JR貨物の線路使用料
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 04:31 UTC 版)
日本貨物鉄道(JR貨物)は、JR旅客鉄道各社(JR東日本・JR西日本等)や並行在来線事業者(IGRいわて銀河鉄道、青森県(青い森鉄道線の保有事業者)、肥薩おれんじ鉄道等)の第一種・第三種鉄道事業者の線路を使用して自社貨物列車を運行(第二種鉄道事業)しており、大半の区間において線路使用料が発生している。JR貨物が線路を借りて貨物列車を走らせる際には、アボイダブルコスト(回避可能経費) ルールで線路使用料を計算している。これは、仮に貨物列車が運行しなかったとした場合に旅客会社が線路の保守作業に必要だった経費を計算し、それに比べて貨物列車が走行したことによってどれだけ保守経費が増加したかを求めて、この増加費用分だけをJR貨物が支払うという方式である。国鉄分割民営化の際に、JR貨物の経営基盤が脆弱であることが予想されたため、その経営を支援するために線路使用料が低く抑えられるように定められた方式である。 その後、東北新幹線の八戸延長に伴って並行在来線の東北本線盛岡 - 八戸間が東日本旅客鉄道(JR東日本)から経営分離されることになり、この区間を走行していた貨物列車は並行在来線事業者線路を走行することになった。当初から経営難が予想されていた並行在来線事業者は、変動費のみを対象として按分計算したアボイダブルコスト方式をやめて、固定費部分を加味した線路使用料を支払うように要求することとなった。関係者の間で協議が行われた結果、当該区間の整備新幹線を建設した日本鉄道建設公団(後の鉄道建設・運輸施設整備支援機構)がJR東日本から受けとる新幹線に対する線路使用料を原資として、JR貨物の支払う線路使用料を補填することになった。この補填分を貨物調整金と呼んでいる。これにより、平成21年度決算では並行在来線事業者のうちIGRいわて銀河鉄道の旅客収入は約17.0億円であるのに対して、線路使用料収入は約13.4億円とかなりの額を占めるに至っている。 一方、同時に青森県側で並行在来線を引き受けた青森県(青い森鉄道線)についても同じ措置が講じられているが、旅客運送を行っている青い森鉄道も施設保有する青森県に対して線路使用料を支払う立場にある。ただし、青い森鉄道に対する経営支援として東北新幹線新青森開業までの間は線路使用料の大幅な減免措置が講じられており、その額は平成21年度決算では約2.9億円であった。2017年度(平成29年度)に青い森鉄道は初めて線路使用料の減免措置なしに約4億8900万円の線路使用料を納めることになった。 こうした線路使用料の補填措置は、その後開業した九州新幹線鹿児島ルートの並行在来線を引き受けた肥薩おれんじ鉄道に対しても適用されている。肥薩おれんじ鉄道では自社旅客列車の運行を気動車とすることで、JR九州から引き継いだ電化設備を貨物専用とし、その利用に対して応分の負担を求めることで、さらに線路使用料の増額を図る方式となっている。年間の線路使用料は、開業から10年間は毎年最低2.8億円が保証されている。 この整備新幹線並行在来線事業者に対するJR貨物の線路使用料を補填する方式は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構の旧日本国有鉄道(国鉄)清算業務における利益剰余金を一部活用することで、さらに増額されることになっている。
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