グリコカリックス
グリコカリックス | |
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MeSH | Glycocalyx |
コード | TH H1.00.01.1.00002 |
グリコカリックス(英語: glycocalyx)とは、細菌等の細胞表面を被覆する糖タンパク質や多糖類である。ある種の細菌細胞や上皮細胞などで産生される。細胞表面の更に外側の層を形成する。通常、細胞表面や表層と結合した多糖類並びに、結合していないプロテオグリカン及び糖タンパク質で構成される[1]。魚の表面の粘液もグリコカリックスと考えられている。この語は当初上皮組織の表面の覆いをつくる上皮細胞によって分泌される多糖でできたマトリックスに用いられていた。
概要
細胞膜の外側には、あらゆる動物細胞がグリコカリックスと呼ばれる縮れたコートをまとっている。このコートは膜の糖脂質と糖タンパク質の炭水化物部分からなる。人によってグリコカリックスは異なり、一卵性双生児のみが科学的に同質のものを持つ。グリコカリックスは体が細胞や組織を識別するために使われ、自分自身の健康な細胞を、移植した組織、罹患した細胞、または侵入した生物と区別する。グリコカリックスはまた細胞接着分子も含み、胚発生の間、細胞がお互いに接着したり、細胞の動きを助けたりする。[2]グリコカリックスが毛細血管内に充満した赤血球の形を変えたり、血管系の他の多くの機能に重要であると思われることが研究で示され、現在も研究されている。[3]
細菌のグリコカリックス
グリコカリックス(文字通りの意味は「糖衣」)は、多糖のネットワークであり、細菌などの細胞表面から出ている。グリコカリックスがカプセルとなってその細菌を守る、または、その細菌が不活性な表面(歯や岩のような。肺炎レンサ球菌を参照)や他の細菌(それらのグリコカリックスがまとまってコロニーを覆う)と接着することを可能にする。
グリコカリックスは細菌の細胞壁のすぐ外側に見られる。別のゼラチン様グリコカリックスは莢膜と呼ばれ、一方、不規則で拡散した層は粘液層と呼ばれる。グリコカリックスは細菌を貪食細胞から守る助けとなることがある。また、カテーテル、歯または岩のような不活性な表面上に作られるバイオフィルムの形成も助ける。
消化管内のグリコカリックス
グリコカリックスは消化管、特に小腸の微絨毛の先端部分でも見られることがある。厚さ0.3マイクロメートルの網目構造を形成し、上皮吸収細胞の粘膜側細胞膜から分泌された酸性のムコ多糖と糖タンパク質からなる。それにより吸収のための表面が増加し、またグリコカリックスには吸収細胞から分泌されたタンパク質と糖の消化の最後の段階に必要な酵素が含まれる。
機能
- 保護 - 細胞膜のクッションとなり、また化学物質による傷害から細胞膜を守る
- 感染に対する免疫 - 免疫系が非自己生物を認識し、選択的に攻撃することを可能にする
- がんに対する防御 - がん細胞でのグリコカリックスの変化によって免疫系が認識し、攻撃することを可能にする
- 移植組織適合性 - 輸血、同種移植、および組織移植における適合性の基礎となる
- 細胞接着 - 細胞間を繋げることで組織がバラバラになるのを防ぐ
- 炎症の調節 - 血管壁のグリコカリックス層は白血球が健康な状態のときには動いたり結合したりするのを防ぐ[4]
- 受精 - 精子が卵を見つけ、結合することができる
- 胚発生 - 胚細胞を体内での目的地へ導く
参照文献
- ^ biology online
- ^ Saladin, Kenneth. "Anatomy & Physiology: The unity of form and function." McGraw Hill. 5th Edition. 2010. p. 94-95
- ^ Reitsma, Sietze. "The endothelial glycocalyx: composition, functions, and visualization." European Journal of Physiology. 2007. Vol. 454. Num. 3. p. 345-359
- ^ Near-Wall {micro}-PIV Reveals a Hydrodynamically Relevant Endothelial Surface Layer in Venules In Vivo - Smith et al. 85 (1): 637 - Biophysical Journal
