RNA代謝
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/02 23:55 UTC 版)
RNA代謝異常としてはトリプレットリピート病におけるRNA代謝異常とリピート関連非ATG依存性翻訳、RNA結合蛋白質の代謝異常などが知られている。 トリプレットリピート病におけるRNA代謝異常 トリプレットリピート病でもイントロンや非翻訳領域(UTR)にリピート伸長を認める疾患が発見され、ポリグルタミン病など異常蛋白を蓄積するトリプレットリピート病とは異なる機序による神経変性が想定されるようになった。RNA代謝障害を主因とする考え方は筋強直性ジストロフィーで研究が進み、その1型ではDMPK遺伝子の3'UTR中にUCGリピートが異常伸長していて、転写された異常伸長リピートを持つRNAがヘアピン構造などの異常高次構造をとり、様々なRNA結合蛋白質と結合してRNA fociと呼ばれる凝集塊を形成し蓄積する。これによりスプライシング制御因子の発現が亢進して、様々な遺伝子にスプライシング異常が起こることが病態の根底にあると証明された。RNA fociは脆弱X関連振戦・運動失調症候群(FXTAS)、ハンチントン病類縁2型、SCA8、SCA31、ALSの一部で検出されている。 リピート関連非ATG依存性翻訳 蓄積した異常RNA自体による毒性による機序も考えられている。異常伸長したリピート配列が非翻訳領域に存在し、翻訳開始に必須な開始コドンATGを欠くにもかかわらず、異常伸長リピートRNAコードされているポリペプチドが翻訳されていることが発見された。リピート関連非ATG依存性翻訳(repeat associated non-ATG(RAN) translation)という新しい概念が提唱されている。このRAN translationにより産出されたポリペプチドが神経毒性を発揮することも明らかとなっており、SCA8、FXTASやC9ORF72ALS/FTDの他、ポリグルタミン病でもその関与が想定されている。 RNA結合蛋白質 脊髄性筋萎縮症(SMA)は遺伝子異常によりRNA結合能を有するsurvival of motor neurons(SMN)蛋白質が減少していて、スプライシング能の低下が関与していると考えられている。ALS/FTLDにおいて封入体が凝集しているTDP-43やFUSもRNA結合蛋白質である。TDP-43の主要な局在は核であるが、ALS/FTLDでは様々なRNA結合蛋白を巻き込んで細胞質中のストレス顆粒に蓄積して、不溶化して封入体になると考えられている。蛋白質の凝集蓄積による毒性獲得のほかに、封入体形成前にすでに、局在異常による機能喪失RNAの転写異常やスプライシング、輸送、翻訳機能などのRNA代謝異常が生じて神経変性をもたらしていると考えられる 。
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