1次元目標の損傷関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/26 08:20 UTC 版)
弾着は平面や立体で捉えるべきであるが、目標に対する弾着のずれとその損傷程度を損傷関数D を用いて表現する端緒として、まず1次元で考察してみる。 x を目標中心からの弾着距離とすると、損傷関数(damage function)D (x ) は、平均値が 0 である: ∫ − ∞ ∞ x D ( x ) d x = 0 {\displaystyle \int _{-\infty }^{\infty }xD(x)dx=0} 上の式は、目標中心からの弾着距離が 0 の時、損傷関数が示す図形の重心で脆弱性が最大となる事を示す。つまり、厳密な目標点とは単に目標構造物の広がりの中心ではなく、損傷関数の重心でありその点に弾着が求められる。 距離 x が 0 に近づくに従って xD(x) は 1 に近づく。|x| の増大に従ってxD(x) は 0 に近づく。 x 軸と D(x) の描く曲線との間の面積は、当該目標に対するその砲弾の致命域 (leathal area) L と呼ばれ、次式で表される。 L = ∫ − ∞ ∞ D ( x ) d x {\displaystyle L=\int _{-\infty }^{\infty }D(x)dx} 致命域L はその砲弾の目標に対する有効範囲の大きさを示す。ただし、距離 x が致命域 L/2 内にあっても撃破に至らないことがあり、逆に距離 x が L/2 以遠で撃破することもある。これは損傷関数 D(x) がどれだけ中心に近い位置にまとまっているかばらついているか、D(x) が描く曲線のシャープさによって変わってくる。この曲線 D(x) のばらつきは、確率論での分布の分散を使って以下の S2 で表される。 S 2 = 1 L ∫ − ∞ ∞ x 2 D ( x ) d x {\displaystyle S^{2}={\frac {1}{L}}\int _{-\infty }^{\infty }x^{2}D(x)dx} この S2 は、損傷関数 D(x) が描く曲線が中心近くでシャープな時に小さく、損傷関数 D(x) がばらついて平坦な曲線を描く時に大きくなる。 兵器によって異なる損傷関数D (x ) の曲線データが試射や演習によって得られれば最良であるが、実際に得られるデータは、致命域L とばらつきS2 の概略値だけであり、厳密な損傷関数の曲線は容易には得られない。そこで、射爆理論では以下の3つの近似関数のいずれかを用いてその代替としている。 クッキー・カッター型損傷関数 これは最も単純な損傷関数のモデルであり、距離x の絶対値が致命域L の半分以下の時に 1、つまり必ず撃破され、半分未満の時は 0、つまり絶対に撃破されないものとするものである。 D ( x ) = { 1 , | x | ≦ L / 2 0 , | x | > L / 2 {\displaystyle D(x)={\begin{cases}1,&|x|\leqq L/2\\0,&|x|>L/2\end{cases}}} この時ばらつきは S2 = L2 /12 となる。 この関数は鋭角的であり、あたかもクッキーを生地から形でスッパリ打ち抜くように見えるために、この名前が付けられた。 カールトン型損傷関数 距離x = 0 で最大値D (x ) = 1 となる、釣鐘型の損傷関数である。 D ( x ) = exp ( − x 2 2 a 2 ) {\displaystyle D(x)=\exp \left(-{\frac {x^{2}}{2a^{2}}}\right)} ただし a = L 2 π {\displaystyle a={\frac {L}{\sqrt {2\pi }}}} この破損関数を使用した目標は拡散型目標と呼ばれる。 正規分布型損傷関数 致命域L の他に損傷関数のばらつきS2 も推定できる場合には、正規分布を用いた損傷関数が採用される。 D ( x ) = L 2 π S exp ( − x 2 2 s 2 ) {\displaystyle D(x)={\frac {L}{{\sqrt {2\pi }}S}}\exp(-{\frac {x^{2}}{2s^{2}}})} 正規分布型損傷関数ではより精密な近似が行える。
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