TV Eye:1977 ライヴとは? わかりやすく解説

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TV Eye:1977 ライヴ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/25 02:08 UTC 版)

TV Eye:1977 ライヴ
イギー・ポップライブ・アルバム
リリース
録音 1977年3月21, 22日
アゴラ・シアター・アンド・ボールルーム英語版, オハイオ州クリーブランド
1977年3月28日
アラゴン・ボールルーム英語版イリノイ州シカゴ
1977年10月26日
アップタウン・シアター英語版, ミズーリ州カンザスシティ
ジャンル ハード・ロック[1], パンク・ロック[2]
時間
レーベル RCAレコード
プロデュース イギー・ポップ, デヴィッド・ボウイ
イギー・ポップ アルバム 年表
キル・シティ
1977年
TV Eye:1977 ライヴ ニュー・ヴァリューズ
1979年
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TV Eye:1977 ライヴ』 (TV Eye Live 1977)は、1978年にリリースされたイギー・ポップのライヴ・アルバム。本作を以って1970年代のイギーとデヴィッド・ボウイのコラボレーションは終了する。

プロダクション

経緯

イギーは1977年に『イディオット』『ラスト・フォー・ライフ』とアルバム2枚をリリースし、いずれも商業面、批評面の両面で高い成果を挙げたが、アメリカに限っては『ラスト・フォー・ライフ』が所属レコード会社のRCAレコードによって不当な扱いを受けたことに不満を募らせていた[注 1]。RCAレコードとは3枚のアルバムを制作するという契約を締結していたが、既にRCAレコードから離れたかったイギーは、先の2枚のアルバムリリースに伴うツアーの音源がそれなりの量になっていることに目をつけ、これらの音源を取りまとめて「3枚目のアルバム」、つまり新たにスタジオ・アルバムを作る手間なく契約を終了させるためのアルバムを制作することを思いつき、RCAレコードに申請して90,000ドルの経費を受け取ると、制作に取り掛かった[2][注 2]

レコーディング

本作で使用されているライブ音源は、『イディオット』ツアー及び『ラスト・フォー・ライフ』ツアーでサウンドボード録音されたものが使用されている。イギーは先の2作で使用したハンザ・スタジオでエンジニアのエドゥアルド・マイヤーに指示して各音源をブラッシュアップし、これをマスターとしてRCAレコードに渡した。製作にかかった経費は5,000ドルと言われている[2]

リリース

オリジナル版

本作は1978年5月にリリースされた。チャートアクションは鈍く、ビルボード200にも全英アルバムチャートにも登場していない。

日本では『TV・アイ|イギー・ポップ・ライブ』というタイトルでリリースされた[3]

リマスター版

日本ではSHM-CD向けにデジタルリマスターされたリミックス版が2014年10月29日に数量限定でリリースされている。この時、邦題が原題に近いものに変更された[4][5]
その後、ヨーロッパでも2017年6月2日にリイシューされたアナログ盤にリマスター及びリミックスが施されている[6]

2020年5月29日に1970年代のイギーとボウイとのコラボレーション作品をまとめた7枚組のボックスセット『1977 - ボウイ・イヤーズ 7CD ボックス・エディション』がリリースされた[注 3]。ここに『イディオット』『ラスト・フォー・ライフ』に加え、本作のリマスター盤も収録されている[注 4][8]

リリースに伴うツアー

本作リリース後に、イギーは当時のデトロイトロックシーンの中心的存在だったソニックス・ランデヴー・バンド英語版に声をかけ、本作のプロモーションを名目としたツアーのバックバンドを務めて欲しいと依頼した。スコット・モーガン英語版を除くメンバーは了承し、ヨーロッパツアーが実施された。イギーにはツアー後もこのコラボレーションを継続して、『イディオット』とも『ラスト・フォー・ライフ』とも異なるギターロックを指向した作品を制作する構想があったが、バンドの中心人物フレッド・スミス英語版は、イギーが前面に出たツアープロモーションに不満を持ち、またアルバム製作に関しても単なるバックバンドとして扱われるなら了承できないと断ったため、1ヶ月程度のツアーが終了するとともに、両者のコラボレーションも終了した[2]

評価

専門評論家によるレビュー
レビュー・スコア
出典 評価
オールミュージック [1]
クリストガウ・レコードガイド英語版 C+[9]

オールミュージックではマーク・デミングが「海賊盤よりは高品質だが、低評価を覚悟の上でわざわざリリースするほどの作品ではない。完璧を期すコレクター向けの作品。」といった主旨の評価を下し[1]、クリストガウ・レコードガイドではロバート・クリストガウが「筆者を怒らせた作品だからといって、評価点をつけられないわけではない。」とやはり低評価を下している[9]。また、イギーの伝記作家、ポール・トリンカ英語版も「『キル・シティ』の方が正規盤に相応しく聞こえる[注 5]。」といった主旨の評価を下している[2]
イギー自身も本作を「RCAレコードとの契約を終わらせるために制作した作品」であり、急ごしらえであるために完成度が低いことを認めている[2]

このように低評価が目立つ本作だが、ボウイがキーボードとバッキング・ヴォーカルを担当した『イディオット』ツアーの正規音源は貴重で、ボックスセット『1977 - ボウイ・イヤーズ 7CD ボックス・エディション』リリースまで、明確に正規音源と呼べる作品は本作以外にリリースされていなかった[注 6]

