ARPANETでの体験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/12 02:14 UTC 版)
「エンドツーエンド原理」の記事における「ARPANETでの体験」の解説
ARPANETは世界初の大規模汎用パケット通信ネットワークであり、バランやデービスが指摘した点を考慮し、エンドツーエンド原理の観点から重要な特徴をいくつか備えていた。 パケット交換は、一部の論理機能を通信終端に分担させる。 分散ネットワークがパケット通信を前提とするなら、パケットの順序入れ違えや重複の検出といった機能は必然的に論理的なネットワーク終端の機能となる。結果としてARPANETは機能を2つの階層に分けることを特徴とした。1つは隣接するネットワークノード (IMP) 間でデータパケットを転送することを扱う下層で、もう1つはデータ転送の終端間(エンドツーエンド)の側面を扱う上層である。エンドツーエンド原理の論文の筆者の1人クラークは「パケットの発見はエンドツーエンド論の結果ではない。パケットによりエンドツーエンド論が適切なものとなった」(slide 31) と結論付けている。 終端間(エンドツーエンド)の肯定応答と再送の機構がなければ、高信頼データ転送は不可能である。 ARPANETは、コンピュータが周辺機器と入出力チャネルでやりとりするときのように、ネットワークの任意の2終端間で高信頼なデータ転送を提供するよう設計された。パケット転送で発生しうる障害に対処するため、通常のARPANETメッセージは隣接ノード間で肯定応答と再送の方式を使って確実に手渡される。手渡しが成功したらそれらが処分され、パケット喪失の際に発信元から宛先まで再送するということはない。しかし多大な努力にも関わらず、初期のARPANET仕様で想定していた完全な信頼性は、この方式では提供不可能であることが判明した。ARPANETが初期の4ノード構成から成長するにしたがって、そのことがますます明らかとなっていった。そこでARPANETは隣接ノード間の信頼性機構の持つ本質的制約に対処し真のエンドツーエンド信頼性を追求しようとした。 信頼性、レイテンシ、スループットにはトレードオフの関係がある。 完全な信頼性を追求することは、データ転送の他の重要なパラメータ、特にレイテンシとスループットを低下させる可能性がある。予測可能なスループットと低レイテンシは、対話型のリアルタイム音声アプリケーションなどで重要であり、その場合完全な信頼性は全く必要とされない。そのような用途のため、ARPANETでは低レイテンシのデータ転送サービスをホストに提供するため、各種信頼性保証手段を省いたサービスを提供した。
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