遺伝子中心視点主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/01 22:40 UTC 版)
血縁淘汰説、ESS理論などの考え方を、一部の昆虫だけでなく様々な生物の形質に適用できる一般的な理論だと考え、更に先鋭なスタイルで表現したのが、リチャード・ドーキンスである。彼は、1976年に発表した「利己的な遺伝子」や「延長された表現型」(1982年)などの著作でこの考え方を広めた。この考え方は遺伝子中心視点主義と呼ばれるようになった(日本では利己的遺伝子論と呼ばれることが多い)。 自然選択の実質的な単位は、それが固体であれ群れであれ、たとえ何であっても常に利己的である。自己の適応度を高め、他者の適応度を低めるような性質を持っていなければ自然選択によって排除されるためである。先の血縁淘汰説があきらかにしたのは自然選択で選ばれている実質的な単位は遺伝子だということである。遺伝子は細胞の機能を介して生物の形質を作り上げる。生物たちは、その機能をもって競争し、競争に勝ったものだけがその子孫をのこし、それが進化をもたらす。ドーキンスは遺伝子が自分の作った生物個体という名の生存機械を使ってサバイバルゲームを演じている、と表現した。 この論理は生物学だけでなく社会一般に大きな衝撃を持って迎えられた。その表現のスタイルは、ウィルソン「社会生物学」の大胆な展望とともに激しい論争を引き起こした。特に利己的遺伝子という比喩表現は広く誤解を受けた。利己的遺伝子とは、遺伝子が利己的な考えを持っているという意味ではなく、また個体が常に自分勝手だという意味でもない。ただ単に自然選択の単位が遺伝子であることを表しているに過ぎない。1960年代から始まった社会生物学は急激にその論旨を展開していったが、現在では遺伝子中心視点主義は広く受け入れられている。
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