縦置き配置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 09:06 UTC 版)
1919年、イギリスのABCモーターサイクル(英語版)は、水平対向2気筒が縦置きされたオートバイを世界で初めて市販した。車軸とエンジン出力軸が平行ではないため回転方向を変更する機構が必要となるが、ABCモーターサイクルはギヤボックスにベベルギアを内蔵させ、ギヤボックスから後輪へはチェーンドライブで駆動力を伝達する構造を用いた。1923年に登場したBMW・R32も、ABCモーターサイクルと同様の手法で縦置き水平対向2気筒を搭載したが、動力伝達方式はシャフトドライブである。 縦置き水平対向2気筒では左右のシリンダーに均等に走行風が当たるため、横置き水平対向2気筒や横置きV型2気筒と比べて冷却効率に優れる利点がある。アメリカのハーレーダビッドソンが軍用オートバイとして開発したハーレーダビッドソン・XAは縦置きレイアウトに加えて、走行風を効率的にシリンダーに導くようにレッグガードを兼ねた導風板が設置された。同時期に戦場に投入された横置きV型2気筒のハーレーダビッドソン・WLA(英語版)に比べ、高速巡航時のシリンダー潤滑油はXAの方が56度以上低かったという記録が残っている。 また、オートバイが衝突事故を起こした場合にシリンダーがライダーの足を障害物から保護し、転倒した際にもシリンダーが支点となってフレームを保護する効果も発揮する。冬季においては、シリンダーから発生する熱によりライダーの足が温められる効果もある。しかし同時に、このような構成は露出したシリンダーが障害物に激突した際にエンジンが破損して走行不能に陥るリスクや、夏期や熱帯地方においてはライダーの足がシリンダーの高熱にさらされ、場合によっては低温やけどなどの重篤な負傷を負う可能性を常に孕んでいることにもなる また、左右に突出したシリンダーはバンク角に制限を加えるため、充分なバンク角を確保するには車体設計に配慮を要する。
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