被告人の権利の侵害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:24 UTC 版)
他の先進国における陪審制及び参審制は、捜査と被告人勾留の分離・取調べの可視化など、公正な司法・警察制度の運用を前提として導入されている。それに対し、日本の裁判員制度は、国連から冤罪の温床となっているとして廃止が勧告されている代用監獄・密室取調べ・自白強要の温存など、司法と警察の公正さに欠陥を抱えたまま導入されている。 取り調べの一部録画の導入により、捜査機関の偽の証拠や誘導によって作出された虚偽自白の部分のみを裁判で公開するなど、取り調べの過程の検察や警察にとって有利な部分のみを裁判で再生することで、虚偽自白を見抜くことが阻害される。 被告人は審理に裁判員や重罰を求める主張を行う被害者の関与を拒否できない。日本国憲法第32条に反するおそれがある。 裁判員の都合に配慮して法廷での審理が短縮される結果、拙速な審理による誤判の危険が生まれる。 公判前整理手続により、裁判官の判断によって証拠が制限される。 裁判員の選任その他の準備のため、起訴から第一回公判期日までに大きな間が空く。 裁判員制度は冤罪の防止に有益であるという見解があるが、被告人に有利な判決に対しては検察が上訴すれば、上訴審は職業裁判官による審理になるため、結局は審理が長期化するだけである。 検察側が冤罪の疑いが濃厚な事案につき、適切な容疑による起訴をせず裁判員裁判の対象にならない容疑による起訴に切り替えることで、裁判員の介在を避け冤罪事実の隠蔽を図ることもできる。このような立件事由の匙加減による「裁判員逃れ」が横行すれば、犯罪の事実がうやむやにされるばかりか、被告側の公正な裁判を受ける権利を侵害する恐れもある。
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