製造物責任の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 03:54 UTC 版)
損害賠償責任を追及する場合、民法の不法行為法における一般原則によれば、要件の一つとして加害者に故意・過失があったことにつき被害者側が証明責任を負う。つまり民法で損害賠償を請求する際には、被告の過失を原告が立証する必要がある。しかし多くは、過失の証明が困難であるために損害賠償を得ることが不可能になる場合があるとの問題意識から、同法で製造業者の過失(主観的要件)を要件とせず、製造物に欠陥(客観的要件)があったことを要件とすることにより、損害賠償責任を追及しやすくした。このことに製造物責任の意義がある。 無過失責任としての製造物責任に関する扱いとしては、まず、1960年代初めのアメリカで、fault(過失)を要件としない strict liability(厳格責任)の一類型として判例で確立された。また、ヨーロッパでは製造物責任の扱いについて各国でかなりの差異があったが、その均一化を図る必要があるとして、1985年に当時のEC閣僚理事会において製造物責任に関する法律の統一に関する指令が採択され、その指令に基づき各国で製造物責任に関する立法が導入された。 日本では、本法が制定される前は、民法が過失責任の原則を前提に、過失の高度化(製造業者に高度の注意義務を課す)、抽象化(注意義務の内容を抽象化)、客観化(企業の過失を問う)により不法行為責任を認めることにより被害者の救済を図ってきた。昭和50年の私法学会における要綱試案(我妻試案)、数次にわたる国民生活審議会の報告(昭和51年、56年)、消費者運動の高まりにより、製造物責任の導入を求める声が次第に強くなったものの、米国のような訴訟社会につながるものとして、産業界に反対が強かった。しかし、EC指令を受けて、欧州諸国をはじめ世界各国に立法が広がり、米国においてもいわゆるリステートメントの形で、判例法理が成熟し、我が国にも紹介される中で、立法の気運が高まり、国民生活審議会、産業構造審議会、法制審議会など関係省庁の検討が進んだことから、本法が1994年に制定された。
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