スイバ 似ている植物

スイバ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/24 19:51 UTC 版)

似ている植物

類似種に、小型で高さが20 - 50 cmほどになるヒメスイバ[6]高山植物のタカネスイバなどがある[5]。同じような場所に生えるギシギシにもよく似ているが、スイバの方が小形でやさしい草姿をしている[16]。茎や葉は赤みを帯びていることや[8]、根生葉は長い柄を持ち、葉身の基部が矢じり形であることもスイバの特徴である[10]。ヒメスイバは根生葉の基部が左右に張り出した矛形になるので区別できる[10]

利用

ポーランドのスイバのスープ

3 - 4月ごろに、若芽や若い茎を採取して食用にする[3]。伸び始めた若い茎は、手で折り採れるところから採取し、若葉は根元から切りとって採取される[16]。地上部の茎葉には、シュウ酸やシュウ酸カリウム、シュウ酸カルシウムを含み、酸味の元になっている[4][3][8]。スイバを噛むと酸っぱいため、昔は子どもたちのおやつになった[7]

このほか、脂肪アスコルビン酸なども含んでいる[4]。シュウ酸やシュウ酸カリウムを大量に摂取すると、胃腸炎、出血性の下痢、腎炎などを起こす恐れがある[4]。根には、アントラキノン体であるクリソファノール、エモジン、クリソファノールアンスロンのほか、タンニンなどを含み、緩下作用がある[4]。近年の研究では、スイバにはを制御する効果があることがわかってきたと言われている[13]

料理

日本では野生ものの春先の新芽を摘んで山菜とし、若葉は茹でてから水にさらして灰汁を抜き、若い茎は葉と花穂をしごいて取り除いて皮を剥いて、茹でて水にさらしてから利用する[16]。淡い酸味とぬめりある食感を生かしてお浸し和え物三杯酢煮浸し煮物に調理して食べる[9][3][16][13]。独特の酸味は、茹でたものをすり潰して砂糖を加え、さっぱり風味のジャムに利用できる[12]。伸び始めた若い茎はそのまま食べることができるが、シュウ酸を多く含んでいることから、過食すると下痢や嘔吐などを催す場合があるため多食は避けた方が良い[4][9][10]。下ごしらえに茹でた後は、乾燥させて保存することもできる[3]

ヨーロッパでは古くから葉菜として利用され、野菜としての栽培品種はソレルやオゼイユと呼ばれる[18]。利用法は主にスープの実、サラダ、肉料理の副菜や付け合わせ[13]、スイバを単体で調理するだけでなく、ホウレンソウやその他の葉菜類と混ぜて用いることもある。例えばフランス料理ではポタージュオムレツベニエピュレ、料理に添えるソースアイルランド料理ではスイバのパイギリシア料理では煮込み料理やピタ(ブレク風のパイ)、ブルガリア料理ではチョルバルーマニア料理ではサルマーレウクライナ料理ではスイバのボルシチロシア料理では緑のシチーの素材として好んで用いられる。

薬用

古代エジプトでは、食用のほかに薬草としても使われた[14]。また、古代ギリシャ古代ローマでは利尿作用がある薬草として[14]、特に胆石を下す効用があるとして利用された。この葉のハーブティーは、昔より解熱効果があるとして知られている。現在でも、うがい薬、火傷の手当などに使われている。ただしシュウ酸を多く含むので、大量に食べると中毒の恐れがある[19]

秋に地上部の茎葉が枯れ始めたころに、根茎や根を掘り上げて水洗いしたものを、3 - 5ミリメートル (mm) ほどの厚さで輪切りにしたものが生薬になり、酸模根(さんもこん)と称している[4][3]。昔から、根は砕いて疥癬などの皮膚病の治療薬として用いられてきた[9]

民間療法として、便秘には、酸模根1日量15グラムを約600 ccで半量になるまでとろ火で煮詰めた煎じ汁、食間3回に分けて服用する利用方が知られている[4][3]。昔から、魚の中毒にはスイバの生葉汁を約10 - 15 cc程度のむと良いとされていて[4]、水虫、たむしなどにもスイバの生葉汁で湿布しておくのがよいとされている[4]


  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Rumex acetosa L. スイバ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月18日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Acetosa pratensis Mill. スイバ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月18日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 24.
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 田中孝治 1995, p. 89.
  5. ^ a b c d e f g h i j 飯泉優 2002, p. 76.
  6. ^ a b c d e f g h i 菱山忠三郎 2014, p. 49.
  7. ^ a b c d 稲垣栄洋 2018, p. 133.
  8. ^ a b c d e f 田中修 2007, p. 164.
  9. ^ a b c d 奥田重俊監修 講談社編 1996, p. 17.
  10. ^ a b c d e f 主婦と生活社編 2007, p. 41.
  11. ^ a b c 稲垣栄洋 2018, p. 132.
  12. ^ a b c d e f 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著 2003, p. 15.
  13. ^ a b c d e f 川原勝征 2015, p. 53.
  14. ^ a b c 山下智道 2018, p. 110.
  15. ^ a b c d 近田文弘監修 亀田龍吉・有沢重雄著 2010, p. 194.
  16. ^ a b c d e f 金田初代 2010, p. 21.
  17. ^ a b c 稲垣栄洋 2010, p. 84.
  18. ^ a b 稲垣栄洋 2010, p. 85.
  19. ^ 北野佐久子『基本ハーブの事典』東京堂出版、2005年、84 - 85頁。


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