読み癖・慣用音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 08:43 UTC 版)
ぎなた読み 真言陀羅尼は永らく意味を重視せず、口伝により慣用音を伝承してきたため、語句を梵語原文と異なる箇所で区切って読むいわゆる「ぎなた読み」で伝わっていることが少なくない。「オン・カカカビ・サンマエイ・ソワカ」、「オン・マヤラギラン・デイ・ソワカ」、「オン・ベイシラ・マンダヤ・ソワカ」など。 慣用音 経の翻訳においては玄奘以後五種不翻の原則ができ、とくに真言・陀羅尼は不可思議なる仏の秘密語であるがゆえに翻訳せず原音を漢字で音写した。玄奘らはサンスクリット語の発音を正確に表記するために苦心し、例えば『大般若波羅蜜多経』では、発音が似た三種類の「バ」すなわち「ba」・「bha」・「va」をそれぞれ「婆」・「薄」・「筏」と書き分け、漢字二字で子音連結を示す記号や長母音を示す記号なども記し、ときには新しい漢字を作ってまで音を写した。そのため、訳経年代の分る真言・陀羅尼は、その時代の漢字発音の索引ともなりうるほどである。しかし、それを筆写してゆくうちに誤字や脱字が生じ、さらに中国から発音の違う日本に入って来た際に読み方が著しく変化した。 日本に伝来した後も、読み方は口伝によるため同じ真言でも宗派や地域によって発音に相違が生じた。同じ宗派でも、弥勒菩薩の真言を「オン・バイタレイヤ・ソワカ」と発音したり「オン・マイタレイヤ・ソワカ」と発音したりする。他にも「曩莫(namaḥ)」を「ナウマク」「ノウマク」、「縛日羅(vajra)」を「バザラ」「バサラ」、「薩婆訶(svāhā)」を「ソワカ」「ソモコ」「ソコ」と読むなど、様々な読み癖が存在する。明朝風様式を伝える「黄檗宗」では特に相違が著しく、例えば地蔵菩薩の真言は多くの宗派では「オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ」と発音するが、黄檗宗では「アン・ホホホ・ビサンモエイ・ソポホ」と発音する。
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