イガ(成虫)
体長4~7mm、翅の開張は10~14mm。全体が灰褐色で、前翅は混濁した銀灰色で光沢を帯びる。中央部に不鮮明な3黒斑がある。幼虫はメイガ類の幼虫と同様に乳白色で体毛は目立たなく、成熟して体長6~7mmになる。
幼虫が、絹織物や毛織物、羽毛、皮革などの衣料繊維を加害する。ナイロンなどの化学繊維や綿なども、汗や食品などで汚染された箇所を食害する。衣類に付着した有機物も好むので、多少汚れた衣類、繊維製品に被害が大きい。まれに配管の断熱材(ジュート)に発生することがある。
イガの幼虫は、動物性繊維の主成分であるケラチンを消化できるため、毛織物、絹織物などの動物繊維、羽毛、皮革などを好んで摂食する。また、ナイロンなどの化学繊維や綿なども、汗や食品などで汚染された箇所を食害する。繊維に付着したそれらの有機物は、幼虫の発育に必要な栄養分とし役立っていると考えられている。高温低湿度で被害が増大する傾向がある。
通常、年間の世代交替は2~3回であるが、条件が整えば何度でも発生を繰り返す。イガの成虫の出現は5、7、9月にピークがある。幼虫態で越冬する。 野外では、ツバメなどの鳥の巣から大量に見つかる。
幼虫は絹織物や毛織物、毛皮などの動物質の繊維を食害し、25℃における飼育試験によると、1世代に約2ヶ月間を要する。 幼虫は食餌の繊維を綴り合わせて両端が開口した巣筒を作り、半身を乗り出すようにして移動、摂食を行う。 驚くと全身を巣筒の中に隠す。巣筒の色や状態は、幼虫が餌にしている品物によって様々である。 老熟した幼虫は、吐糸して巣筒の一端を固定し、その中で蛹化する。 変態準備が整うと、蛹は他方の開口部から頭胸を外に乗り出して羽化脱出する。加害された品物には、空になった巣筒が一端に褐色の蛹の殻を付着して残る。
羽化した成虫は餌をとらずに交尾、産卵を行う。1雌は約40個の卵を産むという(安富・梅谷、1983)。 光には飛来せず、逆に暗い方を好む。静止した時は翅を屋根形にたたみ、その状態でよく歩行する。
イガ (昆虫)
(Tinea translucens から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/26 13:40 UTC 版)
イガ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Tinea translucens Meyrick, 1917 |
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和名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
イガ |
イガ(衣蛾、学名:Tinea translucens) は、チョウ目ヒロズコガ科に属するガ。
イガの学名
イガという和名で知られる本種の学名はかつてTinea pellionella L., 1758とされていた[1]。Robinson (1979, p. 75)によると、日本でT. pellionellaと報告されたものはいずれもT. translucensの誤りであったという。T. translucensと異なり、T. pellionellaは日本からは発見されていない[2]。
形態
成虫
成虫の体長は4.5ミリメートル程度[3]、翅の開張は9 - 16ミリメートル[1]。体は灰褐色で頭部は黄色の
幼虫
幼虫の体長は7ミリメートル程度[3]。体は淡黄白色で頭部は黒い[3]。体毛はない[3]。
生態
年2回から3回発生する[3]。25℃においては1世代に約55日を要する[4][2][3]。日本では屋内において成虫は4月から11月まで見られる[2]。幼虫態で越冬する[2][5][3]。
幼虫は繊維を加工してやや扁平で両端が開口している筒状の鞘を作り、その中で生活する[3][6]。鞘をつけたまま移動し、摂食は頭や胸を鞘の先端から出して行う[3][6]。幼虫は衣類、毛織物、動物標本、乾魚、魚粉、鰹節などを食べる[2][3]。幼虫は老熟すると吐糸で鞘の一方を固定し、鞘の中で蛹になる[2][3][6]。蛹化から1週間程度で羽化する[6]。成虫は繊維の隙間や動物標本など幼虫の食物となる場所に産卵する[3][6]。
野外においてはツバメやハトなどの鳥類の巣に生息している[5][7]。
分布
脚注
注釈
出典
参考文献
- Kuwana, Zyuiti; Nakamura, Sigeko (1963). “Studies in Mothproofing: Part II: Feeding Damage to Several Kinds of Fibers by the Larvae of Two Species of Clothes Moth, with a Note on Their Life Histories”. Textile Research Journal 33: 649–660. doi:10.1177/004051756303300807.
- Robinson, Gaden S. (1979). “Clothes-moths of the Tinea pellionella complex: a revision of the world's species (Lepidoptera: Tineidae)”. Bulletin of The British Museum (Natural History) Entomology 38: 57–128. doi:10.5962/bhl.part.785.
- 井上寛、杉繁郎、黒子浩、森内茂『日本産蛾類大図鑑』 1巻、講談社、1982年9月。ISBN 4-06-124037-4。
- 井上寛、杉繁郎、黒子浩、森内茂『日本産蛾類大図鑑』 2巻、講談社、1982年9月。 ISBN 4-06-124036-6。 - 上記文献において参照している文献(Kuwana & Nakamura (1963)およびRobinson (1979))を特定するために利用
- 田中和夫「日本産屋内害虫目録(害虫目録)」(PDF)『家屋害虫』29, 30、都市有害生物管理学会、1987年3月10日、34-52頁、 NAID 110007724556、2016年9月10日閲覧。
- 富岡康浩、中村茂子「鳥の巣から見つかった昆虫類(1) : 特に衣類害虫および食品害虫について」(PDF)『家屋害虫』第21巻第2号、都市有害生物管理学会、2000年1月30日、100-104頁、 NAID 110007724180、2016年9月10日閲覧。
- 那須義次、村濱史郎、坂井誠、山内健生「日本において鳥類の巣・ペリットおよび肉食哺乳類の糞から発生したヒロズコガ(鱗翅目,ヒロズコガ科)」(PDF)『昆蟲. ニューシリーズ』第19巻第2号、日本昆虫学会、2007年12月25日、89-97頁、doi:10.20848/kontyu.10.4_89、 NAID 110007164466、2016年9月10日閲覧。
- 野淵輝「家屋内で発見される木材害虫とその疑いのもたれる昆虫類(V)」(PDF)『木材保存』第19巻第1号、日本木材保存協会、1993年、2-12頁、doi:10.5990/jwpa.19.2、2016年9月10日閲覧。
- 山野勝次 (2013年8月20日). “<昆虫学講座 第6回> シミ目・チャタテムシ目・チョウ目” (PDF). 文化財虫菌害研究所. 2016年9月10日閲覧。
外部リンク
- イガ - みんなで作る日本産蛾類図鑑
- Tinea translucensのページへのリンク