絵本小夜時雨
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絵本小夜時雨(えほんさよしぐれ)は、江戸時代に出版された絵本読本(えほんよみほん)[1]。作・画ともに作者は速水春暁斎。1801年(享和元年)に刊行された。全5巻。
『太平記』、『平家物語』、『武将感状記』といった軍記物語や武士の行状記、『今昔物語集』、『翁草』などの説話集に取材した話を収録しており、それぞれの話に絵をつけている。神仏の霊験、武士による妖怪退治、亡霊との遭遇、不思議な仙人や幻術使いや忍者、各地の奇談などが主な題材として採られている。ただし昔の説話集だけでなく、1798年(寛政10年)に発生した方広寺大仏(京の大仏)の落雷による焼失にまつわる話である「樹木仏像に見ゆ」のように、同時代の話もある。
『今昔物語集』から採られている話の多くは、時代設定を移して(室町時代など)いる点に特徴がある。『今昔物語集』巻27「東人宿川原院被取妻語」が題材であると見られる「山室氏鬼の為に妾を拘」(巻二)は、説話の主人公が赤松則祐の家臣・山室鬼八郎と設定されているなどの改編・翻案がみられる[2]。
翻刻など
江馬務『日本妖怪変化史』(および改題本『おばけの歴史』)や粕三平『お化け図絵』では、本書から数点の挿画が引かれ、紹介されている。
2002年、近藤瑞木『百鬼繚乱 江戸怪談・妖怪絵本集成』に全文の翻刻が収録された。
漫画家・水木しげるの著書では1980年前後から参考文献として『絵本小夜時雨』の名があげられており[3]、「浪速東堀に異魚を釣る」「山室氏鬼の為に妾を拘」(巻二)や「樹木仏像に見ゆ」(巻三)、「泉縄手の陰火」(巻四)など本書から多くの話を直接紹介している[4]。
脚注
- ^ 上方で出版されていた江戸時代の本の形式の一つ。説話や物語を主としているが絵も豊富に掲載されている。
- ^ 近藤瑞木『百鬼繚乱 江戸怪談・妖怪絵本集成』国書刊行会、2002年、110頁、ISBN 4-336-04447-3
- ^ 水木しげる 『霊界アドベンチャー』 アイペック 1983年 158頁 ISBN 4-87047-006-3
- ^ 水木しげる 『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』講談社(講談社文庫)、2014年、424頁。ISBN 978-4-062-77602-8。 「高入道」の項目では資料名に言及がある。(原話は「御幸町の怪異」(巻二))
参考文献
- 近藤瑞木『百鬼繚乱 江戸怪談・妖怪絵本集成』国書刊行会、2002年、290-292頁、ISBN 4-336-04447-3 。
絵本小夜時雨
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江戸時代の古書『絵本小夜時雨』の二「浪華東堀に異魚を釣」に記述がある。寛政12年(1800年)、大阪西堀平野町の浜で釣り上げられたとされる体長約3尺(約90センチメートル)の怪魚。同書では人魚の一種とされるが、多くの伝承上の人魚と異なり人間状の上半身はなく、人に似た顔を持つ魚であり、ボラに似た鱗を持ち、人間の幼児のような声をあげたという。水木しげるの著書には「髪魚(はつぎょ)」として載っている。
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