試用期間中の解雇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/06 09:24 UTC 版)
一般的に企業の就業規則には、試用期間中、又は試用期間満了の際に、従業員としての能力・適性が認められないと使用者が判断した場合、使用者はその労働者の本採用を拒否できる(=解雇できる)旨の定めを置くことが多い。 最高裁判所は三菱樹脂事件(最判昭和48年12月12日)において、試用期間とは「解約権が留保された労働契約の締結されている期間」であると示し、「留保解約権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきものといわなければならない」として、試用期間中の解雇については、一般の解雇の場合よりも使用者に広い裁量が認められると解される。もっとも、昭和50年代以降、判例の積み重ねにより解雇権濫用法理が確立され、労働契約法の施行により同法理が法定化(「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労働契約法第16条))されると、実務上、正社員として採用した労働者を試用期間中に解雇することは極めて困難となった。 解雇権濫用法理が確立すると、今度は試用期間目的で有期労働契約を締結し、能力・適性が認められれば無期雇用契約に切り替え、認められなければ期間満了で雇い止めを行う事例が多くなった。 神戸弘陵学園事件(最判平成2年6月5日)では、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である。」と判示し、使用者が行った雇い止めを解雇と同一視して雇い止めを認めなかった(有期労働契約を締結した目的が試用であれば、原則としてその後は無期労働契約へ転換することになる。労働者としては特段の事情がない限り継続して働くことができるという合理的な期待を持つのが自然だからである)。 福原学園事件(最判平成28年12月1日)では、契約職員の更新限度を原則最長3年と規程で定めていたところ、1年契約を2回更新して通算3年勤務したのち雇い止めとなった職員について、こうした規程等を職員が「十分に認識した上で、本件労働契約を締結した」と判示し、当該有期労働契約が試用期間であると認めず、雇い止めを有効とした(神戸弘陵学園事件と異なり、本件では純粋な有期労働契約であるということに労使間に明確な合意があり、継続雇用の合理的な期待も認められないとされた。なお原審では神戸弘陵学園事件と同様にこの3年間を試用期間として認めていたが、最高裁は原判決を破棄し自判した。)。
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