F-MRIとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > ビジネス > 新語時事用語辞典 > F-MRIの意味・解説 

エフ‐エム‐アール‐アイ【fMRI】


fMRI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/13 07:10 UTC 版)

fMRI 計測によって得られる画像。移動する視覚刺激を見ている際の脳活動を、安静時の脳活動と複数の実験参加者で比較したもの。fMRI 計測によって得られた活動量 (統計値) は黄色とオレンジで示されており、灰色で示した実験参加者平均の脳画像と重ね合わされている。この画像では一次視覚野外線条皮質外側膝状体が活動していることが分かる。
カリフォルニア大学バークレー校ヘレン・ウィルズ神経科学研究所 (Helen Wills Neuroscience Institute脳画像センターにある4T fMRIスキャナー(画像作成日:2005年)
MRIの画像から作られたアニメーション画像。頭の上からまっすぐ下に移動している、左上の頭部の外に現れる点は、画像の右と左を間違えないよう、ビタミンEの錠剤を頭の横にテープで貼っておいたもの

fMRI (functional magnetic resonance imaging) はMRI核磁気共鳴も参照)を利用して、ヒトおよび動物の脊髄の活動に関連した血流動態反応を視覚化する方法の一つである。最近のニューロイメージングの中でも最も発達した手法の一つである。

脳血流動態

100年以上前から、脳の血流や酸素化の程度と神経活動には密接な関係があることが知られていた[1]神経細胞が活動するとき、局所の毛細血管の赤血球のヘモグロビンによって運ばれた酸素が消費される。酸素利用の局所の反応に伴い血流増加(血液量と血流量)が起きることが知られている。 毛細血管内で酸素交換が起こり、酸化ヘモグロビンが酸素を組織に渡すことで、一時的に脱酸化ヘモグロビンが増加する。さらに時間的に遅延して(1〜5秒程度)脳血流が増加することで、酸化ヘモグロビンが増加し脱酸化ヘモグロビンが減少する。この反応は6〜10秒程度で最大となる。  

原理

T2*強調画像法で主に脳血流動態を測定する場合、計測原理は形態画像によるMRIに、血流変化による信号変化を統計処理したマップを重ねる事で脳活動を画像化している。T2*強調画像法では、MRIのシーケンスを使用して、T2*信号の差違を検出する。安静時と比較して、賦活課題中の静脈からの信号の上昇が見込まれる。

毛細血管静脈では、脳血流変化に対するT2*信号変化の機序が異なることが分っている。 ヘモグロビンは酸化されていると反磁性体であるが、脱酸化状態だと常磁性体となる。それ故、血液の核磁気共鳴信号は静脈では、反磁性体の酸化ヘモグロビンの変化には影響されにくく、常磁生体の脱酸化ヘモグロビンの変化に依存して変化しやすい。一方、毛細血管では、総ヘモグロビンあるいは血液量の変化にも依存し、必ずしも、常磁生体の脱酸化ヘモグロビンの変化と線形に比例して、信号変化が起こらない。


これら静脈に起こる信号増加のソースは、inflow効果(血液流入)、BOLD効果(脱酸化ヘモグロビンの減少)など様々な要因が関与すると説明されている。信号減少が起こった場合には、生理的説明が複雑化し、諸説分かれている。 一般には、高磁場の装置を用いても酸素交換の現場である毛細血管からの信号変化はT2*強調画像法で検出しにくいと考えられている。

問題点

T2*強調画像法によって計測することで、毛細血管と静脈のように血管径の大きさによって、信号が異なった変化をすることが、シミュレーションによっても、実計測によっても明らかになっている。毛細血管からの信号が静脈信号よりも小さいことは、1993年小川誠二ベル研究所ミネソタ大学の共同研究で報告されている。

また、時系列情報を持ったT2*強調画像法(A)では一般的にdistortionが生じやすく、他の画像法を用いた形態画像(B)との位置合わせのずれが指摘されているが、(A)自体に形態情報が存在している。しかし、(A)の画像が荒いため、他の画像法と位置合わせをして研究発表などに用いることが多い。

