衣類の使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 03:43 UTC 版)
体を何かで覆うことは、ほとんどの生息域のヒトにおいて行われる。いわゆる衣服である。これを、ヒトの体が毛で覆われていないことから発達したと見るか、衣服の発達によって毛がなくなったと見るかは、判断が分かれる。しかし、それがかなり古い時代に遡ることは、衣服に付くシラミがコロモジラミとして頭髪に付くアタマジラミとの間に亜種のレベルでの種分化を生じていることからも想像される。 体に着用するものには、体の保護を目的とするものと、装飾を目的にするものとがあるが、両方を兼ねる場合も多い。体の保護を目的とするものとしては、まず腰回りに着用し、生殖器を隠すものが最低限であるようである。装飾にはさまざまなものがあるが、手首や首など、細いところに巻くものがよく見られる。装飾目的としては、体に直接、文字や絵を描き込んだり(入れ墨)穴をあける(ピアス)などの加工も多くの民族に見られる。また、頭髪の上に何かを突出させる形の装飾は、非常に多くの民族に見られる。 ごく稀にであるが、裸族と呼ばれる何も身に付けない習慣を持つヒトの集団が存在するが、全く何一つ着用しない例はまずない。生殖器を隠す事は最低限であるため、裸族に属するヒトであっても、オスはペニスケースを装着している場合が多い。またヌーディストと呼ばれる、衣類を全く身に付けないヒトも存在するが、それらのヒトが衣類を身に付けないのは、それが許される特定エリア・特定時期にのみ限られている。 また、衣服の着用が常時となったヒトは、衣服を着用せず、自らの身体を他の個体にさらすことに嫌悪感を持つ(羞恥)という習性(文化)を持つようになった。生殖器および臀部をさらすことに対しての嫌悪感は多くのヒトで共通しているが、それ以外のどこをさらすことに嫌悪感を持つかについては地域差が大きい。また、さらす側の個体のみならず、さらされる側の個体も嫌悪感を持つため、多くのヒトの社会では、身体の特定部位を必ず衣服で覆うことを義務づける規範を持つに至った。一方でヒトは、そのような規範をあえて破り、身体をさらすことに快感を覚える個体も存在する(自らさらす場合と、他の個体にさらさせてそれを見る場合とがある)。特に普段は衣服によって隠されている生殖器は、交尾時には必ずさらす必要があるため、脱衣行為の解放感と快感は性的興奮と密接に結びついており、そのため近代社会での性風俗文化(ストリップティーズやポルノグラフィなど)の発展にもつながっていった。
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