セルシウス度 記号

セルシウス度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/24 09:51 UTC 版)

記号

セルシウス度、セルシウス温度の単位記号は、計量法でも国際単位系(SI)でも大文字立体の「°C」である[11][12]。°Cは一つの記号であり、「° C」のように離して書いてはならない。

数値と記号の間には1字分の空白(通常は半角スペース(en:thin space))を挿入するのが国際単位系でのルールである[13]。ただし、スペースを入れないとする流儀もある。

用法

セルシウス度は、国際単位系(SI)における取り扱いが、他の単位と異なる点がある。その定義は、温度のSI基本単位の一つである、熱力学温度ケルビンの項でなされている。

一方で、セルシウス度は、「表 4 固有の名称と記号を持つ22個のSI単位[14]」において次のように掲げられている。

表4 固有の名称と記号を持つ22個のSI単位(抜粋)
組立量 単位の固有の名称 基本単位のみによる表現 他のSI単位も用いた表現
セルシウス温度 セルシウス度(注f) °C = K
(注f) セルシウス度は、セルシウス温度を表すために使用される。温度差または温度間隔を表す数値は、セルシウス度とケルビンのいずれで表しても同じである。

「単位の名称」では次のようになっている[15]

単位の名称は、通常、直立体で表記し、通常の名詞のように扱う。英語では、文頭の場合もしくは表題のように大文字で書き始めるものを除き、単位の名称は(単位記号が大文字で始まる場合でも)小文字で書き始める。この規則に従って、記号 °C の単位の名称の正しいつづりは「degree Celsius(セルシウス度)」となる(単位 degree は小文字の d で始まり、その修飾語である Celsius は人名に由来するため大文字の C で始まる)。

「量の値の形式」では次のようになっている[16]

数値は、常に単位の前に来て、必ず 1 字分の空白を使って数字と単位を離す。(中略)この規則により、セルシウス温度 の値を表記するには、その単位記号である °C の前に 1 字分の空白を挿入する。
  • 例: = 30.2 °C
  • 不適例: = 30.2°C
  • 不適例: = 30.2° C

SI接頭語

セルシウス度の倍量分量を表すために、例えば、m°C (ミリセルシウス度)のように、SI接頭語を付けることができる。これは日本の計量法でも同じである[17]国際単位系国際文書第7版(1998)は、SI接頭語を付けて良いことを注記している[18]

歴史

アンデルス・セルシウスによる考案

セルシウス度はスウェーデンの天文学者でウプサラ天文台の創始者であるアンデルス・セルシウス1742年に考案したものに基づいている。ただし、彼は現在のセルシウス温度の目盛付けとは逆の目盛り付けを行った[19]。すなわち、1気圧下における凝固点氷点)を100度、沸点を0度として、その間を100等分する目盛りを考案した。そして氷点以下の温度を、温度が下がるにしたがって101度、102度、103度・・・とした。地球上の気温は現今の温度目盛りで、−90 °C から +60 °C(気温#気温の日本記録)であるから、セルシウス考案の温度目盛りでは、190度 から 40度となって、気温が負数で表現されることはないという利点があるからである。

目盛り付けの反転

アンデルス・セルシウスの死後に、水の凝固点を0度、沸点を100度とする現在の目盛り付けに変更された。

誰が目盛りを反転させたについては、カール・フォン・リンネによるものとする説と、リンネによるものではないとする説がある。

W.E.Middletonの1966年の論文ではカール・フォン・リンネらによって1752年までに氷点を0度、沸点を100度とする方式に改められたとしている[19]

一方、ウプサラ天文台の解説は、セルシウスの死の直後の1744年に、凝固点(氷点)を0度、沸点を100度とする現在の方式に改められたとしている[20]。この改善については、誰か一人の功績によるものではなく、セルシウス、セルシウスの後任のMårten Strömerスウェーデン語版、計器制作者のDaniel Ekströmスウェーデン語版の3人の貢献によるものであるとしている[21]。また、セルシウス度に最初期に注目し、実際に温度計をDaniel Ekströmに製作させたカール・フォン・リンネの功績によるものではないとしている[22]

なお、現在の国際温度目盛(ITS-90)では、標準気圧(101.325 kPa)下の凝固点沸点は厳密には 0 °C、100 °C ではなく、それぞれ 0.002519 °C99.9743 °C である(水の性質#融点水の性質#沸点を参照)。


注釈

  1. ^ セルシウス温度とケルビンが同じを示しているということではない。セルシウス温度での0 °Cは、ケルビンでは273.15 Kである。詳細は後述を参照。
  2. ^ 計量法第3条と別表第1、第8条は、「法定計量単位」を明確に定めており、温度の法定計量単位は、「ケルビン セルシウス度又は度」及び「カ氏度」(計量単位令別表第7)である。この規定のゆえに、「セ氏度」、「摂氏度」、「華氏度」の表記は計量法の違反となる。通産省のブックレットは、「計量法では 用語の使用を明確には規定していませんが、・・・」(新計量法とSI化の進め方、通商産業省、SI単位等普及推進委員会、1999年3月発行、p.31 Q21とA21)と記述し、計量法上の「物象の状態の量」の用語の使用を規定してはいないことを表明している。このことは、「計量単位」については、その使用を明確に規定しており、規定外の計量単位(の名称)を使用することは、法に違反となることを示すものである。なお、計量法は「取引又は証明に用いる」計量単位について規制しており、これらの用途以外における「非計量単位」の使用は計量法の規制外である。

