細胞外被とは? わかりやすく解説

グリコカリックス

(細胞外被 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/23 13:40 UTC 版)

グリコカリックス
MeSH Glycocalyx
コード TH H1.00.01.1.00002
テンプレートを表示

グリコカリックス英語: glycocalyx)とは、細菌等の細胞表面を被覆する糖タンパク質多糖類である。ある種の細菌細胞や上皮細胞などで産生される。細胞表面の更に外側の層を形成する。通常、細胞表面や表層と結合した多糖類並びに、結合していないプロテオグリカン及び糖タンパク質で構成される[1]。魚の表面の粘液もグリコカリックスと考えられている。この語は当初上皮組織の表面の覆いをつくる上皮細胞によって分泌される多糖でできたマトリックスに用いられていた。

概要

細胞膜の外側には、あらゆる動物細胞がグリコカリックスと呼ばれる縮れたコートをまとっている。このコートは膜の糖脂質と糖タンパク質の炭水化物部分からなる。人によってグリコカリックスは異なり、一卵性双生児のみが科学的に同質のものを持つ。グリコカリックスは体が細胞や組織を識別するために使われ、自分自身の健康な細胞を、移植した組織、罹患した細胞、または侵入した生物と区別する。グリコカリックスはまた細胞接着分子も含み、胚発生の間、細胞がお互いに接着したり、細胞の動きを助けたりする。[2]グリコカリックスが毛細血管内に充満した赤血球の形を変えたり、血管系の他の多くの機能に重要であると思われることが研究で示され、現在も研究されている。[3]

細菌のグリコカリックス

グリコカリックス(文字通りの意味は「糖衣」)は、多糖のネットワークであり、細菌などの細胞表面から出ている。グリコカリックスがカプセルとなってその細菌を守る、または、その細菌が不活性な表面(歯や岩のような。肺炎レンサ球菌を参照)や他の細菌(それらのグリコカリックスがまとまってコロニーを覆う)と接着することを可能にする。

グリコカリックスは細菌の細胞壁のすぐ外側に見られる。別のゼラチン様グリコカリックスは莢膜と呼ばれ、一方、不規則で拡散した層は粘液層と呼ばれる。グリコカリックスは細菌を貪食細胞から守る助けとなることがある。また、カテーテル、歯または岩のような不活性な表面上に作られるバイオフィルムの形成も助ける。

消化管内のグリコカリックス

グリコカリックスは消化管、特に小腸の微絨毛の先端部分でも見られることがある。厚さ0.3マイクロメートルの網目構造を形成し、上皮吸収細胞の粘膜側細胞膜から分泌された酸性のムコ多糖と糖タンパク質からなる。それにより吸収のための表面が増加し、またグリコカリックスには吸収細胞から分泌されたタンパク質と糖の消化の最後の段階に必要な酵素が含まれる。

機能

  • 保護 - 細胞膜のクッションとなり、また化学物質による傷害から細胞膜を守る
  • 感染に対する免疫 - 免疫系が非自己生物を認識し、選択的に攻撃することを可能にする
  • がんに対する防御 - がん細胞でのグリコカリックスの変化によって免疫系が認識し、攻撃することを可能にする
  • 移植組織適合性 - 輸血、同種移植、および組織移植における適合性の基礎となる
  • 細胞接着 - 細胞間を繋げることで組織がバラバラになるのを防ぐ
  • 炎症の調節 - 血管壁のグリコカリックス層は白血球が健康な状態のときには動いたり結合したりするのを防ぐ[4]
  • 受精 - 精子が卵を見つけ、結合することができる
  • 胚発生 - 胚細胞を体内での目的地へ導く

参照文献

  1. ^ biology online
  2. ^ Saladin, Kenneth. "Anatomy & Physiology: The unity of form and function." McGraw Hill. 5th Edition. 2010. p. 94-95
  3. ^ Reitsma, Sietze. "The endothelial glycocalyx: composition, functions, and visualization." European Journal of Physiology. 2007. Vol. 454. Num. 3. p. 345-359
  4. ^ Near-Wall {micro}-PIV Reveals a Hydrodynamically Relevant Endothelial Surface Layer in Venules In Vivo - Smith et al. 85 (1): 637 - Biophysical Journal

細胞外被

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 10:17 UTC 版)

緑藻」の記事における「細胞外被」の解説

緑藻細胞は、明瞭な細胞外被を欠く裸のものや鱗片覆われるものもあるが、多く細胞壁囲まれている。プラシノ藻総称される緑藻は、糖タンパク質を含む有機質鱗片覆われていることが多い。これと相同鱗片は、シャジクモ綱やアオサ藻綱一部鞭毛細胞にも見られることから (これらの緑藻互いにかなり遠縁である)、鱗片存在緑色植物全体における原始形質であると考えられている。細胞壁セルロースを含むことが多いが、マンナンキシランなど他の多糖主とするもの (例:アオサ藻綱ハネモ目など) や、糖タンパク質からなるもの (例:クラミドモナスなど) もある。細胞壁性状多様であり、粘液質のものや、薄い構造細胞膜密着しているもの (テカ theca)、細胞緩く囲んでいるもの (ロリカ lorica) もある。細胞壁石灰化 (炭酸カルシウム沈着) している例もあり、サボテングサやカサノリ (アオサ藻綱)、Coccomoans (緑藻綱)、シャジクモ類 (右図5) などが知られる

※この「細胞外被」の解説は、「緑藻」の解説の一部です。
「細胞外被」を含む「緑藻」の記事については、「緑藻」の概要を参照ください。


細胞外被

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/07 13:40 UTC 版)

クリプト藻」の記事における「細胞外被」の解説

クリプト藻外被はペリプラスト(periplast)と呼ばれる。これは細胞膜とそれを裏打ちする板状構造から成る板状構造タンパク質でできており、その規則的なパターン分類形質としても有用である。

※この「細胞外被」の解説は、「クリプト藻」の解説の一部です。
「細胞外被」を含む「クリプト藻」の記事については、「クリプト藻」の概要を参照ください。


細胞外被

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/07 14:05 UTC 版)

ハプト藻」の記事における「細胞外被」の解説

ハプト藻細胞表面有機質鱗片円石を持つ。珪酸質の鱗片を持つ種も報告されている。 有機鱗片 ハプト藻多く細胞膜表面有機鱗片を持つ。特に Chrysochromulina 属や Prymnesium 属では、針状バスケット状等、複雑な形状のものが見られる円石藻も、一部の種を除き円石の下に有機鱗片層を持つことが普通である。 円石(→ 円石藻円石炭酸カルシウム結晶構成され鱗片である。円石藻はこの円石形態によって種や属が区別可能であり、分類上の形態形質として有用である。円石細胞内のゴルジ体或いはそれに由来する器官作られる場合と、細胞外で形成される場合とがある。結晶構造としては方解石型と霰石型の両方があり、いずれも偏光顕微鏡電子顕微鏡による観察同定する事ができる。円石結晶成長酸性多糖などに制御されると言われているが、未だ包括的な形成機構分かっていない。

※この「細胞外被」の解説は、「ハプト藻」の解説の一部です。
「細胞外被」を含む「ハプト藻」の記事については、「ハプト藻」の概要を参照ください。


細胞外被

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:24 UTC 版)

緑色植物亜界」の記事における「細胞外被」の解説

緑色植物細胞は、ふつう細胞壁囲まれている。細胞壁セルロースを含むことが多いが、マンナンキシランなど他の多糖主とするもの (例:ハネモ) や、糖タンパク質からなるもの (例:クラミドモナス類) もある。細胞膜中のセルロース合成酵素複合体は、緑藻植物では線状ストレプト植物ではロゼット状である。また緑色植物中には明瞭な細胞外被を欠く裸のもの (例:ドナリエラ属) もいる。プラシノ藻総称される緑藻では、細胞糖タンパク質主とする有機質鱗片覆われていることが多く、この特徴緑色植物における祖先形質であると考えられている。

※この「細胞外被」の解説は、「緑色植物亜界」の解説の一部です。
「細胞外被」を含む「緑色植物亜界」の記事については、「緑色植物亜界」の概要を参照ください。


細胞外被

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 08:22 UTC 版)

