トヨタ・ハイエース
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トヨタ・ハイエース | |
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概要 | |
別名 | トヨタ・レジアスエース、マツダ・ボンゴブローニイ |
製造国 | 日本 |
販売期間 | 1967年- |
ボディ | |
ボディタイプ | キャブオーバーワンボックスカー |
駆動方式 | 後輪駆動 |
概要
1967年に発売を開始した。かつてはショートホイールベース(標準ボディ)やトラックもラインナップされていたが、現在それらは消滅しており、ロング、スーパーロング、ワゴン、ライトバン、コミューターのみとなっている。日産・キャラバンが長年の競合車種。
貨物車として性能が高く、宅配業を始め多くの企業で小型貨物車、社用車として広く用いられ、運転手を含めた10人乗りの特徴を活かし、送迎バス・乗合タクシー・ジャンボタクシー・ハイヤー・路線バス・コミュニティバスなど乗用・旅客輸送用、ほかに救急車・寝台車・現金輸送車・福祉車両など特種用途自動車のベース車としても利用される。
個人用途では、公道を走行できないロードレーサー・モトクロッサーなど競技用オートバイ、ロードバイクやトラックレーサーなど競技用自転車、大型のラジコン飛行機やマルチコプターなど趣味の機材、を輸送するトランスポーターとして、バニングやキャンピングカーのベース車両としても使用される。
事業用・自家用共にニーズがあるため、専門の中古車店や社外品のパーツ製造・販売などが成り立ち、ハイエースのみの市場も形成されている[1][2]。
中古車としての下取り価格が高く、耐久性が非常に優れているため新興国や開発途上国、テロリストなどにはトヨタ・ハイラックスおよびトヨタ・ランドクルーザーと共に需要が高い。それに関連して自動車窃盗団による日本国内での窃盗と密輸出も後を絶たず、日本損害保険協会による保険金支払い事案を対象とした調査結果で、2007年(平成19年)から7年連続で自動車盗のワースト1[3][4][5][注釈 1]となったため、メーカーでも対策を行っている(後述)。
初代 H10系(1967年 - 1977年)
トヨタ・ハイエース(初代) H10系 | |
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バン | |
ボディ | |
乗車定員 | 3/6/9/12/15人 |
エンジン位置 | フロント |
駆動方式 | 後輪駆動 |
パワートレイン | |
変速機 | 4MT |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,350mm |
全長 | 4,305mm |
全幅 | 1,690mm |
全高 | 1,890mm |
車両重量 | 1,130kg |
その他 | |
データモデル | デリバリーバン 3人乗り |
- 1967年2月
- トヨエースの小型版として、FR方式のキャブオーバーレイアウトを持つ初代モデルのトラック発売。テールランプはリフレクター込み3色コンビネーションタイプである。エンジンはコロナと同じ1.3Lの3P型であるが、コロナの70psに対し、ハイエースでは低回転域のトルクを重視した56ps仕様となっている。
- 1967年10月
- ワンボックスボディのワゴンを追加。エンジンはコロナと同じ1.5L・77psの2R型のみで、9人乗りのワゴンのみ。全幅以外の外寸とホイールベースは以後の4代目とほぼ同じ。ワゴンのリアドアはスライド式ではなく、ヒンジ式。
- 1968年4月
- スライドドアを持つ6人乗りのデリバリーバンを追加。定員は前席3名・後席3名の2列シートで、最大積載量は850キログラム。左のみのリアドアは前述のとおりスライド式で、バックドアは跳ね上げ式とドロップゲート(あおり)を組み合わせた上下2分割式となる。
- 1969年2月
- ホイールベースとリヤのオーバーハングを延ばした15人乗りと、先に発売されたワゴンをベースにした、4列シートの12人乗りのコミューターシリーズ(2ナンバー登録のマイクロバス)を追加。
- 1970年
- 安全対策を中心としたマイナーチェンジを行う。
- 1971年2月
- マイナーチェンジでフロントグリルのデザインが変更(3分割→一体化)され、屋根にプレスのリブが付いた。このマイナーチェンジに伴い、テールランプはトラックが後に登場するY10系トヨエースと共通化に、ワンボックスが前期型では独立していた後退灯をコンビネーションランプと一体化されたデザインとなる。ワゴン、コミューターの1.5Lは、コロナと同様の1.6L、12R型に変更。ワゴンに1.3L搭載車追加。
- 1971年4月
- コミューターのロングボディをベースにした救急車を、トヨタ・救急車(RH18V)として発売(Ambulanceのエンブレムを付した)。エンジンは2.0L・98psの5R型を搭載。スペースユーティリティに優れることから、以後はクラウンベースのトヨタ・救急車の代替を行った。
- 1971年11月
- シリーズ初の1ナンバー登録車でもある、コミューターと同じホイールベースのロングバンを追加。
- 1972年10月
