社会的(非‐医学的)研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/15 01:33 UTC 版)
「BDSM」の記事における「社会的(非‐医学的)研究」の解説
Richtersら(2008)の調査によると、BDSMを実践している人はより幅広い性的実践を経験している(たとえば、オーラルセックスやアナルセックス、複数のパートナー、グループセックス、テレフォンセックス、ポルノ視聴、性玩具の使用、フィストファック、アニリングスなど)。しかしBDSM実践者は、性行為を強制されたり、不幸になったり、不安を感じたり、性的困難を経験したりという傾向はみられなかった。むしろBDSMを実践していた男性は、そうでない男性よりも心理的苦痛の度合いが低かった。 現代の科学的基準を用いたBDSMの心理学的側面に関する研究はほとんどない。Charles Moserによると、BDSMに共通の症状や精神病理があるという証拠はなく、BDSM実践者が自らの性的嗜好に基づいて特別な精神的な問題を抱えているという証拠はないと強調している。 しばしば問題が生じるのは、自分自身を分類するときである。「カミングアウト」の段階で、自分自身の「正常さ」について自問自答することがきわめて一般的である。Moserによると、BDSM嗜好を自覚することよって、現在の非‐BDSMな関係を破壊するかもしれないという恐れを引き起こしうるという。このことが、日常生活における差別の恐れと相まって、場合によっては非常に負担の大きな二重生活へつながる可能性もある。またBDSM嗜好を否定することは、自分自身の「ヴァニラ」なライフスタイルによるストレスと不満や、パートナーを見つけられないという不安を引き起こす可能性もある。ほとんどの場合BDSM嗜好を取り除くことは不可能であるため、BDSM嗜好を取り除きたいという願望が心理的問題を引き起こすこともある。最後に、BDSM実践者が暴力的な犯罪をすることはめったにないとされている。一般的にBDSM実践者の犯罪は、BDSM実践とは関係がない。Moserの研究では、BDSM実践者たちの社会的権利を否定する理由になるような科学的証拠はないと結論づけられている。スイスの精神分析者Fritz Morgenthalerも著書Homosexuality, Heterosexuality, Perversion (1988)で同様の見方を共有している。Morgenthalerは、問題は必ずしも非規範的な行動から起こるのではなく、ほとんどの場合、自らの嗜好に対する社会的反応から生じると主張している。また1940年に精神分析家Theodor Reikも暗に同じ結論に達している。 Moserの結論は、オーストラリアで行われたBDSMの人口統計的および心理社会的特徴に関するRichtersら(2008)の研究によって、さらに支持されている。Richtersら(2008)は、BDSM実践者が対照群よりも性的暴行を経験していない傾向にあり、また対照群と比べて不幸や不安を感じる傾向がないことを発見した。さらにBDSM男性は、対照群よりも心理的幸福のレベルが高いと述べている。そして「BDSMは、マイノリティにとって端的に魅力ある性的関心またはサブカルチャーであり、過去に受けた虐待や『正常な』セックスにともなう困難などによる病理学的症状ではない」と結論づけている。
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