藍藻」の記事における「細胞外被」の解説

典型的なグラム陰性細菌 (大腸菌など) と同様、藍藻細胞壁は、ペプチドグリカン層 (peptideglycan layer) と、その外側を覆う外膜 (outer membrane) からなるペプチドグリカン層は、アミノ糖であるNーアセチルグルコサミンとNーアセチルムラミン酸が交互に連なった糖鎖が、オリゴペプチド架橋された物質であるペプチドグリカン (ムレイン murein) からなる藍藻ペプチドグリカン層は、一般的なグラム陰性細菌のそれにくらべて厚いことが多く (12700 nm)、またオリゴペプチド架橋が多い (グラム陽性細菌的な特徴)。ペプチドグリカン層が存在する細胞膜外膜の間の空間は、ペリプラズム (periplasm) とよばれる外膜は、細胞膜同じく脂質二重層であるが、外側の層には糖鎖結合した脂質 (リポ多糖 lipopolysaccharide, LPS) が含まれる。他のグラム陰性細菌ではリポ多糖は毒となることがあり (内毒素)、藍藻がもつ外膜リポ多糖にもその可能性指摘されている。 糸状藍藻トリコームでは、細胞列は共通の外膜包まれており、またペプチドグリカン層を共有している。細胞間には、ペプチドグリカン層を貫通して隣接する細胞細胞膜同士をつなぐ連結構造 [セプトソーム (septosome、隔壁結合 septal junction微細原形質連絡 microplasmodesmata)] が多数存在する。セプトソームは長さ 25 nm外径 15 nm内径 6 nmほどであり、おそらく細胞間での低分子物質輸送関与している。 2a. 共通の粘液質包まれ藍藻 2b. 色素で色づいた鞘をもつ糸状藍藻 外膜外側には、結晶性糖タンパク質からなる層が存在することがあり、S層 (surface layer, S-layer) とよばれるこのような糖タンパク質層は、細胞保護物質透過接着認識運動被食防御などに関与していると考えられている。さらに細胞は、タンパク質細胞多糖 (exopolysaccharide) からなる細胞外高分子物質 (extracellular polymeric substance, EPS) によって覆われることがある細胞外高分子物質は、その厚さ形態性状に応じて、鞘 (sheath; 薄く緻密光学顕微鏡下で明瞭な構造; 右図2b)、夾膜 (capsule; 厚く均質輪郭明瞭な構造)、粘液質 (slime; 細胞沿った形を示さない不定形構造; 右図2a) ともよばれる多数個体細胞外高分子物質からなる共通の基質包まれ群体バイオフィルム形成することもある。このような外被には、無機栄養分の貯蔵乾燥耐性紫外線耐性浮力増大被食防御などの機能があると考えられている。細胞外高分子物質含まれる紫外線吸収色素として、スキトネミン (scytonemin)やグロエオカプシン (gloeocapsin)、マイコスポリン様アミノ酸 (mycosporine-like amino acid, MAA)などが知られている。また細胞外被が石灰化 (炭酸カルシウム沈着) することがあり、おそらく光合成における二酸化炭素濃縮機構関連している。このような石灰化によって、ストロマトライト形成されることがある

※この「細胞外被」の解説は、「藍藻」の解説の一部です。
「細胞外被」を含む「藍藻」の記事については、「藍藻」の概要を参照ください。


細胞外被

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/24 06:53 UTC 版)

黄金色藻」の記事における「細胞外被」の解説

多く黄金色藻特別な細胞外被構造持たない不動球形の種は細胞壁を持つ場合もあるが、多く鞭毛虫態やアメーバ態の細胞ではこれを欠く。分枝状の群体作るサヤツナギ(Dinobryon)や近縁属のエピピクシス(Epipyxis)などは、ロリカ呼ばれる筒状円錐状の殻を作る珪酸質の鱗片作るシヌラ藻仲間(シヌラ(モトヨセヒゲムシSynura、マロモナス(ミノヒゲムシMallomonas など)は近年別のグループとして分離する意見もある(後述)が、それ以外黄金色藻でもパラフィソモナス(Paraphysomonas)やクリソスファエレラ(Chrysosphaerella) が発達した珪酸鱗片を持つ。不動群体形成する種では、細胞外マトリックスとして寒天質分泌するものもある。

※この「細胞外被」の解説は、「黄金色藻」の解説の一部です。
「細胞外被」を含む「黄金色藻」の記事については、「黄金色藻」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「細胞外被」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「細胞外被」の関連用語

細胞外被のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



細胞外被のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのグリコカリックス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの緑藻 (改訂履歴)、クリプト藻 (改訂履歴)、ハプト藻 (改訂履歴)、緑色植物亜界 (改訂履歴)、藍藻 (改訂履歴)、黄金色藻 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS