研究開発史
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/03 23:26 UTC 版)
神奈川県沿岸部では、2000年代中頃から磯焼け現象が発生し、その原因生物としてアイゴやウニを駆除していた。魚のアイゴは網で捕獲すれば数が減ってきたが、ウニは増える一方だった。磯焼けした海で獲れるウニは餌になる海藻が乏しいために身入りが悪く、海中で叩き潰されたり、1匹ずつ陸上で割られたり、海底深くに沈められたりしていた。1平方メートルに100匹いることもあり、売り物にもならないウニを大量に獲らねばならないのは、漁業者にとって非常に困難な作業だった。 三浦市にある神奈川県水産技術センターでは、2015年頃より駆除するムラサキウニが雑食性であることに注目し、実験的にさまざまな餌を与えてみた。100種類以上を与えたところ、特にキャベツを好むことが判明した。キャベツを与えたウニの可食部(生殖巣)は、数倍に増加していた。 水産技術センターではさらなる研究を重ね、可食部が肥大する4 - 6月の間だけ餌を与えることで身入りがあるか実験した。すると、苦みや臭みのないウニに成長することを突き止めた。事業化すれば、厄介者扱いされているウニを出荷できるうえ、規格外で流通させられないキャベツを有効利用することもできる見通しが立った。 水産技術センターは2017年4月に記者発表を行い、同年のゴールデンウィーク明けに朝日新聞の全国版で紹介された。その記事は小さなものだったが、後日には別の朝日新聞記者が大きく取り上げ、朝日新聞デジタルやYahoo!ニュースのトップに出たことから、記事掲載からの3か月で1000件の問い合わせがあった。「空きスペースを使ってキャベツウニを養殖できないか」という、水産関係ではない異業種からの問い合わせが主であった。 2018年には日本国外のニュース番組でも紹介され、日本国外からの問い合わせも入るようになった。さらには、水産技術センターへのツアーバスの来訪や京急油壺マリンパークでのキャベツウニの展示に広がっていった。水産技術センターでは、キャベツウニが時折チョコレート色になる現象の改善、大量飼育法、陸上での閉鎖型飼育法に、引き続き取り組んでいる。
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