収録曲

  1. T.V. アイ (イギー・ポップ, ロン・アシュトン, スコット・アシュトン, デイヴ・アレクサンダー英語版) - アゴラ・シアター・アンド・ボールルーム
  2. ファンタイム英語版 (イギー・ポップ, デヴィッド・ボウイ) - アゴラ・シアター・アンド・ボールルーム
  3. シックスティーン (イギー・ポップ) - アップタウン・シアター
  4. アイ・ガット・ア・ライト (イギー・ポップ, ジェームズ・ウィリアムソン) - アップタウン・シアター
  5. ラスト・フォー・ライフ英語版 (イギー・ポップ, デヴィッド・ボウイ) - アップタウン・シアター
  6. ダート (イギー・ポップ, ロン・アシュトン, スコット・アシュトン, デイヴ・アレクサンダー) - アゴラ・シアター・アンド・ボールルーム
  7. ナイトクラビング英語版 (イギー・ポップ, デヴィッド・ボウイ) - アップタウン・シアター
  8. アイ・ワナ・ビー・ユア・ドッグ英語版 (イギー・ポップ, ロン・アシュトン, スコット・アシュトン, デイヴ・アレクサンダー) - アラゴン・ボールルーム

参加メンバー[12]

  • イギー・ポップ – ヴォーカル
  • デヴィッド・ボウイ – ピアノ, シンセサイザー (収録曲中 1, 2, 6, 8に参加)
  • リッキー・ガードナー英語版 – ギター (収録曲中 1, 2, 6, 8に参加)
  • ステイシー・ヘイドン[13] – ギター (収録曲中 3, 4, 5, 7に参加)
  • スコット・サーストン英語版 – ギター, ピアノ, ハーモニカ, シンセサイザー (収録曲中 3, 4, 5, 7に参加)
  • トニー・セイルズ英語版 – ベース
  • ハント・セイルズ英語版 – ドラムス

制作スタッフ

  • エドゥアルド・マイヤー – レコーディング・エンジニア
  • バーニー・ウォン – カヴァーアート

脚注

注釈

  1. ^ ラスト・フォー・ライフ』のリリース日がエルヴィス・プレスリーの急逝と重なってしまい、エルヴィスのバックカタログを大量に保有していたRCAレコードはそちらの再発に注力することになった。その結果『ラスト・フォー・ライフ』のプロモーションは早々に切り上げられ、大量に発生したエルヴィスのレコード受注を捌くために流通部門も『ラスト・フォー・ライフ』の在庫切れ再注文を無視する形となり、アメリカ国内では見捨てられる格好となった。また、RCAレコードはボウイは売れているので特別扱いしていたが、そのほかのオルタナティヴ系ロックには元々興味がなく、イギーサイドのシングル曲提案も無視するなど、そもそもイギーを重要視していない節があった[2]
  2. ^ イギーの伝記作家ポール・トリンカはイギーのこの行動について「イギーなりのレコード会社への復讐だったと言えるが、この金額は少しオーバーだと思う」といった主旨の評価を下している[2]
  3. ^ デラックス版のリリースは2020年4月10日に「チャイナ・ガール」のオルタネイト・ミックスの発表[7]とともに予告された。
  4. ^ この他にオルタネイト・ミックスやアウトテイクのリマスター盤及び3枚のライヴアルバムが含まれている。
  5. ^ キル・シティ』は未発表デモに基づいて制作され、『ラスト・フォー・ライフ』と本作の間にRCAレコードではなくボンプ!レコード英語版がリリースしたイレギュラー作品
  6. ^ 本作と同日のアラゴン・ボールルームで収録された音源が6枚組ボックスセット『ホエア・ザ・フェイシズ・サンシャイン』のうちの1枚としてリリースされているが、楽曲の版権を持つRCAレコードやユニヴァーサルからではなくイージーアクション・レーベル[10]からのリリースである。これは日本国内盤も発売された[11]

出典

  1. ^ a b c Deming, Mark. “TV Eye: Live 1977 | Songs, Reviews, Credits”. AllMusic. 2020年7月4日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h Trynka, Paul (2007年). Iggy Pop: Open Up and Bleed. Broadway Books. ISBN 978-0-7679-2722-2 
  3. ^ Iggy Pop - TV Eye 1977 Live (1978, Vinyl) | Discogs”. Discogs. 2020年7月4日閲覧。
  4. ^ TV Eye: 1977 ライヴ [SHM-CD[CD]]”. ユニバーサルミュージック・ジャパン. 2020年7月5日閲覧。
  5. ^ Iggy Pop - TV Eye 1977 Live (2014, SHM-CD, Papersleeve, CD) | Discogs”. Discogs. 2020年7月5日閲覧。
  6. ^ Iggy Pop - TV Eye Live 1977 | Discogs”. Discogs. 2020年7月5日閲覧。
  7. ^ Iggy Pop - China Girl (Alternative Mix / Audio) - YouTube
  8. ^ 1977 - ボウイ・イヤーズ 7CD ボックス・エディション”. ユニバーサルミュージック・ジャパン. 2020年4月26日閲覧。
  9. ^ a b ロバート・クリストガウ (1981). “Consumer Guide '70s: P”. クリストガウ・レコード・ガイド英語版. Ticknor & Fields. ISBN 089919026X. https://www.robertchristgau.com/get_chap.php?k=P&bk=70 2019年3月10日閲覧。 
  10. ^ Easy Action レーベル | リリース | Discogs”. Discogs. 2020年7月5日閲覧。
  11. ^ Iggy Pop - Where The Faces Shine - Volume 1 | Discogs”. Discogs. 2020年7月5日閲覧。
  12. ^ 1977 - ボウイ・イヤーズ 7CD ボックス・エディション ブックレット. (2020) 
  13. ^ Stacey Heydon | ディスコグラフィー | Discogs”. Discogs. 2020年7月5日閲覧。

外部リンク


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