輸入機の時代と試行錯誤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 03:42 UTC 版)
「日本の電気機関車史」の記事における「輸入機の時代と試行錯誤」の解説
国鉄の電化計画に先立ち、秩父鉄道は1922年に直流1200V電化を完了するが、その際にアメリカから輸入されたデキ1形は日本初の本格的本線用電気機関車として注目を浴び、国鉄大井工場が組み立てを請負うことでサンプル的役割を果たす。 1925年、東海道本線の東京駅 - 国府津駅間と横須賀線が電化された。これに先立ち、1922年からED10形を始めとして、アメリカ・イギリス・スイスから多種の電気機関車を輸入した。国産技術がまだ成熟していなかったことから、輸入による技術導入を図ったわけである。 これらの中で、イギリスのイングリッシュ・エレクトリック(EE)社製のものが最も大量に輸入されたが、当のイギリスの鉄道においてもまだ電化が進んでいる状況ではなく、殊にイギリス製機関車はよく故障し、その評判は芳しいものではなかった。もっとも、EE社製機関車は構造面では自動進段機構を備えた電動カム軸式制御器を搭載するなど、以後の国鉄制式機では1962年のEF62形でようやく採用が実現した先進的かつ精緻な機構を備えており、それらの設計・工作法の洗練が不十分であったことと、日本側の受け入れ体制の未熟が、そうした故障の主因であった。イギリスの技師は日本が輸入した自国製機関車の故障状況を調べて本国へ送り、その上でイギリスの鉄道電化を進めたという。 そのため導入からしばらくは、故障対策のため後ろに蒸気機関車を補機として連結し、電蒸運転を行なったが、検修陣の必死の努力により故障は次第に克服され、1927年にはイギリス製のED51形がお召し列車を牽引するまでの信頼を得るようになった。 なお、ED51形を一回り小型化したEE社製の箱形デッキ付きD型電気機関車が、1926年から1930年にかけて秩父鉄道・青梅鉄道・東武鉄道・総武鉄道・伊勢電気鉄道の各社へ納入され、安定した性能を発揮した。これらは使い勝手の良さからその大半が1980年代まで各社で現役車として運用されており、また一部については日本の車両メーカーによってコピー機種が製造されるほどの好評を博している。
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