出典

  1. ^ a b 国際文書第9版(2019) 国際単位系(SI)日本語版” (PDF). 産業技術総合研究所 計量標準総合センター. 2020年7月7日閲覧。2.3.1 基本単位 ケルビン 、p.102
  2. ^ a b 計量単位令 別表第一 項番5、温度の欄
  3. ^ The American Heritage Dictionary, Second College Edition,"centigrade  Fr. Lat. centum-, hundred + Lat. gradus, degree.",p.252, Houghton Mifflin, 1982, ISBN 0-395-32943-4
  4. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.129、第9回 CGPM,1948年(CIPM, 1948年(PV,21,88)及び第9回CGPM,1948年(CR,64):「セルシウス度」の採択)温度を表すために用いる「度」(degree)を示すために提案されている三つの名称(“degré centigrade”,“degré centésimal”,“degré Celsius”)の中から,国際度量衡委員会は「セルシウス度,“degré Celsius”」を選択した、産業技術総合研究所 計量標準総合センター
  5. ^ 計量法 別表第一 温度の項、「ケルビン セルシウス度又は度」と規定されている。
  6. ^ 計量単位規則、別表第一 項番二、比重、定義の欄、「四セルシウス度の温度の下において」の語が見える。
  7. ^ 計量単位令 別表第一 項番5、温度の欄の表現のとおり
  8. ^ 1958年にアルコール専売法の第2条第2項中の「摂氏十五度」を「温度十五度」に改める法律改正がなされている。[1]第9条
  9. ^ [2] 9th CGPM, 1948. Writing and printing of unit symbols and of numbers (CR, 70)* Resolution 7, Note 3, p.162. 「To indicate a temperature interval or difference, rather than a temperature, the word “degree”in full, or the abbreviation “deg”, must be used.」
  10. ^ [3] 13th CGPM, 1967/68. SI unit of thermodynamic temperature (kelvin) (CR, 104 and Metrologia, 1968, 4,43), Resolutions 3, p.169 「* At its 1980 meeting, the CIPM approved the report of the 7th meeting of the CCU, which requested that the use of the symbols “°K” and “deg” no longer be permitted.」
  11. ^ 計量単位規則 別表第2 温度・「セルシウス度又は度」の欄
  12. ^ 表4 固有の名称と記号を持つ22個のSI単位 p.106、組立量セルシウス温度の欄、国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版] 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  13. ^ 5.4.3 量の値の形式位 p.118、「この規則により、セルシウス温度 t の値を表記するには、その単位記号である °C の前に1字分の空白を挿入する。」、国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版] 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  14. ^  国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 2.3.4 組立単位 表4 固有の名称と記号を持つ22個のSI単位、国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.106
  15. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.117
  16. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.118
  17. ^ 計量単位令第4条第1号、セルシウス度は接頭語を付することができない単位として除外されてはいない。
  18. ^ 国際文書第7版(1998)国際単位系(SI)、日本語版、p.24 表3 注(d) 「この単位(セルシウス度)は、例としてミリセルシウス度 m°C のようにSI接頭語を伴って用いても良い。」、工業技術院計量研究所、ISBN 4-542-30135-4、日本規格協会、1999年11月30日第1版第1刷
  19. ^ a b 高田誠二. “温度概念と温度計の歴史”. 日本熱測定学会. 2019年11月22日閲覧。4. 多様化と標準化、p.165
  20. ^ Anders Celsius 1701-1744 ウプサラ天文台による解説、第6段落目
  21. ^ History of the Celsius temperature scale ウプサラ天文台による解説、第5段落の後半部分、「The change to our modern direct scale was inevitable in the long run, however, but there is no sense in trying to give the credit to any single person.」Pehr Wargentin(Secretary of the Academy of Sciences、Royal Swedish Academy of Sciences)の1749年の論文による
  22. ^ History of the Celsius temperature scale ウプサラ天文台による解説、第5段落の後半部分、「In an account of the history of the thermometer in the Proceedings of the Royal Swedish Academy of Sciences 1749, Pehr Wargentin, Secretary of the Academy of Sciences, mentiones Celsius, his successor Strömer and the instrument maker Ekström in connection with the direct scale. Linné is not mentioned at all. No single person can be given the credit.」
  23. ^ “22.2”. The Unicode Standard, Version 8.0. Mountain View, CA, USA: The Unicode Consortium. (August 2015). ISBN 978-1-936213-10-8. http://www.unicode.org/versions/Unicode8.0.0/ch22.pdf 2015年9月6日閲覧。 





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