ハール測度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/17 07:59 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動解析学におけるハール測度(ハールそくど、英: Haar measure)は、局所コンパクト位相群上で定義される正則不変測度である。ハンガリーの数学者アルフレッド・ハールにその名を因む。
定義
G を局所コンパクト群、B を G のコンパクト集合全体から生成される完全加法族とする。零でない非負値完全加法的集合関数 μ: B → R+ ∪ {∞} で、以下の条件
- G のコンパクト集合 K の測度 μ(K) は有限値をとる。
- G の開集合 O の測度はコンパクト集合 K ⊂ O で内側から近似される(μ(O) = sup μ(K))。
- G の任意の部分集合 S の測度 μ(S) は開集合 O ⊃ S で外側から近似される(μ(S) = inf μ(O))。
- G の元 g による左移動作用に関して任意の集合 S の測度は不変である(μ(g(S)) = μ(S))。
を全て満たすものを測度空間 (G, B) 上の左ハール測度と呼ぶ。一般に条件の 2-3 が満たされる測度は正則 (regular) であるといい、また不変性をいう条件 4 を右移動作用に関する不変性あるいは両側不変性に取り替えて、右ハール測度やハール測度が定義される。
局所コンパクト群上に左(あるいは右)ハール測度は必ず存在して、しかも正定数倍の違いを除いて一意に定まる(二つの左ハール測度 μ, μ′ があれば μ = c μ′ となる正の定数 c が取れ、また右不変なものに関しても同様である)。逆元を取る作用により左不変測度は右不変測度に、右不変測度は左不変測度にそれぞれ移される。
不変汎関数
局所コンパクト群 G 上のコンパクト台を持つ複素数値連続関数のなすベクトル空間を Cc(G) とし、その連続的双対空間を M(G) とする。不変ハール測度は不変正値汎関数(ハール汎関数とも呼ばれる)と一対一に対応するので、しばしば不変ハール測度と不変ハール汎関数とを同一視して扱われる。
実際に、局所コンパクト群 G とその上の左ハール測度 μ に対して Cc(G) の元 f の μ に関する積分を対応させる汎関数
- ニコラ・ブルバキ『積分4』宮崎浩・清水達雄訳、東京図書〈ブルバキ数学原論〉、1969年(原著1963年)。ISBN 978-4489002090。
- André Weil (1971). Basic Number Theory. Academic Press
- 小林, 俊行、大島, 利雄『リー群と表現論』岩波書店、2005年。ISBN 4-00-006142-9。
外部リンク
- Weisstein, Eric W. "Haar measure". MathWorld (英語).
- Haar measure - PlanetMath.(英語)
ハール測度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/06 20:05 UTC 版)
コンパクト群はすべてハール測度を持ち、それは左右両方の移動によって不変である(モジュラス関数は正の実数 (R+, ×) への連続準同型でなければならないので 1 である)。言い換えると、これらの群はユニモジュラーである。ハール測度は、円周上の dθ'/2π と同様、容易に確率測度に正規化される。 そのようなハール測度は多くの場合計算が容易である;例えば直交群に対してはフルヴィッツ (Hurwitz) に知られており、リー群の場合には必ず不変微分形式によって与えることができる。射有限の場合には指数有限の部分群が多くあり、剰余類のハール測度は指数の逆数になる。したがって、積分はしばしばきわめて直接的に計算可能であり、この事実は数論においてよく使われる。
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ハール測度と同じ種類の言葉
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