1対立遺伝子の無力化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/25 14:55 UTC 版)
「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」の記事における「1対立遺伝子の無力化」の解説
ZFNsは、優性ヘテロ型突然変異を持つ個体の突然変異対立遺伝子への二本鎖切断 (double strand break, DSB) の導入に利用可能(遺伝的組換えを参照)で、相同な鋳型を持たない変異対立遺伝子は非相同末端結合 (non-homologous end-joining, NHEJ) で修復される。NHEJは2つのDNA末端を繋ぎあわせることによってDSBを修復し、DNAの切断が複雑でなければ、通常突然変異は導入されない。しかし場合によっては修復が不完全で、塩基対の欠失や挿入が起こり、フレームシフトによって有害なタンパク質の産出が阻害される。長大なゲノム領域全体を完全に除くために複数ペアのZFNsを利用することも可能である。 最近では、ある研究グループがZFN技術を利用してゼブラフィッシュ胚のgol色素遺伝子とntl遺伝子の改変に成功した。特異的なジンクフィンガーモチーフが異なるDNA塩基配列を認識するように設計された。ZFNをコードしたmRNAは1細胞胚に導入したところ、目的の突然変異が導入され、目的の表現型を示す個体が高効率で得られた。彼らの研究によって、ZFNsが生殖系列において目的遺伝子座へ遺伝可能な突然変異を特異的かつ効率的に導入可能で、その変異遺伝子が次世代へと伝播可能なことが示された。 ZFNsを利用してゼブラフィッシュ胚で特異的な突然変異を導入した同様の研究が他グループによって行われた。ゼブラフィッシュkdr遺伝子は血管内皮増殖因子2受容体のをコードしている。アメリカの研究グループがZFN技術を利用してこの遺伝子のターゲット配列へ変異原性の損傷を導入した。ZFN技術は標的の突然変異体の作成を容易にし、種特異的な胚性幹細胞の有無に依存せず、胚が容易に得られる他の脊椎動物にも応用可能であると彼らは指摘している。また彼らは、ゼブラフィッシュでターゲットノックインが実効可能になることから、これまで得られなかったヒトの病気モデルを作成可能になると示唆している。
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