分解能

一般に、高磁場のもの程、高い空間分解能を持っている。例えばミネソタ大学(米国)の7テスラの装置を使ったデータでは、脳組織の信号よりも、表在静脈の信号が強く検出されることが示されている。理化学研究所脳科学総合研究センターから、4テスラの装置を使った1mm未満の空間分解能の可能性を指摘する活脳図の報告もある。 また、神経活動が開始した後、明瞭な信号の時間変化が始まるまでに1〜3秒程度かかることが報告されている。すなわち、血液が毛細血管通過時間をすぎ、静脈相の時間帯でより信号変化が起こるので、神経活動とほぼ同時におこる酸素交換反応を高い時間分解能で得るのは難しいとされている。

医療分野以外での利用

神経経済学

行動経済学では合理的経済人と実際の人間の乖離を様々な実験的手法により取り扱うが、神経科学的に人間の意思決定プロセスを定量的に扱う神経経済学的手法に fMRI がしばしば用いられている[2][3]

例として、FKF Applied Researchは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のAhmanson Lovelace Brain Mapping Centerの協力により、2006年と2007年のスーパーボウルにおける、広告効果を測定するために、fMRIを使用し視聴者の脳の活動を測定した[4][5]。2007年のスーパーボウルにおいて、人々の脳に前向きな感情を引き出した最高のコマーシャルはコカ・コーラで、最低のコマーシャルはGM「Robot」だと結論付けた[4]

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ Roy CS, Sherrington CS (January 1890). “On the Regulation of the Blood-supply of the Brain”. Journal of Physiology 11 (1-2): 85–158.17. 
  2. ^ 小田宗兵衛「神経経済学は経済学に貢献するか? : 時間選好のfMRI実験を例に(<特集>脳機能イメージングの拡がり)」『システム/制御/情報 : システム制御情報学会誌』第53巻第4号、2009年4月、 131–136、 ISSN 09161600NAID 110007162149
  3. ^ すぐにもらえる小さい報酬か 将来にもらえる大きい報酬か—神経経済学で「人間の行動」を読み解く”. 大阪大学. 2016年9月23日閲覧。
  4. ^ a b スーパーボウルの真の勝者は?--米研究者ら、fMRIで分析 Stefanie Olsen(CNET News.com)翻訳校正:尾本香里(編集部) 2007年2月6日 2009-10-22閲覧
  5. ^ スーパーボウルで視聴者の印象に残った広告は?--米研究者ら、fMRIで解き明かす Stefanie Olsen(CNET News.com)2006年2月8日 2009-10-22閲覧

関連項目

外部リンク


fMRI

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 01:01 UTC 版)

脳機能マッピング」の記事における「fMRI」の解説

核磁気共鳴計測する方法反磁性体である酸素化ヘモグロビンは、MRI信号として計測できないが、脳血流増加に伴い常磁性体である脱酸素化ヘモグロビン変化起こりやすい静脈内の信号変化計測する通常MRIによる脳断面図重ね合わせ活動局在性調べる。時間的解像度はあまり高くない空間的解像度は非侵襲的方法としてはやや高いものの、静脈血液変化調べことによる限界がある。また計測中は頭部を動かすことが出来ないほか、計測機器内に金属物が持ち込めないため、感覚刺激与え方法制限される現在のところ、より太い静脈ほど信号変化起こしやすく、磁場強度の高い装置でも毛細血管レベル反応検出することが難しい。しかし、比較簡便である反面得られる情報多く脳機能局在方法としては現在最も用いられている方法である。

※この「fMRI」の解説は、「脳機能マッピング」の解説の一部です。
「fMRI」を含む「脳機能マッピング」の記事については、「脳機能マッピング」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「F-MRI」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「F-MRI」の関連用語

F-MRIのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



F-MRIのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
新語時事用語辞典新語時事用語辞典
Copyright © 2025 新語時事用語辞典 All Rights Reserved.
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのfMRI (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの脳機能マッピング (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS