第四篇 フウイヌム国渡航記
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「ガリヴァー旅行記」の記事における「第四篇 フウイヌム国渡航記」の解説
1710年9月7日 - 1715年12月5日 最終篇であるフウイヌム国渡航記は、平和で非常に合理的な社会を持つ、高貴かつ知的な馬の種族に関して述べた物語である。馬の姿をした種族フウイヌムは戦争や疫病や大きな悲嘆を持たず、エリート主義的かつ官僚的で創造性に欠けた、厳密な種族的カースト制度を保持している。この制度は、話法や風習、外見において、イギリスの貴族制を風刺している。 フウイヌムは、彼らを悩ませているヤフーと呼ばれる邪悪で汚らしい毛深い生物と対比される。ヤフーは、ブロブディンナグ国でのサイズの拡大と同様に、人類を否定的に歪曲した野蛮な猿のような種族であり、ヤフーの中には退化した人間性がある。ヤフーは、酩酊性のある植物の根によるアルコール中毒に似た習慣を持っており、絶え間なく争い、人間にとっての宝石類のように無益な輝く石を切に求めている。ガリヴァーと友人のフウイヌムは、人間とヤフーについての記録を比較し、2匹のヤフーが輝く石を巡って争っている隙に3匹目が石を奪い取るというヤフーの行為と訴訟や、特に理由も無いのに同種族で争い合うヤフーの習性と戦争のような、2種族の類似性を発見する。ガリヴァーが自国の人間の文明や社会について戦争や貧富の差も含めて語ると、友人のフウイヌムからは「ヤフーはまだ武器や貨幣を作るような知恵が無いから争いは小規模で済むが、お前達のように知恵をつけたらより凄惨な事態を招くのだろうな」と苦々しげに評される。ガリヴァーの国における馬が、飼い馬はもちろん野生のものまで荒々しくも誇り高く、ヤフーのように粗野で卑しい存在ではないことも決定打となる。 ヤフーは毛深い体と鈎爪により人間と肉体的に異なっているが、雌のヤフーに性交を挑みかかられた後に、ガリヴァーは自分はヤフーであると信じるようになる。それ以来、ガリヴァーはフウイヌムであることを切望するようになる。しかし、ガリヴァーはフウイヌムたちの議会において「知恵や理性はあるが結局はヤフーと同一の存在」と判決を受け、常日頃からフウイヌムたちがヤフーを害獣として淘汰していく方針を進めていたため、処刑されるかフウイヌム国を出ていくよう言い渡される。ガリヴァーは精神的に打ちのめされながらも、友人のフウイヌムに申し訳なさそうに見送られ国を旅立つ。故国に帰り着いた後も、ガリヴァーは自分のできる限り人間性(彼からすれば人間≒ヤフーである)から遠ざかろうと考え、自分の妻よりも厩舎の臭気を好む。フウイヌムから習った言語で厩舎の馬達と会話をしている時だけ心が落ち着いたという。 ガリヴァーがイギリスへ帰還する契機となった、ポルトガル人によるガリヴァーの救出は、しばしば見過ごされる。ガリヴァーを乗船させたポルトガル人の船長ペドロ・デ・メンデスは、物語全編を通じた、最も高貴な人間の例といえる。メンデスは、ガリヴァーを助け出し、船の中に自室を用意してやり、自分が持っていた最高級の着物を与え、リスボンに帰国した後はガリヴァーを自宅に客として滞在させる。
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