過度な修復
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/05 23:32 UTC 版)
化石に対する熱意は「エキセントリック」と形容されることが多く、収集した化石にランプの煤で色付けしたり細部を装飾することもあり、アニングは「彼は熱意のあまり、化石をありのままにせず、自分の想像するあるべき姿に作り替えるほど」だったと語っている。 完璧さへのこだわりは時に、標本化する際に他の化石や漆喰で過剰に補う行為としても現れ、ギデオン・マンテルは「ホーキンス氏は復元しすぎる。腕、尾、肋骨が欠けていてもそれらを補うことを何とも思わない。彼はそうすることで化石を権威づけるのだが、技巧をここまで介在させてしまうと疑わしいものになる」と批判的に見ている。 1834年、自身の化石コレクションを大英博物館に売却する際、博物館の自然史部門の管理人チャールズ・コーニック(Charles König)が巨大イクチオサウルスの標本があまりにも完璧にできていることに違和感を感じ、先に出版されていたホーキンスのカタログに記載されているそれと見比べた。すると、カタログでは欠如していた右ひれや尻尾の部分が現物では存在しており、また記載では18フィートと記載されていた体長が実際には25フィートあった。詳細な検視の結果、一部が漆喰で補填されていることがわかり、コーニックはホーキンスのコレクションの買取を強く推していたウィリアム・バックランドとマンテルにこの事実を伝えた。バックランドはホーキングの復元を以前から黙認していた立場から事態を重く受け止めず、また漆喰部分を色付けして展示するという案で一旦は事態は収束した。 しかし、以前より大英博物館の運営に是正を促していた下院議会はホーキンスのコレクションの購入の妥当性を疑問視し、コーニック含めスタッフへのヒアリングを行った。コーニック自身は中立的な立場を保っていたが、調査委員会の報告書を読んだホーキンスは、自分の名誉を汚されたと感じ、とりわけコーニックに対して強い怒りを表した。しかしMcGowanによると、実際にはコーニックが補填に気づいた標本にはそれ以上の漆喰補填が行われており、ホーキンスが騙そうとする意図をもっていたことは明白である。この標本は、現在ロンドン自然史博物館にイクチオサウルス目の下位分類としてTemnodontosaurus platydon という種名で展示されている。
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