JASRAC登録をめぐる騒動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 17:01 UTC 版)
「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」の記事における「JASRAC登録をめぐる騒動」の解説
同曲は着うた配信に伴い、著作権使用料を徴収し作者に対価を支払う一連の手続きを円滑に行うことを目的として、2007年12月にニコニコ動画を運営するニワンゴの関連企業であるドワンゴ・ミュージックパブリッシングによって日本音楽著作権協会 (JASRAC) への信託が行われたが、その際にファンの反発が起こり大きな騒動に発展している。同曲は幅広い二次利用が行われていたが、管理団体に信託されることでこうした作品について、許諾手続きや利用料の支払いが必要となる懸念に加え、ドワンゴ・ミュージックパブリッシングが初音ミク発売元のクリプトン・フューチャー・メディアの許可を得ずに楽曲のアーティスト名を「初音ミク」として登録していたことが明らかになったためである。 ドワンゴ・ミュージックパブリッシングはアーティスト名については連絡不徹底による誤りであるとして謝罪し、修正に応じた。しかしJASRACへの信託に至った経緯や、また前後して浮上した別の曲の着うた配信が作者の許可を得ずに行われた疑惑などについてドワンゴ・ミュージックパブリッシングとクリプトン・フューチャー・メディア双方の見解に隔たりがあり、こうした食い違いにより両社が互いに自社側のウェブサイト上で主張を応酬する事態へと発展した(詳細は初音ミク#初音ミク楽曲のJASRAC信託と着うた配信に関する騒動を参照)。 同曲の作者ika_moはこの騒動の中「もうけ主義」との批判を向けられ、「みんなの自由な利用を制限する気は無かった」という旨のコメントを出した後、ブログを閉じることとなった。 また、津田大介らによればネット上に存在した、ユーザーが作り上げたコンテンツにおける嫌儲と呼ばれる思想なども影響したと指摘する。この出来事の場合、消費する側の間にも楽曲を「自分たちが応援して育てたコンテンツ」とみなし、受け手と著作権者は対等であるという感覚が広まり、それが著作権を行使した作曲者への反感という形で発露したのだとする分析もある。この出来事の後は、しばらくはニコニコ動画で発表されたり『初音ミク』を用いて作られたりした楽曲を著作権管理団体に登録することに対して、批判的な意見が支配的になったが、しかし、ドワンゴ会長の川上量生によると、2008年頃からそれらの楽曲がカラオケで流行の兆しを見せるようになると、彼らが著作権管理団体に楽曲を信託していないために正当な対価を受け取れず、著作権管理団体を利用する音楽家たちとの間に報酬の格差があることに対して、公平ではないという批判が上がるようになったとしている。2011年ごろからは、ドワンゴ、クリプトンなどによって、著作権管理団体への信託と、ネットでの自由な利用を両立するための仕組みづくりも進められた。川上はインターネットから流行が発祥した楽曲を著作権管理団体に信託することは当たり前のことになったとしている。
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