細胞外被
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 10:17 UTC 版)
緑藻の細胞は、明瞭な細胞外被を欠く裸のものや鱗片で覆われるものもあるが、多くは細胞壁で囲まれている。プラシノ藻と総称される緑藻は、糖タンパク質を含む有機質の鱗片で覆われていることが多い。これと相同な鱗片は、シャジクモ綱やアオサ藻綱の一部の鞭毛細胞にも見られることから (これらの緑藻は互いにかなり遠縁である)、鱗片の存在は緑色植物全体における原始形質であると考えられている。細胞壁はセルロースを含むことが多いが、マンナンやキシランなど他の多糖を主とするもの (例:アオサ藻綱ハネモ目など) や、糖タンパク質からなるもの (例:クラミドモナスなど) もある。細胞壁の性状は多様であり、粘液質のものや、薄い構造が細胞膜に密着しているもの (テカ theca)、細胞を緩く囲んでいるもの (ロリカ lorica) もある。細胞壁が石灰化 (炭酸カルシウムが沈着) している例もあり、サボテングサやカサノリ (アオサ藻綱)、Coccomoans (緑藻綱)、シャジクモ類 (右図5) などが知られる。
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細胞外被
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/07 13:40 UTC 版)
クリプト藻の外被はペリプラスト(periplast)と呼ばれる。これは細胞膜とそれを裏打ちする板状の構造から成る。板状構造はタンパク質でできており、その規則的なパターンは分類形質としても有用である。
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細胞外被
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/07 14:05 UTC 版)
ハプト藻は細胞の表面に有機質の鱗片や円石を持つ。珪酸質の鱗片を持つ種も報告されている。 有機鱗片 ハプト藻の多くは細胞膜の表面に有機鱗片を持つ。特に Chrysochromulina 属や Prymnesium 属では、針状やバスケット状等、複雑な形状のものが見られる。円石藻も、一部の種を除き円石の下に有機鱗片層を持つことが普通である。 円石(→ 円石藻) 円石は炭酸カルシウムの結晶で構成された鱗片である。円石藻はこの円石の形態によって種や属が区別可能であり、分類上の形態形質として有用である。円石は細胞内のゴルジ体、或いはそれに由来する器官で作られる場合と、細胞外で形成される場合とがある。結晶構造としては方解石型と霰石型の両方があり、いずれも偏光顕微鏡や電子顕微鏡による観察で同定する事ができる。円石の結晶成長は酸性多糖などに制御されると言われているが、未だ包括的な形成機構は分かっていない。
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細胞外被
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 04:24 UTC 版)
緑色植物の細胞は、ふつう細胞壁で囲まれている。細胞壁はセルロースを含むことが多いが、マンナンやキシランなど他の多糖を主とするもの (例:ハネモ) や、糖タンパク質からなるもの (例:クラミドモナス類) もある。細胞膜中のセルロース合成酵素複合体は、緑藻植物では線状、ストレプト植物ではロゼット状である。また緑色植物の中には、明瞭な細胞外被を欠く裸のもの (例:ドナリエラ属) もいる。プラシノ藻と総称される緑藻では、細胞が糖タンパク質を主とする有機質の鱗片で覆われていることが多く、この特徴が緑色植物における祖先形質であると考えられている。
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細胞外被
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 08:22 UTC 版)
