幣である。第3版と第2版の紙幣は廃止されている。第1版は1953年に行われた10000分の1のデノミネーションにより廃止されている。なお、第2版の「分」単位の紙幣は2007年4月1日に廃止されている。現在は1角以上まとまった場合に限り、指定金融機関で角以上の紙幣との交換が可能となっている。[要検証]

人民元の紙幣の記番号は、現在有効な紙幣では、基本的にはアルファベット2桁+数字8桁で、第5版紙幣ではアルファベット2桁と数字のうち先頭の2桁が赤色で残りは黒色、第4版の5角・1角紙幣では全て赤色という構成となっている。ただし、発行枚数が多くてこの形式の記番号でありうる全ての組み合わせを使い切ってしまった場合は、1桁目と3桁目をアルファベットとし、2桁目と4~10桁目を数字とする形式に変更している。さらにその次は1桁目と4桁目をアルファベットとし、残りを数字とする形式、またその次は1桁目と5桁目をアルファベットとし、残りを数字とする形式に変更している。

印章については、第5版紙幣では裏面に「行長之章」の正方形の印章が印刷されている。第4版紙幣では「行長之章」のほか、「副行長章」の印章が印刷されていた。

中国人民銀行は2018年5月1日より、第4版のうち5角、1角を除く紙幣、および1角硬貨の流通を停止することを明らかにした[48]

第5版人民幣

額面 サイズ 主要な色 表面の肖像画 裏面のモチーフ 漢数字
背景
発行年月日
100元 156 x 77 mm     毛沢東 人民大会堂 1999年第5版1999年10月1日
2005年第5版改訂版2005年8月31日
2015年第5版再改訂版2015年11月12日[49]
50元 151 x 70 mm     青緑 毛沢東 チベットラサポタラ宮 1999年第5版2001年9月1日
2005年第5版改訂版2005年8月31日
2019年第5版再改訂版2019年8月30日
20元 146 x 70 mm     茶色 毛沢東 桂林漓江 1999年第5版2000年10月16日
2005年第5版改訂版2005年8月31日
2019年第5版再改訂版2019年8月30日
10元 140 x 70 mm     毛沢東 長江三峡瞿塘峡の夔門(きもん) 薔薇 1999年第5版2001年9月1日
2005年第5版改訂版2005年8月31日
2019年第5版再改訂版2019年8月30日
5元 135 x 63 mm     毛沢東 山東省泰山 水仙 1999年第5版2002年11月18日
2005年第5版改訂版2005年8月31日
2020年第5版再改訂版2020年11月5日
1元 130 x 63 mm     毛沢東 杭州西湖 1999年第5版2004年7月30日
2019年第5版改訂版2019年8月30日

過去の版(現在も有効)

額面 サイズ 主要な色 表面の絵柄 裏面の絵柄 発行年月日
5角 125 x 58 mm 赤紫 ミャオ族チワン族 中華人民共和国国章・彩紋 1980年第4版1987年4月27日
1角 115 x 52 mm 高山族満州族 中華人民共和国国章・彩紋 1980年第4版1988年9月22日

