鯨の神格化、クジラ知的生物論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 18:05 UTC 版)
「捕鯨問題」の記事における「鯨の神格化、クジラ知的生物論」の解説
岸上伸啓によれば鯨の神格化は、メディアの圧倒的な物量作戦によって生み出された鯨の虚像(メディアホエール)であり、愛や平和,非暴力などの価値が強調され、映像や音声表現にヴァーチャル・リアリティが入っており、こうしたメッセージから捕鯨が倫理的に悪と考えられている。また、俗流動物中心主義にたつ反捕鯨論はエコファシズムに向かう危険があるとみている。また、環境保護はこうしたシンボルを利用して、多額の資金を調達し、また企業や政府はこうした神話を支持することによって「地球にやさしい」という政治的な正当性を獲得したと分析している。 ノルウェーの人類学者カラン(ノルウェー語版)によれば、クジラを生物学的、生態学的、文化政治的に象徴的に特別な存在とみなして、地球上で最大の動物(シロナガスクジラ),地球上で最大の脳容積を持つ動物(マッコウクジラ),身体に比して大きな脳を持つ動物(バンドウイルカ),愉快でさまざまな歌を歌う動物(ザトウクジラ),人間に友好的な親しい動物(コククジラ),絶滅の危機に瀕している動物(ホッキョククジラやシロナガスクジラ)といった特徴のすべてを併せ持った空想の鯨、「スーパーホエール神話」がメディアにおいて流通し、環境保護のシンボルとなったと指摘している。 三浦淳は、知能の高低と殺してよいもの、そうでないものを結びつけることに合意される合理的な理由はないうえに、その論法を用いれば知能が低い人間は殺害してもよい、という考えに結びつくと述べている。このような価値観が反捕鯨の世論の形成の根底にあるといわれる[疑問点 – ノート]。 また、河島基弘はクジラに見られる以下の6つの特殊性が反捕鯨思想に影響を与えていると考察したうえで、鯨を神格化し特別視することは種の違いに基づく恣意的な種差別であるとしている。 地上最大の動物で巨大な脳を持つという生物学的特殊性 何百万年にわたり海洋に適応し、食物連鎖の最上位に位置しているという生態学的特殊性 クジラは美と優雅さを備えているという美的特殊性 クジラは神秘的で、平和的で、寛容であるという文化的特殊性 広域を回遊するためにどの国にも属さず、国際的な管理が必要であるという政治的特殊性 環境保護のシンボルであるという象徴的特殊性
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