解剖学的学説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 07:24 UTC 版)
『アダムの創造』の極めて独創的な構成に関して、ミケランジェロが十分な解剖学の知識を持っていたのではないかとする説がある。1990年にインディアナ州アンダーソンの医学博士フランク・リン・メッシュバーガーが、医学誌『ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション』で、神の後ろの人物像と、さらにその背景に描かれている布の表現が、解剖学的に正確な人間の脳に見えると指摘した。このメッシュバーガーの説は、同じく医学博士のマーク・リー・アプラーによって検証されている。綿密な調査の結果、『アダムの創造』の神が描かれた部分は大脳表面の脳溝、さらに脳幹、前頭葉、頭蓋底動脈、脳下垂体、視交叉と一致すると結論付けられた。メッシュバーガーはほかにも、アダムと神の腕はシナプスを介したニューロンの生化学的情報伝達を意味するとしている。神は脳の中心である感情を司る大脳辺縁系を意味し、おそらくは人間の魂を表現している。そして伸ばされた神の右腕は、人間の脳でもっとも創造性に富み、もっとも重要な部位である前頭前皮質を表しているとしている。 他にも、神のまわりに浮かぶ赤い布は子宮を意味しているという説があり、美術史家の中にはこの布を「子宮のマント (uterine mantle )」 と呼んでいるものもいる。そして、下部に垂れ下がる緑の帯は切断されたばかりのへその緒であるとする。「人類の創造を描いたこの作品が、実際の人間の誕生を表現しているという説は興味深い。母体から生まれたわけではないアダムに、なぜかへそが描かれていることの説明にもなる」
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