象徴と寓意
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/23 18:40 UTC 版)
「絵画芸術 (フェルメールの絵画)」の記事における「象徴と寓意」の解説
『絵画芸術』にはさまざまな象徴、寓意がこめられているとする研究者が多く、この作品の主題は歴史の女神クリオだとしている。女性がかぶる月桂樹の花冠、右手に持つ名声を意味するバロック・トランペット(英語版)、左手に持つ書物はおそらく古代ギリシアの歴史家トゥキディデスの『戦史』で、これはルネサンス期のイタリア人美術学者チェーザレ・リーパ(英語版)の寓意画集『イコノロジア』の記述と合致する。 オーストリア王家で、ネーデルラントを支配していたこともあるハプスブルク家の象徴たる双頭の鷲が中央の黄金のシャンデリア基部の飾りとして描かれている。ハプスブルク家はカトリックの擁護者を自認していたことから、この双頭の鷲はおそらくカトリック信仰を表現しているとされている。フェルメールはプロテスタント信仰が圧倒的だったネーデルラントで、カトリックに改宗した数少ない人物だった。シャンデリアに一本のロウソクも立てられていないのは、当時のネーデルラントでカトリック信仰が弾圧されていたことを意味すると考えられている。 背景の地図には、ネーデルラント北部と南部を分割する裂け目がある(当時の慣習と同じく、この地図でも西を上にして描かれている)。これは当時のネーデルラントが、スペイン・ハプスブルク家から独立した北部ネーデルラント(ネーデルラント連邦共和国)と、依然としてハプスブルク家の支配下にあった南部ネーデルラント(スペイン領ネーデルラント)に分裂していたことを意味している。クラース・ヤンス・フィッセルが制作したこの地図には、ユトレヒト同盟によって結束したネーデルラント北部7州とスペインの植民地だった南部の州との政治的断絶が表現されている。 シュルレアリスムを代表する20世紀のスペイン人画家サルバドール・ダリは、自身の作品『テーブルとして使われるフェルメールの亡霊』(1934年、サルバドール・ダリ美術館)に、『絵画芸術』を取り入れている。『テーブルとして使われるフェルメールの亡霊』には『絵画芸術』で背中を向けているフェルメールが、不可思議なテーブルに置き換えられて描かれている。
※この「象徴と寓意」の解説は、「絵画芸術 (フェルメールの絵画)」の解説の一部です。
「象徴と寓意」を含む「絵画芸術 (フェルメールの絵画)」の記事については、「絵画芸術 (フェルメールの絵画)」の概要を参照ください。
- 象徴と寓意のページへのリンク