軌道上での作業
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/24 05:19 UTC 版)
宇宙船が軌道に投入され、第二段ロケットS-IVBから分離された後、飛行士たちは姿勢制御用ロケットを噴射して宇宙船の向きを180度反転させ、S-IVBを目標にしてランデブーとドッキングのシミュレーションを行った。月飛行の際には、このときに着陸船とのドッキングが行われる。ところがこのとき、保護パネルの一つが正規の45度の位置まで開ききっていなかった。管制官のトム・スタッフォード (Tom Stafford) はこのとき、ジェミニ9号で発生した似たような事態を思い出していた。ドッキング訓練のために打ち上げられていた無人のアジェナ衛星のフェアリングが完全に開ききっていなかったため、ドッキングが実施できなかったのである。実際の月飛行のときにこのような事態が発生したら、着陸船を格納庫から抽出するのが困難になるのは明白だった (着陸船はこの保護パネルの中に格納される)。このため8号からは、パネルは完全に分離して投棄されるように仕様が変更された。 宇宙船の機器類およびすべての作業は何の問題もなく進行した。またアポロ宇宙船を月軌道に投入したり、あるいは月軌道から地球に帰還する際に重要な役割を果たす機械船の主エンジン (Service Propulsion System, SPS。機械船推進システム) は合計8回の燃焼試験を行い、推力の誤差は1パーセント以内に収まった。 サターンIBロケットは非常にスムーズに発射されたのに対し、SPSは最初に噴射した瞬間に激しい揺れを発生した。心の準備ができていなかったシラー船長は「ヤバダバドゥー! (Yabbadabbadoo!)」と、原始家族フリントストーンを真似して奇声を発した。エイゼル飛行士はこのときの様子を、「本当に後ろから蹴とばされたようだった」と述べた。 アポロ宇宙船は、それ以前のマーキュリー宇宙船やジェミニ宇宙船に比べるとかなり大型のもので、飛行士たちは船内をある程度移動することができた (マーキュリーとジェミニでは、飛行士は座席に縛りつけられてほとんど身動きできなかった)。そのため当初は、飛行士が動くと宇宙船の姿勢を安定させるのが困難になるのではないかと懸念されていたが、それは杞憂に過ぎなかった。飛行士たちは、無重力の環境で体を動かすのは「信じられないほど簡単だ」と報告した。また胎児のように丸まった姿勢で睡眠をとるのは窮屈で苦痛を強いるものであるため、Exer-Genieというストレッチ器具が用意されていた。 さらに彼らにはもう一つ、宇宙船内から初めて全米にテレビ中継をするという任務があった。1963年にゴードン・クーパー飛行士がマーキュリー9号でスロースキャンカメラを使って映像を送ったことはあったが、テレビで放映されることはなかった。中継は飛行二日目の正午に予定されていたが、シラーはこれがランデブー実験を阻害するのではないかと懸念していた。
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