空気吸い込みエンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/22 22:56 UTC 版)
「単段式宇宙輸送機」の記事における「空気吸い込みエンジン」の解説
液体水素と液体酸素の組み合わせでは、液体酸素の重量が全体の2/3以上を占めるため、空気中の酸素を利用するエンジンを利用できれば比推力を大幅に向上させたのと同じ効果がある。 そこで、ジェットエンジンを使用する方法が考えられる。一般的なターボジェットエンジンの最大速度はマッハ3程度(秒速1km程度)であり、まったく足りない。そこで超音速に達してからは、衝撃波を利用して空気を圧縮し、燃料を混合して噴射するラムジェットエンジンを使用する。とくに、エンジン内の流速を超音速としたラムジェットエンジンをスクラムジェットエンジンと呼ぶ。これを使用して、大気圏内でできるだけ加速し、大気圏外に出てからはロケットエンジンを使用するのである。このような機体は通常の滑走路から水平に離陸できるため、特に宇宙航空機(スペースプレーン)と呼ばれる。 ただし、現状、ジェットエンジンの推重比はロケットの比ではない。 スペースプレーンは理想的な宇宙往復手段と考えられたため、1980年代以降盛んに研究が行われている。しかし、肝心のスクラムジェットエンジンの開発は難航しており、2007年現在でも実用化の目処は立っていない。また、ジェットエンジン・スクラムジェットエンジン・ロケットエンジンの3種類のエンジンを使い分けるため、整備を複雑にし、重量を増加させる。仮にスクラムジェットエンジンの開発に成功しても、スペースプレーンは大気圏外に出てからロケットエンジンで加速する方が効率的であり、またロケットエンジンは離陸時にも使用可能であるからジェットエンジンは必要なく、結局ただのロケットの方が合理的であるとの意見もある。 もうひとつの方法としては、空気液化サイクルエンジン (Liquefied Air Cycle Engine, LACE) がある。これは、超音速飛行で圧縮された空気を液体水素で冷却して液体空気にし、これを酸化剤としてロケットエンジンに供給するものである。燃料タンクには凍結した水素と液体水素の混合物(スラッシュ水素)を入れておき、空気液化で加熱された水素を戻して融解させ、液体になった水素をエンジンや空気液化装置に供給する。低速時と大気圏外では、ロケットエンジンは液体酸素を使用する。この方法では、エンジン本体はロケットエンジンのみとなり、スクラムジェットエンジンを使用するよりは簡素化される。しかし、空気を瞬時に液化したり、スラッシュ水素で燃料を供給する方法は基礎研究段階であり、実用化の目処は立っていない。 SSTO搭載を目的に、現在研究されている空気吸い込みエンジンとしては、スカイロン用のSABREがある。
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