精神的な「発展」・「進化」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 10:09 UTC 版)
「人生の意義」の記事における「精神的な「発展」・「進化」」の解説
比較宗教学者の大田俊寛によると、マックス・ウェーバーが述べたように近現代社会の人間は、無限に続く物質的発展や進化の中で生きている。そのため近現代人は「自己の生」の、あるいは「魂」や霊的概念のよりどころを見失っている。しかし、近代に復活した様々な宗教的・神話的・伝統的思想は、肉体や物質を超越した「魂」や「精神」を再度持ち出し、それらを統一させる方向へ向かった。この種の思想、「霊性進化論」は、近代側(科学や進化論)と伝統側(宗教や霊性論)との間における断絶を、精神的「発展」または霊的「進化」によって解決しようとしている。 これら近代以降の諸宗教は、一見すると「正」の立場に位置しているようである ―― すなわち霊性進化論の目的は、「対立」(特に科学と宗教との対立)を克服したり、今までの様々な諸宗教の共通価値や普遍的英知を再発見したり、「神」的なユートピアを探求したり、精神的・魂的な反省と研鑽を重ねたりすることである。しかしそれは、強烈な「負」の側面と表裏一体であり、結果として「純然たる誇大妄想の体系」に行き着いてしまうと大田は述べている。その特徴として、 「霊的エリート主義の形成」 「被害妄想の昂進」 「偽史の膨張」 という三点が挙げられる。 大田が言うには、そもそも近代化・産業化・科学化が、宗教的・伝統的社会へ多大な破壊的影響を与えた。まず地動説によって地球は、「宇宙の中心」としての地位を追われた。さらにダーウィンの進化論によって人間は、神的存在の創造した「特別な存在」という地位を失った。つまり人間を含め生物は、神聖な存在によって創造されたわけではなく、突然変異と自然淘汰の「メカニズム」によって出現したということが、合理的方法で証明されたのである。 「遺伝子の乗り物」および「自然の手先」も参照 近代社会の諸科学や諸学問から見れば、宗教的・伝統的な学知は、前近代的な「迷信」の寄せ集めでしかなくなった。確かに、近代以降にも「人間の生」、社会の持続的運営、精神といった事柄に問題はつきまとってきた。宗教は近代社会の中で再解釈・再編され、そして宗教は、「人間の生」の問題や、進化論との対立をはじめとするもろもろの問題を解決しようとした。しかし比較宗教学から見れば、そのような宗教活動は「霊性進化論」であり、「妄想の体系以外のものを生みだしえない」と結論できる。
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