臨床上の意味
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 09:16 UTC 版)
臨床医にとって脳内病変の可能性を示す警報となる。しかし正常でもこの反射が出ること (偽陽性)、病気があっても反射が出ないこと (偽陰性) はよくある。反射が出るか出ないかだけでは、感度、特異度の向上にはつながらない。強く、持続的で、簡単に繰り返し起こり、また母指球以外への刺激でも誘発されるオトガイ筋の収縮であれば、より脳内病変の可能性が高い。 解放反射は以下のような疾患の診断や評価にとって有効である、例えば前頭葉の病変、水頭症、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病その他の認知症疾患、高齢者の転倒、加齢、HIV脳症、統合失調症、シルビウス裂領域の腫瘍、頭部外傷後など。しかし原始反射はそれぞれ、疾患によって出やすさが異なる。手掌おとがい反射は眉間反射の持続 (マイヤーソン徴候) と同様、パーキンソン病では認知症の有無にかかわらず出現しやすいが、アルツハイマー病でも見られる。原始反射のうち角膜下顎反射と手掌おとがい反射は、明らかに進行したパーキンソン病患者で出現率が高かった。パーキンソン病において誘発が顕著であり、錐体外路疾患に続発することが示唆される。 こうして長年他の原始反射とともに神経学的所見の一環として行われてきたが、パーキンソン病における特異的診断効果が十分評価されてはいなかった。Brodskyらはパーキンソン病、進行性核上性麻痺、多系統萎縮症のそれぞれの患者と対照群に対して手掌おとがい反射および眉間反射の出現度を調査した。この結果パーキンソン症候群では対照に比べてより多く誘発されたが、二つの反射でともに対照と有意差がみられたのはパーキンソン病だけ、進行性核上性麻痺では眉間反射のみ、多系統萎縮症ではいずれも統計学的有意差は見られなかった。それぞれの疾患での感度、特異度、陽性的中率 (所見が陽性のもののうち、実際にその疾患である割合) は表2の通り。 表2 手掌おとがい反射の感度・特異度と陽性的中率 (%)疾患名感度特異度陽性的中率パーキンソン症候群33.390.083.3パーキンソン病34.190.077.8進行性核上性麻痺25.090.042.9多系統萎縮症42.990.042.9
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