  1. ^ a b 張 2012, p. 40.
  2. ^ "Женьминьби". ru.knowledgr.com (ロシア語). 2023年12月5日閲覧
  3. ^ "本位货币"元"的来历". people.com.cn (中国語). 2001年10月15日. 2013年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年5月17日閲覧
  4. ^ 早苗, 浦上 (2023年7月18日). “4年ぶりに渡航した中国は「デジタル・ガラパゴス」だった。オンライン化と実名制徹底、外国人旅行者は実質排除”. BUSINESS INSIDER JAPAN. 2023年7月20日閲覧。
  5. ^ "その「¥」表示は本当に日本円の表示ですか?-通貨をよく確認しないと約20倍の価格になってしまうため要注意!!-(発表情報)". 国民生活センター. 国民生活センター. 2023年4月19日. 2023年12月5日閲覧
  6. ^ a b 『体系金融大辞典』(東洋経済新報社、1971年) ISBN 978-4-492-01005-1 第Ⅻ 貨幣金融制度(各国)7.中国 a通貨制度(執筆者:宮下忠雄)
  7. ^ a b c d e 張 2012, p. 41.
  8. ^ a b c d e 張 2012, p. 42.
  9. ^ a b c d e f g 張 2012, p. 43.
  10. ^ a b c d e f 張 2012, p. 44.
  11. ^ a b c d 張 2012, p. 45.
  12. ^ a b c 張 2012, p. 47.
  13. ^ a b c 張 2012, p. 49.
  14. ^ "中国大陸と香港、人民元建て貿易決済開始"、中国国際放送局、チャイナネット、2009年7月6日発信(2009年7月29日閲覧)
  15. ^ 中国人民銀行他『跨境貿易人民幣結算試点管理弁法』2009年7月1日公布(日本語では「人民元建て貿易決済の試行に関する管理規則」や「クロスボーダー貿易人民幣決済試行管理弁法」などと翻訳されている)
  16. ^ “人民元・英ポンドの直接取引、19日に開始-元利用拡大を推進”. ブルームバーグ. (2014年6月18日). http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7CU9J6S972E01.html 
  17. ^ a b c d e f g h 「(円が映す戦後70年:下)進まなかった「国際化」」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年9月24日、朝刊、4面。(経済面)
  18. ^ a b c d 「人民元主要通貨へ地固め 習主席訪米の焦点」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年10月27日、朝刊、11面。(国際面)
  19. ^ 麻生財務相「大丈夫か」 人民元の国際通貨認定にクギ刺す”. 産経新聞 (2015年10月2日). 2015年12月1日閲覧。
  20. ^ a b 「IMF主要通貨に人民元を採用へ 来月末にも最終判断」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年10月27日、夕刊、1面。
  21. ^ a b c 「人民元、「主要通貨」に IMF採用へ、ドル・円などと並ぶ 中国の規制撤廃、評価」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年10月28日、朝刊、9面。(経済1面)
  22. ^ 米国、人民元のSDR採用を支持 ルー財務長官が中国副首相に伝達”. ロイター (2015年11月7日). 2015年12月1日閲覧。
  23. ^ 財務相、IMFの人民元採用「悪いことではない」”. 日本経済新聞 (2015年11月20日). 2015年12月1日閲覧。
  24. ^ 人民元のSDR入り、信頼できる通貨増えるのは良いこと”. ロイター (2015年10月27日). 2015年12月1日閲覧。
  25. ^ 日本にも人民元決済銀を=中国財政相に要請-麻生氏”. 時事通信 (2015年10月9日). 2015年12月1日閲覧。
  26. ^ a b 「人民元「主要通貨」IMF、30日決定」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年11月15日、朝刊、6面。(経済面)
  27. ^ IMF、人民元のSDR採用を決定”. ロイター (2015年12月1日). 2015年12月1日閲覧。
  28. ^ 麻生財務相、人民元のSDR入り「民間取引に直接影響はない」”. ロイター. ロイター (2015年12月1日). 2015年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月1日閲覧。
  29. ^ 人民元の基準通貨入り支持=米財務省”. 時事通信 (2015年12月1日). 2015年12月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月1日閲覧。
  30. ^ a b c d e f g h 「人民元、「主要通貨」3位に 円を上回る IMF採用決定」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年12月1日、夕刊、1面。
  31. ^ a b 「人民元台頭「第3の通貨」 主要通貨入り 構成比、円上回る」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年12月2日、朝刊、3面。(総合3面)
  32. ^ a b 「中国人民元の取引時間倍増」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年12月24日、朝刊、4面。(経済面)
  33. ^ a b 中国人民銀行、フェイスブックの「リブラ」を警戒”. MITテクノロジーレビュー (2019年7月15日). 2019年11月7日閲覧。
  34. ^ 中国、中央銀行のデジタル通貨は「現金と電子マネーのいいとこどり」”. インプレス (2019年8月13日). 2019年11月7日閲覧。
  35. ^ 中国の「ブロックチェーン強国」宣言に沸く仮想通貨市場。習政権が目指す世界初の官製デジタル通貨”. ビジネスインサイダー (2019年11月6日). 2019年11月7日閲覧。
  36. ^ 中国、仮想通貨の利権譲らず 「競合打倒」 人民銀、実用化に本腰”. フジサンケイ ビジネスアイ (2017年2月25日). 2019年11月7日閲覧。
  37. ^ 中国人民銀行は独自のデジタル通貨を一部国内商業銀行とテスト中”. ロイター (2017年6月27日). 2019年11月7日閲覧。
  38. ^ 中国、1000万元相当のデジタル通貨発行へ 初の公開テスト実施”. ロイター (2020年10月10日). 2020年10月13日閲覧。
