遺伝子内相補性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/06 17:54 UTC 版)
ある遺伝子によってコードされるポリペプチドの複数のコピーが複合体を形成する場合、このタンパク質構造は多量体(英語: multimer; マルチマー)と呼ばれる。マルチマーが、特定の遺伝子の2つの異なる変異誘発遺伝子(英語: mutant alleles)によって産生されるポリペプチドから形成される場合、混合マルチマーは、それぞれの変異体が単独で形成した非混合マルチマーよりも高い機能活性を示すことがある。このような場合、この現象は遺伝子内相補性(英語: intragenic complementation)、あるいは対立遺伝子間相補性 (英語: inter-allelic complementation)とも呼ばれている。遺伝子内相補性は、真菌Neurospora crassa (アカパンカビ)、Saccharomyces cerevisiae (出芽酵母)、Schizosaccharomyces pombe (分裂酵母)、細菌のSalmonella typhimurium (サルモネラ)、バクテリオファージT4、RNAウイルス、ヒトなど、さまざまな生物のさまざまな遺伝子において実証されている。そのような研究では、同じ遺伝子に欠陥がある多数の突然変異がしばしば単離され、遺伝子の遺伝地図を形成するために組換え頻度に基づいて線形順序でマップ化された。別に、相補性を測定するため、これらの突然変異体をペアで組み合わせて試験された。そのような研究からの分析結果は、一般的に、遺伝子内相補性が、多量体を形成するための異なる欠陥を持つポリペプチド単量体の相互作用から生じるという結論を導いた。多量体形成ポリペプチドをコードする遺伝子は一般的であると考えられる。このデータの一つの解釈は、ポリペプチド単量体は多量体の中で整列していることが多く、遺伝地図上で近くの部位で欠損した変異体ポリペプチドは機能が不十分な混合マルチマーを形成する傾向があるのに対し、遠くの部位で欠損した変異体ポリペプチドはより効果的に機能する混合マルチマーを形成する傾向があるということである。自己認識と多量体形成に関与する分子間力については、Jehleによって議論された。
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