象徴と技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 04:00 UTC 版)
ノルベルト・スナイデルはその著書『フェルメール、1632年 - 1675年 (Vermeer, 1632–1675 )』(2000年)で、開かれた窓について家や社会など「この女性が自身の置かれている境遇から逃れたいという願望」ではないかとし、果物は「不倫関係の象徴」だと主張した。さらにスナイデルはこの説の証拠として、X線を使用した調査でこのキャンバスにもともとはキューピッドが描かれていたことが判明したことをあげている。下絵の段階では画面右上にプットー(裸身の幼い天使)が描かれていたが、絵が完成した後のフェルメール死後に何者かによって塗りつぶされており、2021年9月に修復が完了したことが発表された。。 マルクス・ガブリエルは、女の服と開かれた幕の色が同じであることから、鑑賞者は無防備な女の裸を窃視することになり、食べかけの桃が果物皿からこぼれてベッドに乱れて転がっている状態は性的暗示であり、女が光源の方向を向かずに頬を紅潮させていることから、神への罪悪から目を背けているのだと精神分析的に解釈している。 画面前面のカーテンというモチーフはフェルメールの作品では珍しいものではなく、現存する絵画のうち7点の作品に描かれている。フェルメールが多用した絵画技法として、ルプソワール (en:repoussoir) と呼ばれる、作品の主題の前面に他のものを配して奥行きを強調する技法は25点の作品に見られる。『窓辺で手紙を読む女』にもルプソワールの技法が使用されており、ラグで覆われたテーブルがルプソワールとして人物像と鑑賞者の間に置かれている。ラグが乗せられたテーブルをルプソワールに使用したフェルメールの作品は多いが、この『窓辺で手紙を読む女』が最初期の作品となっている。 『窓辺で手紙を読む女』と『士官と笑う娘』は、フェルメールが多用した点描技法が見られる最初期の作品である。経済学者にして美術史家ジョン・マイケル・モンティアスは『フェルメールとその境遇 (Vermeer and His Milieu )』(1991年)で、「小さな白い玉」が、『窓辺で手紙を読む女』と『士官と笑う娘』の明るい箇所に存在すると指摘し、『窓辺で手紙を読む女』ではとくに静物と金髪を描いた部分に多く見られるとしている。このような光の表現技法は、フェルメールが凹面レンズを利用したカメラ・オブスクラのような光学装置を使用して、写実的な光を作品に再現したと考える美術史家たちの推測を裏付けていると考えられる。
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