典型的なグラム陰性細菌 (大腸菌など) と同様、藍藻の細胞壁は、ペプチドグリカン層 (peptideglycan layer) と、その外側を覆う外膜 (outer membrane) からなる。ペプチドグリカン層は、アミノ糖であるNーアセチルグルコサミンとNーアセチルムラミン酸が交互に連なった糖鎖が、オリゴペプチドで架橋された物質であるペプチドグリカン (ムレイン murein) からなる。藍藻のペプチドグリカン層は、一般的なグラム陰性細菌のそれにくらべて厚いことが多く (12〜700 nm)、またオリゴペプチドの架橋が多い (グラム陽性細菌的な特徴)。ペプチドグリカン層が存在する細胞膜と外膜の間の空間は、ペリプラズム (periplasm) とよばれる。外膜は、細胞膜と同じく脂質二重層であるが、外側の層には糖鎖が結合した脂質 (リポ多糖 lipopolysaccharide, LPS) が含まれる。他のグラム陰性細菌ではリポ多糖は毒となることがあり (内毒素)、藍藻がもつ外膜のリポ多糖にもその可能性が指摘されている。 糸状性藍藻のトリコームでは、細胞列は共通の外膜に包まれており、またペプチドグリカン層を共有している。細胞間には、ペプチドグリカン層を貫通して隣接する細胞の細胞膜同士をつなぐ連結構造 [セプトソーム (septosome、隔壁結合 septal junction、微細原形質連絡 microplasmodesmata)] が多数存在する。セプトソームは長さ 25 nm、外径 15 nm、内径 6 nmほどであり、おそらく細胞間での低分子物質輸送に関与している。 2a. 共通の粘液質に包まれた藍藻 2b. 色素で色づいた鞘をもつ糸状藍藻 外膜の外側には、結晶性の糖タンパク質からなる層が存在することがあり、S層 (surface layer, S-layer) とよばれる。このような糖タンパク質層は、細胞の保護、物質透過、接着、認識、運動、被食防御などに関与していると考えられている。さらに細胞は、タンパク質や細胞外多糖 (exopolysaccharide) からなる細胞外高分子物質 (extracellular polymeric substance, EPS) によって覆われることがある。細胞外高分子物質は、その厚さや形態、性状に応じて、鞘 (sheath; 薄く緻密で光学顕微鏡下で明瞭な構造; 右図2b)、夾膜 (capsule; 厚く均質で輪郭が明瞭な構造)、粘液質 (slime; 細胞に沿った形を示さない不定形の構造; 右図2a) ともよばれる。多数の個体が細胞外高分子物質からなる共通の基質に包まれ、群体やバイオフィルムを形成することもある。このような外被には、無機栄養分の貯蔵、乾燥耐性、紫外線耐性、浮力増大、被食防御などの機能があると考えられている。細胞外高分子物質に含まれる紫外線吸収色素として、スキトネミン (scytonemin)やグロエオカプシン (gloeocapsin)、マイコスポリン様アミノ酸 (mycosporine-like amino acid, MAA)などが知られている。また細胞外被が石灰化 (炭酸カルシウムが沈着) することがあり、おそらく光合成における二酸化炭素濃縮機構と関連している。このような石灰化によって、ストロマトライトが形成されることがある。
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細胞外被
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/24 06:53 UTC 版)
多くの黄金色藻は特別な細胞外被構造を持たない。不動で球形の種は細胞壁を持つ場合もあるが、多くの鞭毛虫態やアメーバ態の細胞ではこれを欠く。分枝状の群体を作るサヤツナギ(Dinobryon)や近縁属のエピピクシス(Epipyxis)などは、ロリカと呼ばれる筒状・円錐状の殻を作る。珪酸質の鱗片を作るシヌラ藻の仲間(シヌラ(モトヨセヒゲムシ) Synura、マロモナス(ミノヒゲムシ) Mallomonas など)は近年別のグループとして分離する意見もある(後述)が、それ以外の黄金色藻でもパラフィソモナス(Paraphysomonas)やクリソスファエレラ(Chrysosphaerella) が発達した珪酸鱗片を持つ。不動の群体を形成する種では、細胞外マトリックスとして寒天質を分泌するものもある。
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