表記と慣例について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/01 23:02 UTC 版)
Zn と書くと、素数 p に対する p-進整数全体の成す環 Zp と混同の虞があり、剰余類環を Zn で表すことを好む文脈では、p-進整数の全体は Z ^ p {\displaystyle {\hat {\mathbb {Z} }}_{p}} で表すこともある。Z/nZ と書くのが、面倒だがもっとも誤解は少ないだろう。また、Z/n という表記もあるが稀であり、加えて 1 n Z := { k n ; k ∈ Z } {\displaystyle {1 \over n}\mathbb {Z} :=\left\{{k \over n};\ k\in \mathbb {Z} \right\}} なる集合と紛らわしい。 記号の濫用だが、記述の面倒を避けるため慣例的に、同値類を表すのに代表元に施す角括弧をしばしば省略して、代表元とそれが属する合同類とを同じ文字で表す。したがってこのとき、同じ合同類を表すのに無数の符牒が与えられていることになる。たとえば、n = 0 および n − 1 = −1 は Z/nZ に属する合同類の間の関係式と考えれば有効な式である。また、慣例的に合同類を表す符牒が無数にあるという不定性を除くために、各合同類から「標準的」(canonical) な代表元を選んで、それと合同類とを同一視することもよく行われる。 このような慣例的規約に従えば、剰余類環 (Z/nZ, +, ×) は 0, 1, ..., n − 1 の n 個の元からなる。また、次の式 ( a + b ) mod n , ( a × b ) mod n {\displaystyle (a+b){\bmod {n}},\quad (a\times b){\bmod {n}}} は整数環 Z における演算から得られる合同類を表すものであるけれども、規約に従えば、それと同時に Z/nZ における演算そのものを表しているものと、直ちに解釈することができる。また、剰余類環における(和や積といった)算術演算を繰り返す計算(すなわち、Z/nZ 係数の多項式 p(X) の、Z/nZ の任意の元 k における値 p(k) の評価)は、それを整数と見て計算した結果について、法 n に関する剰余を取ればよい。この最後の操作をモジュラー簡約 (modular reduction) などともいう。ただし、モジュラー簡約の操作は整数と見ての計算の途中のどんな場所でも行ってよい。 2-冪 n = 2k に対しては、0 に関して対称な代表系 { − n 2 , … , − 1 , 0 , 1 , … , n 2 − 1 } {\displaystyle \left\{-{n \over 2},\ldots ,-1,0,1,\ldots ,{n \over 2}-1\right\}} をとることもできる。これはつまりビット列としての整数の表示、いわゆる二進表示に対応するものである。
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