起源天体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/16 14:07 UTC 版)
重力波は、光度距離で 440+160−180 メガパーセク:6の距離で発生した。この距離は、重力波信号の振幅をもとに計算されたものであり、14±6億光年、あるいは赤方偏移0.093+0.030−0.036 (90% 信用区間)に相当する。この距離をもとにすると、重力波は、太陽質量の 35+5−3倍と30+3−4倍のふたつのブラックホールが合体し62+4−3太陽質量のブラックホールが作られたことによって発せられたことがわかった:6。合体前後の合計質量の差(3.0±0.5太陽質量)は、質量とエネルギーの等価関係から、重力波の形態で放射され散逸したことになる。 合体の最後の20ミリ秒の間に重力波の放射強度はピークを迎え、 3.6×1049 ワット(526dBm)となり、観測可能な宇宙に存在するすべての星の放射の合計エネルギーよりも50倍も大きなものとなった。 重力波信号が検出された0.2秒間に、ブラックホールの軌道運動速度は光速の30%から60%へと増大していた。軌道周期は75ヘルツ(重力波の周波数の半分)であり、これは合体直前のふたつのブラックホールの間隔がわずか350キロメートルしかなかったことを示している。重力波信号の偏光フェイズの変化に基づいて天体の軌道周期を計算することができ、また信号の振幅と全体的なパターンから、ふたつの天体の質量と最終的な速度及び軌道の大きさを計算することができる。計算によって求められた数値は、合体した天体がブラックホールでなくてはならないことを示唆していた。もしブラックホールでなく同等の質量を持つ別種の既知の天体であったとしたら、合体前は非常にサイズが大きくなくてはならず、また合体直前にこれほど小さな軌道を回りあうこともできない。これまで観測された中性子星のうちで最も質量が大きなものでも2太陽質量程度であること、中性子星の質量の上限がせいぜい3太陽質量であることを考えると、中性子星のペアではこの合体は説明できない。(ボソン星のような仮説的な天体であれば、同様の重力波信号の発生を説明することはできる)ブラックホールと中性子星からなる連星系の合体はより早い段階で起きることから、合体直前の軌道周波数がここまで大きくなることはない。 極大となったあとの重力波信号の減衰は、合体後にひとつのブラックホールが形成されて状態が落ち着くまでの信号とよく一致していた。 コンパクト連星が合体に至る直前の回転運動はポスト・ニュートン展開によってよく記述されるが、強い重力場での合体段階は大規模な相対論的数値計算によってのみ解くことができる。 改善された理論モデルとデータ解析の結果によれば、合体後の天体は自転するカー・ブラックホールであり、スピンパラメータは0.68+0.05−0.06、すなわち同質量のブラックホールにおける最大の自転速度の2/3であることが明らかになった。 合体した2個のブラックホールのもとになった星は、ビッグバン後20億年後に誕生し、質量は太陽の40倍から100倍の間だったと想定されている。
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