  39. ^ 中国が暗号資産法を可決、デジタル通貨発行へ準備”. ロイター (2019年11月3日). 2019年11月7日閲覧。
  40. ^ 中国人民銀、早ければ11月に独自の仮想通貨発行へ=フォーブス誌”. ロイター (2019年8月28日). 2019年11月7日閲覧。
  41. ^ 中国、ブロックチェーンの世界覇権を狙う デジタル通貨発行で国民監視”. 大紀元 (2019年11月2日). 2019年11月7日閲覧。
  42. ^ 中国、デジタル通貨導入へ 国民の消費動向の監視強化か”. AFPBB (2019年11月1日). 2019年11月7日閲覧。
  43. ^ 情報BOX:先頭を走る中国のデジタル人民元、仕組みと狙い”. ロイター (2020年10月20日). 2020年10月21日閲覧。
  44. ^ China needs first mover advantage in digital currency race: PBOC magazine”. ロイター (2020年9月21日). 2020年10月16日閲覧。
  45. ^ デジタル通貨にも広がる米中覇権争い”. ウェッジ (2019年10月16日). 2019年11月7日閲覧。
  46. ^ フェイスブックCEO、中国に警戒感 「一帯一路構想の一部となるデジタル人民元」と警鐘”. 産経ニュース (2019年10月24日). 2019年11月7日閲覧。
  47. ^ 中国人民银行关于发行迎接新世纪纪念钞、纪念币的公告
  48. ^ 中国人民银行公告〔2018〕第6号”. 中国人民银行 (2018年3月22日). 2018年4月18日閲覧。 “经国务院批准,中国人民银行决定自2018年5月1日起停止第四套人民币100元、50元、10元、5元、2元、1元、2角纸币和1角硬币(以下简称第四套人民币部分券别)在市场上流通。”
  49. ^ a b 大越匡洋 (2015年8月10日). “中国人民銀、新しい百元札を11月発行 偽造防止に重点”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM10H16_Q5A810C1FF8000/ 2017年2月19日閲覧。 
  50. ^ 本郷 (2009年9月22日). “偽札犯罪の摘発件数、既に昨年の1・5倍に=小額偽札増える―中国”. レコードチャイナ. https://www.recordchina.co.jp/b35532-s0-c30-d0052.html 2016年6月9日閲覧。 
  51. ^ 中国での偽札に関するQ&A”. 在中国日本国大使館 (2019年6月6日). 2020年10月8日閲覧。
  52. ^ 我妻伊都 (2016年5月30日). “新100元札発行から半年。偽札溢れる中国はどう変わった?”. ハーバー・ビジネス・オンライン. http://hbol.jp/95888 2016年6月9日閲覧。 
  53. ^ 奥北秀嗣 (2013年8月29日). “中国偽札見分け方講座 紙幣を壁にこすりつけろ!”. 中国ビジネスヘッドライト. http://www.chinabusiness-headline.com/2013/08/38307/ 2016年6月9日閲覧。 
  54. ^ 山中 (2015年11月13日). “世界で偽札がないのは日本だけ?その理由について中国ネットが議論=「日本円の価値は低いから犯罪分子が相手にしない」「歴史は捏造するのに」”. レコードチャイナ. https://www.recordchina.co.jp/b123062-s0-c30-d0052.html 2016年6月9日閲覧。 
  55. ^ 大隅 (2015年12月30日). “日本になぜ偽札がないか?中国ネットの疑問に日本人は「まねできない」と受け流す”. レコードチャイナ. https://www.recordchina.co.jp/b125778-s0-c30-d0052.html 2016年6月9日閲覧。 
  56. ^ “中国では「偽札」がATMから出てくる! 日本ではそんなことあるのか?”. J-CASTニュース. (2013年7月26日). https://www.j-cast.com/2013/07/26180289.html?p=all 2016年6月9日閲覧。 
  57. ^ “中国:精巧な偽札が全国に拡散、鑑別機もすり抜け”. newsclip.be. (2014年6月4日). http://www.newsclip.be/article/2014/06/04/22051.html 2016年6月9日閲覧。 
  58. ^ a b c d e 「中国建国以来「最大」の偽札事件摘発 2億1千万元分押収、29人拘束」『朝日新聞』朝日新聞社、2015年9月25日、朝刊、11面。(国際面)
  59. ^ a b c “中国建国以来「最大」の偽札事件摘発 2億1千万元分押収、29人拘束”. 朝日新聞デジタル. (2015年9月26日). オリジナルの2015年11月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20151104213834/http://www.asahi.com:80/articles/DA3S11983401.html 
  60. ^ 本郷 (2013年5月9日). “高額紙幣を作りたがらない中国、その事情は複雑―米専門家”. レコードチャイナ. https://www.recordchina.co.jp/b72089-s0-c30-d0052.html 2016年6月9日閲覧。 
  61. ^ 久保田るり子 (2016年4月20日). “北朝鮮がドルに続いて人民元までも偽造 怒り心頭の中国は金正恩第1書記をまたもじわり締め付けるが…”. 産経新聞 (産経新聞社). https://www.sankei.com/article/20160420-VVWS2LHEBNJCDMJBVNQ5M7YT6M/ 2016年6月19日閲覧。 
  62. ^ “中国「超キャッシュレス社会」の衝撃、日本はもはや追う側だ”. 週刊ダイヤモンド (ダイヤモンド社). (2017年7月10日). http://diamond.jp/articles/-/134622 2017年12月20日閲覧。 





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

「人民元」に関係したコラム

  • 株365のFTSE中国25証拠金取引と為替相場との関係

    株365のFTSE中国25証拠金取引と為替相場とはどのような関係にあるでしょうか。ここでは、FTSE中国25証拠金取引の値動きのもととなるFTSE中国25に似た動きをするハンセン指数と主要通貨のチャー...

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「人民元」の関連用語

人民元のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



人民元のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの人民元 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS