セルシウス度 セルシウス度の概要

セルシウス度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/24 09:51 UTC 版)

セルシウス度(または単に「度」)
degré Celsius
degree Celsius
記号 °C
国際単位系 (SI)
種類 SI組立単位(固有の名称と記号を持つ 22 個のSI単位のうちの一つ)
温度
定義 ボルツマン定数1.380649×10−23 J/K とすることによって定まる温度(ケルビンと同一)
由来 凝固点を0度、沸点を100度とする温度
語源 アンデルス・セルシウス
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定義

セルシウス温度の単位は、セルシウス(記号は °C)であり、定義によってケルビンの大きさと等しい[1]

日本の計量法での定義は次のようになっている[2]

計量単位令にあるとおり、単に「度」と表記した場合は、セルシウス度を意味する。

元々の定義は凝固点を100度、沸点を0度とし、現在とは逆であった。

名称

セルシウス度の名称は、アンデルス・セルシウスに由来するものである。

水の凝固点沸点との間を100分割した目盛り付けであることから、この温度系のもともとの名称は“centigrade”(「百分度」の意)であった[3]

しかし1948年の第9回国際度量衡総会は、3つの名称候補(英語表現:“degree centigrade”,“centesimal degree ”,“degree Celsius”)から、“degree Celsius”を選んだ。これにより、名称が正式に「セルシウス」へ変更された[4]。これには、考案者であるセルシウスの認知のためとSI接頭語であるセンチ(centi)との衝突からくる混乱(centigradeがgradeという単位の100分の1と勘違いされる)を避けるという目的があった。ただし、現在においても英語圏では“centigrade”でも通じる。現在ではイギリスアイルランドの放送メディアにおいては、かつて使われたcentigradeを用いず、セルシウスと呼ぶようになっている。アメリカ合衆国では日常生活の全般を通じて、依然として華氏度(及び華氏温度)がよく用いられており、華氏度単独で表記するか、華氏度とcentigradeを併記している。

日本や中国では、摂氏度(せっしど)、日本ではセ氏度(セしど)と呼ばれることがある。摂氏の語源は、セルシウスの中国音訳「摂爾修斯」(繁体字: 攝爾修斯; 簡体字: 摄尔修斯; 拼音: Shè'ěrxiūsī)から「」+人名に付ける接尾辞「」で、「摂氏」「温度」になった。日本の計量法は、名称として「セルシウス度」または「度」のみを定めており[5]、したがって、取引または証明に用いる場合(計量法#取引、証明とは)においては、摂氏度(せっしど)の名称もセ氏度(セしど)の名称も使用することはできない[注釈 2][6][7][8]

ただし、俗用(計量法の規制が働かない場合など、計量法#取引又は証明に該当しないもの)では、例えば「セ氏15度」や漢字による「摂氏15度」の表記もみられる。英語では“fifteen degrees Celsius”と読み、“15 deg C”と略記することがある。アメリカ合衆国では、“fifteen degrees centigrade”と読まれることがある。

温度差の名称

かつては、セルシウス度の温度間隔(temperature interval)または温度差(temperature difference)を表現するのに、degree(略字 deg) が用いられた。これは1948年の第9回CGPMが、「温度間隔または温度差を示すときには、degree またはその省略形の deg を用いなければならない」と定めたからである[9]。しかしこの規定は1967/68年の第13回CGPMの決議によって廃止され、更に1980年以降は、degree(略字 deg)の使用は禁じられている[10]

セルシウス度とセルシウス温度

「セルシウス温度Celsius temperature)」は参照温度 = 273.15 K(ほぼ氷点)からの温度差 で定義される量の名称であり[1]、「セルシウスdegree Celsius)」はセルシウス温度を表す温度の単位の名称である。温度の単位と言う場合は、他の物理単位と同様に、温度の1単位(即ち温度間隔)を言う。国際単位系(SI)や日本の計量法での「温度の単位」は、ケルビンまたはセルシウス(または単に、)である。

例えば、体温が36.5 °Cというとき、この36.5 °Cは温度の高さを表す「セルシウス温度」(Celsius temperature)であって、「セルシウス」ではない。セルシウス温度(36.5 °Cなど)の表現のために用いられる単位(1度分の温度間隔)が「セルシウス」(degree Celsius)である。体温が 36.5 °C から 38.7 °C に上昇した場合、「2.2 セルシウス (degrees Celsius) 上がった」または「2.2 (degrees) 上がった」という言い方をするのであって、「2.2温度上がった」という言い方は誤りである。

しかし、日本語では、通常「体温は36.5だ」と言い、「体温が2.2上がった」と言って、同じ「度」を用いるために、字面上も観念上も、区別が分かりにくいが、異なった概念である。英語では temperature と degree とで区別が分かりやすい。そして、1セルシウス = 1 K(ケルビン) である。

しかしながら、一般にはこの違いが意識されず、「セルシウス度」と「セルシウス温度」とがしばしば混同され、混乱を招くことが多い(この混同は、「華氏度」と「華氏温度」にも見られる)。

量と単位の対応
ケルビン セルシウス系 華氏系
名称 熱力学温度 セルシウス温度 華氏温度
英語名 thermodynamic temperature Celsius temperature Fahrenheit temperature
対応(体温の例) 309.65 K 36.5 °C 97.7 °F
単位 名称 ケルビン セルシウス 華氏
英語名 kelvin degree Celsius degree Fahrenheit
換算 °C = K °F = 5/9 K

注釈

  1. ^ セルシウス温度とケルビンが同じを示しているということではない。セルシウス温度での0 °Cは、ケルビンでは273.15 Kである。詳細は後述を参照。
  2. ^ 計量法第3条と別表第1、第8条は、「法定計量単位」を明確に定めており、温度の法定計量単位は、「ケルビン セルシウス度又は度」及び「カ氏度」(計量単位令別表第7)である。この規定のゆえに、「セ氏度」、「摂氏度」、「華氏度」の表記は計量法の違反となる。通産省のブックレットは、「計量法では 用語の使用を明確には規定していませんが、・・・」(新計量法とSI化の進め方、通商産業省、SI単位等普及推進委員会、1999年3月発行、p.31 Q21とA21)と記述し、計量法上の「物象の状態の量」の用語の使用を規定してはいないことを表明している。このことは、「計量単位」については、その使用を明確に規定しており、規定外の計量単位(の名称)を使用することは、法に違反となることを示すものである。なお、計量法は「取引又は証明に用いる」計量単位について規制しており、これらの用途以外における「非計量単位」の使用は計量法の規制外である。

出典

  1. ^ a b 国際文書第9版(2019) 国際単位系(SI)日本語版” (PDF). 産業技術総合研究所 計量標準総合センター. 2020年7月7日閲覧。2.3.1 基本単位 ケルビン 、p.102
  2. ^ a b 計量単位令 別表第一 項番5、温度の欄
  3. ^ The American Heritage Dictionary, Second College Edition,"centigrade  Fr. Lat. centum-, hundred + Lat. gradus, degree.",p.252, Houghton Mifflin, 1982, ISBN 0-395-32943-4
  4. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.129、第9回 CGPM,1948年(CIPM, 1948年(PV,21,88)及び第9回CGPM,1948年(CR,64):「セルシウス度」の採択)温度を表すために用いる「度」(degree)を示すために提案されている三つの名称(“degré centigrade”,“degré centésimal”,“degré Celsius”)の中から,国際度量衡委員会は「セルシウス度,“degré Celsius”」を選択した、産業技術総合研究所 計量標準総合センター
  5. ^ 計量法 別表第一 温度の項、「ケルビン セルシウス度又は度」と規定されている。
  6. ^ 計量単位規則、別表第一 項番二、比重、定義の欄、「四セルシウス度の温度の下において」の語が見える。
  7. ^ 計量単位令 別表第一 項番5、温度の欄の表現のとおり
  8. ^ 1958年にアルコール専売法の第2条第2項中の「摂氏十五度」を「温度十五度」に改める法律改正がなされている。[1]第9条
  9. ^ [2] 9th CGPM, 1948. Writing and printing of unit symbols and of numbers (CR, 70)* Resolution 7, Note 3, p.162. 「To indicate a temperature interval or difference, rather than a temperature, the word “degree”in full, or the abbreviation “deg”, must be used.」
  10. ^ [3] 13th CGPM, 1967/68. SI unit of thermodynamic temperature (kelvin) (CR, 104 and Metrologia, 1968, 4,43), Resolutions 3, p.169 「* At its 1980 meeting, the CIPM approved the report of the 7th meeting of the CCU, which requested that the use of the symbols “°K” and “deg” no longer be permitted.」
  11. ^ 計量単位規則 別表第2 温度・「セルシウス度又は度」の欄
  12. ^ 表4 固有の名称と記号を持つ22個のSI単位 p.106、組立量セルシウス温度の欄、国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版] 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  13. ^ 5.4.3 量の値の形式位 p.118、「この規則により、セルシウス温度 t の値を表記するには、その単位記号である °C の前に1字分の空白を挿入する。」、国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版] 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、2020年4月
  14. ^  国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 2.3.4 組立単位 表4 固有の名称と記号を持つ22個のSI単位、国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.106
  15. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.117
  16. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 国際度量衡局(BIPM)、産業技術総合研究所計量標準総合センター翻訳、p.118
  17. ^ 計量単位令第4条第1号、セルシウス度は接頭語を付することができない単位として除外されてはいない。
  18. ^ 国際文書第7版(1998)国際単位系(SI)、日本語版、p.24 表3 注(d) 「この単位(セルシウス度)は、例としてミリセルシウス度 m°C のようにSI接頭語を伴って用いても良い。」、工業技術院計量研究所、ISBN 4-542-30135-4、日本規格協会、1999年11月30日第1版第1刷
  19. ^ a b 高田誠二. “温度概念と温度計の歴史”. 日本熱測定学会. 2019年11月22日閲覧。4. 多様化と標準化、p.165
  20. ^ Anders Celsius 1701-1744 ウプサラ天文台による解説、第6段落目
  21. ^ History of the Celsius temperature scale ウプサラ天文台による解説、第5段落の後半部分、「The change to our modern direct scale was inevitable in the long run, however, but there is no sense in trying to give the credit to any single person.」Pehr Wargentin(Secretary of the Academy of Sciences、Royal Swedish Academy of Sciences)の1749年の論文による
  22. ^ History of the Celsius temperature scale ウプサラ天文台による解説、第5段落の後半部分、「In an account of the history of the thermometer in the Proceedings of the Royal Swedish Academy of Sciences 1749, Pehr Wargentin, Secretary of the Academy of Sciences, mentiones Celsius, his successor Strömer and the instrument maker Ekström in connection with the direct scale. Linné is not mentioned at all. No single person can be given the credit.」
  23. ^ “22.2”. The Unicode Standard, Version 8.0. Mountain View, CA, USA: The Unicode Consortium. (August 2015). ISBN 978-1-936213-10-8. http://www.unicode.org/versions/Unicode8.0.0/ch22.pdf 2015年9月6日閲覧。 


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