- マイナーチェンジでフロントグリルのTOYOTAマークが右側のヘッドライト上に移動と同時にグリルのデザイン変更。バンに右側スライドドア装備の5ドアを設定。
- 1975年10月
- 最後の小変更で昭和50年排出ガス規制に適合。ワゴン廃止。1.3Lエンジン搭載車を廃止し、代わりに1.8L・95psの16Rエンジン搭載車を追加。バンのフロントドア以降を380mm伸ばしたロングバンを追加。タイヤ&ホイールは全車13インチから14インチにアップ。
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トラック
2代目 H20 - 40系(1977年 - 1985年)
トヨタ・ハイエース(2代目) H20/30/40系 | |
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バン(写真はキャンパー) | |
ワゴン リビングサルーンⅥ | |
ボディ | |
乗車定員 | 3/6/9/10/12/15人 |
エンジン位置 | フロント |
駆動方式 | 後輪駆動 |
パワートレイン | |
変速機 | 4AT/4MT/5MT |
前 |
フロント ダブルウィッシュボーン リア 車軸式 |
後 |
フロント ダブルウィッシュボーン リア 車軸式 |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2,340 mm - 2,845 mm |
全長 | 4,340 mm - 4,990 mm |
全幅 | 1,690 mm |
全高 | 1,890 mm - 2,115 mm |
- 1977年2月
- 2代目にフルモデルチェンジ。当初はバン、コミューター、トラックのラインナップ。ヘッドランプが丸型4灯から丸型2灯に変更された。
- バンには3種類のホイールベースを設定。コミューターと呼ばれる2ナンバー登録のマイクロバス(12・15人乗り)は、標準・ロング・スーパーロング3種類のホイールベースがあった。スーパーロングの救急車仕様はトヨタ・救急車として引き続き設定。
- 全車に助手席パワーウインドウがオプション設定されており、運転席側のスイッチから操作可能だが運転席の窓自体は手動式。
- トラックの荷台部分はH10系からの流用。高床デッキの荷台が延長され、新たにジャストローが設定された。設定当初のジャストローのリヤタイヤはダブルタイヤではなく、高床モデルをベースに標準のバイアスタイヤよりタイヤ径の小さいラジアルタイヤを装着し、荷台をやや下げて架装したモデルである。
- 1977年4月
- ワゴン(C-RH22G型)を追加。当初9人乗りカスタム・デラックス・スタンダード・10人乗りデラックスをラインナップ。
- 1979年3月
- ワゴンのエンジンを1,968 ccの18R-U型から1,972 ccの21R-U型へ変更し、昭和53年排出ガス規制に適合。
- 1979年7月
- オイルショックの影響で、バンに2,200 ccディーゼルエンジンを追加(初)。ライバルの日産・キャラバンは前年5月に2,200 ccディーゼルエンジンを初設定している。
- 1979年12月
- マイナーチェンジ。ワゴンにスーパーカスタムを追加。メーターパネルの一新とベンチレーター・ヒーター操作パネルに透過照明を追加。ディーゼルエンジンを全車に拡大採用すると共に、マニュアルトランスミッションをオーバードライブ付き5速へ変更。
- 1980年6月
- ワゴンスーパーカスタムをベースにしたビスタ店向け特別仕様車ビスタエディション発売。
- 1980年12月
- マイナーチェンジ。前後のパンパーが大型化され、ワゴンのヘッドランプを規格型の角型2灯に変更。同時にスーパーカスタムに電動サンルーフを設定。バンに上級グレードのGLを追加。吊り下げ式クーラー[要曖昧さ回避]に代わり、トラックを除く全車(トラックは1985年のモデルチェンジまで吊り下げ式クーラーを継続)にエアコンがオプション設定される。ワゴンのディーゼル車にオーバードライブ付き4速オートマチックトランスミッションを設定。ワゴンのガソリン車はMTを4速から5速へ変更。
- 1982年11月
- バン/ワゴンがH50系にフルモデルチェンジしたが、トラックは継続生産し、フロントグリルを変更した。
- 1985年8月
- トラックをH80/90系にフルモデルチェンジしたが、トヨエースG15とダイナ100(Y50/60系)の姉妹車となり、H50系と異なる車種となり、バン/コミューター/ワゴンと設計が共通なのはこの代が最後となった。
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バン(リア)
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ワゴン(リア)
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トラック(前期型)
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トラック(後期型)
注釈
出典
- ^ 渡辺陽一郎(カーライフ・ジャーナリスト) (2018年5月7日). “トヨタ「ハイエース」の中古車がバカ高い理由”. 東洋経済オンライン (東洋経済新報社) 2018年6月18日閲覧。
