遺伝子中心の視点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 16:26 UTC 版)
1960年代中頃に、ジョージ・ウィリアムスは生物の適応を「種の存続のため」と説明する立場を批判し、群選択論争を引き起こした。そのような説明は進化における遺伝子中心の視点によって置き換えられ、W.D.ハミルトン、G.R.プライス、ジョン・メイナード=スミスらの血縁選択説に集約された。この視点はリチャード・ドーキンスの1976年の影響力のある著書『利己的な遺伝子』で概説された。古典的な群選択は非常に制限された状況でしか起きえないことが示されたが、その後でより洗練された新しいバージョン(マルチレベル選択説)が提案された。 1973年にリー・ヴァン・ヴェーレンはルイス・キャロルから引用した「赤の女王仮説」を提案した。ある種の生物が進化すれば、それに関わる他の生物(特に捕食者や被食者)も対抗適応を発達させ進化を続ける。このような視点は進化的軍拡競走と呼ばれる。ハミルトン、ウィリアムズらはこの考えが有性生殖の進化にも応用できるかも知れないと考えた。有性生殖によってもたらされる遺伝的多様性は、生活環が短く急速に進化する寄生生物への抵抗を維持することができ、そのために遺伝子中心の視点からは無駄が多いはずの有性生殖は一般的になりうる。遺伝子中心の視点はダーウィンの性選択説を甦らせ、近年では雌雄間の対立、親子の対立、イントラゲノミックコンフリクトに焦点が当てられている。
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