- ^ 有馬賢治(立教大学経営学部教授。研究分野:マーケティング、消費者の諸活動等)[1] (2018年6月16日). “連載 有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」- 地味なトヨタ「ハイエース」がずっと売れ続けている理由…中古車市場でも高値で取引”. ビジネスジャーナル (株式会社サイゾー) 2018年6月18日閲覧。
- ^ 日本損害保険協会、第11回自動車盗難事故実態調査結果を発表,自動車盗難はハイエースが3年連続トップ - impress,2010年3月19日記事
- ^ 社団法人日本損害保険協会 2007年度自動車盗難事故実態調査結果報告
- ^ 社団法人日本損害保険協会 第13回 自動車盗難事故実態調査結果発表
- ^ “トヨタのマリン事業 マリン事業の歩み”. トヨタマリン. 2020年10月4日閲覧。
- ^ “TOYOTA、トヨタ救急車をフルモデルチェンジ”. トヨタ自動車 (2006年4月27日). 2019年11月16日閲覧。
- ^ 『TOYOTA、ハイエースならびにレジアスエースを一部改良 -同時に特別仕様車スーパーGL“DARK PRIME”を発売-』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2014年12月16日 。2014年12月16日閲覧。
- ^ グッドデザイン・ロングライフデザイン賞 トヨタ・ハイエース、トヨタ・レジアスエース日本デザイン振興会
- ^ 『TOYOTA、ハイエースならびにレジアスエースを一部改良』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2016年6月1日 。2016年6月1日閲覧。
- ^ 『TOYOTA、ハイエースならびにレジアスエースを一部改良』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2017年11月22日 。2017年11月22日閲覧。
- ^ 「トヨタハイエース カタログ」、2018年5月発行。PRO11401-1805
- ^ 『TOYOTA、ハイエースならびにレジアスエースの特別仕様車を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2018年8月6日 。2018年8月6日閲覧。
- ^ 『TOYOTA、ハイエースの安全装備を充実』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2020年4月17日 。2020年4月20日閲覧。
- ^ “【トヨタ新型ハイエース】2021年8月2日「設定集約!」一部改良日本発売!200系バン/ワゴン最新情報、価格は?”. New Car/車好き新型車ニュース (2021年4月21日). 2021年4月21日閲覧。
- ^ 『ハイエース、踏み間違え防止に寄与するパーキングサポートブレーキを全車に標準装備』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2022年4月13日 。2022年4月13日閲覧。
- ^ “トヨタ、「ハイエース」一部改良でアースカラーパッケージ設定”. Car Watch (2024年1月10日). 2024年1月12日閲覧。
- ^ 『ハイエースならびにトヨタ救急車を一部改良 ウェルキャブには、車いすワンタッチ固定装置を新搭載』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2024年1月10日 。2024年1月12日閲覧。
- ^ 『TOYOTA、ハイエースに海外向け新シリーズを投入、フィリピンで世界初披露』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2019年2月18日 。2019年2月19日閲覧。
- ^ a b 『TOYOTA PREMIERES ALL-NEW HIACE IN THE PHILIPPINES(英語版サイト)』(プレスリリース)TOYOTA MOTER PHILIPPINE、2019年2月18日 。
- ^ 【東京モーターショー】トヨタが新型フルサイズワゴンの「グランエース」を初披露。2019年内には発売予定!(Webモーターマガジン) - モーターマガジン社 2019年10月8日閲覧。
- ^ 『TOYOTA、新型車グランエースを発売』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、2019年11月25日 。2019年11月27日閲覧。
- ^ 『イオン浪江店でのお買い物をもっと便利に! 浪江町内・双葉町内での「移動販売車」運行を開始します』(PDF)(プレスリリース)イオン東北株式会社、2022年6月10日 。2022年7月3日閲覧。
- ^ “テールゲートがガバっと開く!? 観音開きのトヨタ「ハイエース」が超便利! 豪で発売 約445万円から”. くるまのニュース (2022年8月18日). 2022年8月21日閲覧。
- ^ “トヨタ自動車75年史 【豆知識】車名の由来”. トヨタ自動車. 2017年11月26日閲覧。
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